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『クィア短編小説集』(平凡社ライブラリー)
『ゲイ』『レズビアン』『クィア』ときて三部作制覇~。
後半4つの収録作がよかった。
『ティルニー』伝オスカー・ワイルド:完全にBLじゃないかい!とりあえず数百年単位では人間の考える淫靡さとか耽美、エロティックは何ら変わらないのだなということがわかった。現代日本の商業BL作家の手によるものですって言われても違和感ない。古くもないし新しくもない。ただひたすらこういうものとしてここにあり続けるもの。
『ポールの場合』『彫刻家の葬式』ウィラ・キャザー:もっともシンパシーをもって読めた二作品。自分と最も近いはずの環境と溶け合えない居心地の悪さ。どちらも主人公は男性だけど、作家は女性だ。ここに鍵がありそうなんだけど…。
『アルバート・ノッブスの人生』ジョージ・ムア:変わった形式の小説ねえ。誰の発話なのかわかんなくて、躓き躓きの部分があったけど原文ならクリアなのかしら。人称変化かなんかで。
解説には「これはLGBT=Qという関係式ではなく、LGBTQとして、つまりQはLGBTを補完し併記されるべき要素となる。」とあったけれど。
ここでいうところのQはあくまでも「在ること」がQという捉え方だよね。あるいはQに対する欲求が「在る」こと。
「無いこと」はまあ、この本のテーマではないとは思うけれども、「無い」ゆえのクィアさというのはやっぱりLGBTとは異なる範疇で追及するしかないのだろうか。
わたしが俎板にのせたいのは、アセクシャルとかアロマンスとかのことなのだけど。ああでも、無いことは物語にはできないのかしら。恋をすることは書けても、恋をしないことそのものを書くのはすごく難しい。結果的に恋をしていない状態がなんとなく浮き上がるだけで。