シェア
凪野基
2020年4月19日 09:03
辺りを憚らず爆泣きしている女子高生に恐れをなして、先客のキッズは逃げていった。 公園に二人きり。重い。「泣かないって言った」「泣いてない~!」 全部濁点がつきそうな声だ。二人分のハンカチは既に水浸し。制服の袖が犠牲になりつつある。「だってわかってたもん」 バスケ部エースで生徒会長。容姿端麗、品行方正。そんな男に平成最後のアタック(死語では?)すると駆けてって、今に至る。
2020年4月7日 21:11
八回目の家出準備だ。 服やリボンや靴下、クッキー缶、押し花の栞、匂い袋、日記帳。あるじが憤然と旅行鞄に詰め込むさまを、ルーイは黙って見守る。 原因はいつも親子喧嘩で、初回の家出は彼女がルーイの処遇について旦那様に反発したのがきっかけだった。怒りで血の気の引いた、冷たい手を覚えている。半日で連れ戻され、二人ともこっぴどく叱られはしたが、幼い体をいっぱいに広げて庇ってくれたこの方に一生付いて