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『シェリ』コレット(光文社古典新訳文庫)
登場人物と舞台設定とテーマだけ見ると、腐臭のしそうな小説なのに。なんとも清々としたもの。
終盤、愛と恋とを自覚して受容したがゆえにかえって、平凡な年取った女になりかけた元高級娼婦のレア。そのレアを立ち直らせるのは、シェリの最初で最後の魂からの告白。ここがこの作品の白眉だと思いますね。
ひとは決して自分で自分をかたちづくってるわけじゃないのね。他人という鏡にうつった自分をみながら自分を成形しているのだわ。
しかしまあ、仙人界のように美しい。うつくしすぎる恋だ。
自伝的作品ゆえの美化フィルターのせいかしら。
いえいえ。いいんです。フィルターだろうとなんだろうと。なんだかとても、「それでいいじゃない」と肯定的な気分を味わえたのですから。