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白トラ3.7.0『予兆』

■前のエピソード》

 別枠で書こうと思っていたお話がある。今からお話する事柄の1、2週間後に繋がりのある事だったみたいなので導かれしエピソードとして白トラ枠で書いてみる。

 僕が東京生活終盤に向かうまでのおよそ7年間、ずっと通っていた床屋がある。お話にその床屋の社長と社長のアシスタントの二人が登場する。
 お話のなかで彼等を指して『社長』と『床アシ』と表現することにする。

 僕が京都に引っ越して以来、年1~2回ほど、東京から友達が延々車を運転して京都まで旅に来てくれる。
 やって来る度にミスティカルツアーと銘打って近畿近隣の色々と神秘な場所を回る旅に僕を便乗させてくれる。僕は参加するときいつも手土産を持って行き、食事代を払わせてもらったりしている。それでも全く足らないくらいにお世話になっている。心底、与えるマインドを持つ人達なのだ。

 白へびトランスフォーメーションのシンボルマークの発想に繋がるヒントも彼等と旅をする中で頂戴している。

 さて、今回の旅先は九州。仕事で佐賀県に床屋業界の集まりか式典か何かがあるという。折角九州まで行くので、その足で長崎市内プチ観光と長崎にある、とある喫茶店に一緒に行かないか?と予約して誘ってくれていたのだ。わざわざ予約してまで行く価値のある喫茶店とは‥。

 今回は京都で拾ってもらわず、九州で合流することになった。僕は新幹線で九州へ移動、博多駅のロータリーで拾ってもらう。
 一泊二日の弾丸トラベルなのだが、出発の日は2023年7月10日だった。前日からこの日の未明にかけて九州地方を集中的に大雨が降ったタイミングだ。

 事前に予約しておいた便に乗るべく京都駅へ向かう在来線内で新幹線の運行状況を確認する。すると乗る予定の便が走ってないということに気が付く。
 情報を追うと、何本かに一本という随分と間引いた運転になっているようだ。アプリで席を買えるようにしておいたのが功を奏し、在来線が京都駅に到着する間に博多まで走る予定の便に席を変更・確保出来た。

 が、この便も広島ー博多間を走るかどうかがまだ確定していないという。しかし、自分以外の人と行動をともにする話になっているので行かない訳にも行かず、どうなるかわからないけどとりあえず乗った。 

 愛媛を過ぎるころ、広島ー博多間を運行するとのアナウンスが流れた。
『良かったぁ、とりあえず合流できるわぁ』

 博多到着まで使い始めて11年目を迎えるお気に入りのMP3ウォークマンでしばし音楽を聞いてすごす。
 旅の前日、急に思い立って、聞き込みたい音楽をウォークマンに入れておいたのだ。

その曲目はこちら
・Realize (PS2版エウレカセブン)
・愛・覚えていますか (劇場版マクロス)
・アイアンリーガー
 ~限りなき使命~(OP曲)
・エウレカセブン (TV版OP曲)
・白い炎 (スケバン刑事 斉藤由貴)
・サイバーフォーミュラ(TV版OP曲)
・サイバーフォーミュラ(TV版ED曲)
・不思議美少女ナイルなトトメス (OP曲)
・有言実行三姉妹シュシュトリアン
 ~思い立ったが吉日!~ (OP曲)

 何故かこれらを聞き込みたくなった。

 『聞き込む』わけで、ただ『聞く』のではない。そもそも何で聞きたくなったのか?よく分からない。とりあえず何回も聞いてみる。どれもこれも小学生の頃に聞いていた曲なので何回でも流せる。エウレカセブンだけはゲーム業界の仕事でこれらに触れる機会があって好きになった曲だった。それはさておき‥
 ノリノリで博多まで移動する。

 そういえば、元々乗る予定だった便はおよそ1時間早い便だった。それが運行されていれば、博多ではなく小倉で合流。宗像大社(むなかたたいしゃ)へお参りする予定だった。京都出発が遅くなったので、宗像大社へ行く時間的余裕が無くなった。

 宗像大社には宗像三女神(むなかたさんじょしん)が御祭りしてあるらしい。厳島神社もそういえば宗像三女神だっただろうか。
 そんなことを思っていると【シュシュトリアン】の曲が流れ始めた。『シュシュトリアン』って宗像三女神をモデルにしてたりするのかなぁ~と思ってみたり‥。ちなみに、シュシュトリアンの放送開始最初期の頃の3人での決めポーズはどことなく六芒星を彷彿(ほうふつ)とさせるポージングを採用しているように見える。
 途中、六芒星のイメージをぶっ壊す別のポーズに変更されたようだ。‥どおでもいいか。

