見出し画像

【20年視点で見る】コロナに思う民主主義の危うさ

【このnoteの目的】

少し上から目線でのノートになるが、一応正しい意思決定をする為の専門教育を受けて日々経営という意思決定をしている立場から、昨今の世論や意思決定に関しての不安と課題認識を整理してみた。結論的には、個人的な解決策は末尾に期したが、テーマが壮大すぎて根本的な解決策までは提示できていないのであくまで解決策の提案よりは課題提起とその過程での思考整理が目的。

【課題意識の出発点】

最近のコロナの状況(特にワクチン摂取に関わる世論)を観ていて特に感じるのだが、「分からない、不安だから行動しない」と主張する人の多くが自分で調べようとしない、ないしは正しい調べ方を知らない(情報を正しいソースから得ようとしないとか、検索スキルが低いとか)ように思う。

“調べない×調べた情報が正しくない(ゴシップとか統計的に超変異値みたいな情報を正しいと思い込むとか)×情報を正しく読み解けない”の複合要因で、結局“分からないから行動しない→行動しないから学習しない→分からない範囲が増えて、その後の出来事が余計分からなくなる→行動できない(ないしはえいや!の場当たり的な行動をとる)”のネガティブループにハマる。(「よく分からないからワクチン打たない」とか「国の政策が正しくない(根拠なし)から、俺らも規則を守らないで外出する」みたいな訳の分からない結論と行動を起こす)

【なぜそれが問題か】

問題なのは民主主義という制度の性質上そう言った人の明らかに間違った意見も無視せざるを得ず、正しく理解出来なくても、偏った知識、脆弱なロジックのうえの意見でも、正しい情報と科学的な証明に基づく意見と同じ1民意となってしまうこと。(例えるなら1+1=2の答えが分からない人と大学の数学教授の数学に関する意見が同列に扱われるようなもの)

例えば最近見たNewsPicks動画によると、ゲノム編集した食材を食べたくないと回答するのは50%もいるらしいが、アンケートを受けた人の中でゲノム編集が何か知っている人は9%。ということは恐らく食べたくないと答えた人のうちゲノム編集が何かを知った上で答えている人は1-2%なのではないかと思う。問題は食糧不足の解決に不可欠ということで、これらの層にゲノム編集を理解してもらって安全性について啓蒙しようとしてもさっき述べたようにこの層は調べようとしない、正しい情報にアクセスできない、アクセスしても理解できないの三重苦なので啓蒙できない。更に理解出来ないのであれば餅は餅屋的にその分野の権威が威信をかけて取り組んでしっかりした第三者機関などのお墨付きを得たものを信用すればいいのに、それらも信用出来ず分からないから(説明しても分からないのに)説明して納得させろと言う。(知ろうとしてないから信頼に足るか判断する根拠がない、根拠がないから分からないの“鶏と卵”みたいな状況ではあるが)

そうなると最終手段としては納得させるにはやって見せるしかないが、それも“民意”の反対でできないことが多い。その結果結局いくら科学的に正しいことをやっても前に進まない。(飛行機が飛ぶ理由は科学的に分かってないらしい(これは調べてないから本当かどうか分からない)がきっと現代で飛行機を飛ばす実験をしようとしたら反対の嵐で、少なくとも日本では出来ないのでは?)

【この問題が引き起こす真の問題】

この“事実”と一般の“パーセプション(認知、理解)”の差がどんどん広まっている。真の問題は、これからは科学の進歩は人類の知能の進歩よりも圧倒的に早いから複利の原則でどんどん差が開いていくことは確実で、事実と一般のパーセプションとの乖離の拡大は10年、20年の視点で見ると今後今の比ではないくらいに進んでいく。

要は一部の天才とその他過半数との差がどんどん開いていく。ただその他大勢は理解出来ないと賛成しないが、理解できる幅が限られてるし、拡大しようとしないから天才が生み出す本当は社会に有益な発明は脚を引っ張られ、潰される。

分野が細分化され高度化させれる世の中だと言うことは自分の専門外の領域が増えていくと言うことだが、その中でも理解しようとする姿勢や細部が理解出来なくてもロジカルに考える力がないと言うことは客観的な事実が示す進むべき道に進むにおいて大きな障壁になりうる。

これがアメリカのように国(国民)にリスクや革新に肯定的な風土があったり、大多数を振り切っても失敗したら責任を取らされ、成功したらリワードされるインセンティブシステムがある(存在の有無だけでなく、社会的に許容されるか否かが重要)なら話は別だが、悪いことに日本人は国民柄リスクを取らない、前例踏襲主義、同調主義、高齢化社会(20年先を見据えて変化を起こそうとする世代が少ない)、若者の政治的無関心(政治家がじじばばの方を向いて政策を決定する)、などなどネガティブな要素が盛り沢山。
イギリスでのコロナの社会実証実験など日本では絶対に出来ないだろう。

【対応策】

そう考えると日本は民主主義の限界に来てるのではないか。じゃあそのために意思決定の仕方を変えるとしても憲法が改正出来ないし
(憲法改正の発議が2/3の賛成なんてほぼ無理、結果的に日本の憲法は改変のない世界最古(時代遅れ)の憲法の一つに)、八方塞がり。

個人的な解決策としては
1. 国に頼ることをやめる、自分自身の“社会”の定義を国から自分の信念が受け入れられるコミュニティに変える
2. 全体の民主主義的な結論から離れたところに自分の判断基準を持つ(自分の正しいと思うコミュニティ内で賛同を得られているかを重視)
3. 自分の判断に自分で責任を持つ(決められたコミュニティから自分がコミュニティを選ぶための副作用的なもの)

だと思う。なかなか出来ないし、どこに住んでも国というマクロ環境にはある程度縛られるし、コロナや戦争みたいに利害関係者が社会全体に及ぶことはこれじゃ解決できないけれど。

一方でシステムとして何が出来るのかというと悩ましい。STEMを中心とした教育の見直し(判断力の土台の構築)もしかり、過去のしがらみや前例踏襲をやめるために若者の得票率を上げる(ないしは有効得票率でイーブンになるように補正するとか)、特定の政策において専門家の意見が反映されるように意思決定方法を変えるなど、複数の施策の組み合わせになるのだろうけど。

チャーチルの言う「民主主義は最悪の政治形態であると言える。ただし、これまで試されてきたいかなる政治制度を除けば 」は的を得ていると痛感。ただこのままいけば特に変化を嫌う日本において“事実”と“パーセプション”のギャップが広がって、大問題になることは避けられないだろうと感じる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?