ウナギの蒲焼きの実演販売
子どもの頃、夏になると、近所の商店街でウナギの蒲焼きの実演販売をやっていた。
ウナギをさばくのは、まだ若いお兄さんがやっていたが、その手さばきがとても鮮やかで、いつも見ほれていた。
ウナギはプラスチックの桶に入っていて、その上に板(まな板)が載せてあった。
ウナギ屋の人は、ウナギをよく見もせずに桶からつかんで、まな板の上に載せ、千枚通しのようなものをウナギの頭に刺して固定する。
次に、包丁でウナギを割いていく。
そして、頭、ワタ(内臓)、骨、身に分ける。頭、ワタ、骨は別々の容器に入れる。
何匹分かをさばくと、身はさらに2〜3等分し、今度は串を刺していく。
こうしてできたウナギの串刺しは、ある程度たまると、道の向かい側にある売り場に運ばれ、タレをつけて焼かれることになる。
ウナギは生命力が強く、頭を切り落とされてもまだ生きていて、身をくねらせたりする。頭だけのウナギの口に指を突っ込むと、噛んでくる。
一連の工程を見るのはとてもおもしろくて、夏休みのプールの帰りに、水着の入った袋をぶら下げて、髪の毛を濡らしたまま、飽きもせずに、毎日のように見ていた。
ウナギの蒲焼きを買いに来るお客さんは、焼くほうに行くので、さばくほうはそんなに混んでいなかった。
ウナギをさばくお兄さんも、観客がいて、誇らしそうだった。
なので、お客さんの邪魔になっていたわけでもないし、ウナギをさばく仕事の迷惑になっていたわけでもない。
それなのに、私がウナギの蒲焼きの実演販売を熱心に見ていると、母から「見っともないからやめなさい」とか、「もの欲しそうに見えるからやめなさい」とか言われて、怒られた。
私は、悪いことをしているわけでもないのに、どうして怒られなければならないのか、と納得できず、不満だった。
母は、人目ばかり気にしていて、私の気持ちなど、わかってくれないのだと思った。
私は、もっともっと存分に、気の済むまで見ていたかった。
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