  新幹線は無事博多に着いた。


博多駅を出て早々に777が飛び込んでくる
写真一枚だけ撮らせるとどっかに行ってしまう

 一足先に到着していた二人に合流

白へび(挨拶してお土産を渡す)
「一雨あったんですかね?路面がびちゃびちゃですね」
床アシ
「ほんの数十分前まですっごい雨ふってたんですよ」
白へび
「あぁだからですかぁ、新幹線も到着するか微妙だったんですよ」
 白へび到着間際に急にやんだらしい。青空も少し見え隠れしている。

 早速床屋業界の式典があるという佐賀県の会場へ向かう

 
その途中、宗像大社は断念せざるを得なかったが、太宰府天満宮に寄る時間は十分あるとのことでそこへ向かう。

 太宰府天満宮の、あれは恐らく仮設と思うが拝殿を前に大祓いの祝詞を奏上する。仮設ではあるが、音が響くようにしてあるのか祝詞を読む僕の声が心地よく響いた。小声で読んでも響いてしまうので、腹をくくってそこそこ声を張って読んだ。

恐らく仮設の拝殿
大規模な修繕工事か免振工事でもやりそうな勢い
境内裏手、立派な木が立っている 回りを時計回りにぐるりと回る

 その後境内と門前のお店をさらっと見て回り、床屋の会合の時間が迫っているとかで早々に佐賀県の会場へ向けて移動を開始した。

 途中、大雨の影響で高速が使えないため、下で行くことになる。国道なんて立派な通りまで行こうものなら会場に間に合わないとのことで、いわゆる旧道を行くことになった。

 その旧道、な なんと通行止めになっていた

 旧道入り口の通行止めの看板前で一旦車を停車させる。
床アシ(ドライバー)
「これが行けなかったら、100%間に合いません」
社長
「これ行くしかないんじゃない?」
白へび
「通行止めって看板出てても対向車線からこっちに向かってくる車が絶えませんね」

 近隣の人の通行も行われる道なので、通行止めと看板を置いてあっても、バリケードみたいに道を塞ぐということまではされてなかった。

社長
この道行こう!!
床アシ
分かりました!会場まで行くのに本当にギリギリになりそうです。社長、車の中で正装に着替えられた方がいいと思います」
 誘ってくださっているとはいえ、旅に便乗させてもらっているので白へびはこの流れに乗るしかない。

 通行止めと書いてある立て看板を横目に対向車の絶えない旧道に入る

 なんて危ない橋だ。でもちょっとドキドキ。こういった類(たぐい)の冒険はしたことが‥少ししかない。(ちょっとはある)
 
又は、ドラクエかFFまたはYsでレベルが足りてないけどヤバそうなエリアに侵入してみるとか‥どおでもいいか。

 躊躇(ちゅうちょ)なく決断する姿勢を目の当たりにすると、長年『社長』という立場を経験している人の決断力に感心してしまう。

 旧道は山道。どことなく哀愁漂う(あいしゅうただよう)くねくねした古い山道がつづく。通行止めの立て看板を出すだけあって、あっちこっちから水が流れ出ている。梅雨の時期では『田舎あるある』な情景だが、「これ‥、やばいですよ!」とついつい言ってしまうレベルに道路が川になっている。
 大雨の続いたあとの旧道の通行止めの看板は伊達(だて)じゃない。

 しかし、対向車がちょいちょい走り抜けて行く。向こうから来る車が絶えない。
『みんなチャレンジャーだなぁ~』
 近隣の住民の車だけじゃない、他の車も『この道しかない』と思っているようだ。

 途中、峠を越すあたりにダムがある。ダムのふちを通る。ダムが満水だった。更に山からダムに道路を横切って直接水が流れ込んでいる。そこを突っ切る。「大丈夫かよこれ‥」

 何年か前、一人で熊本遠征したとき熊本市内から幣立神宮へ行く路線バスでのことを思い出す。あの時、山が沈むくらい降った。沈まなかったけど。目的地に到着すると何故か止んだ。
 今回は九州入りから傘をささなくてもまぁ大丈夫な小雨が降ったりやんだりを延々繰り返している。

 峠を越した辺りで、料金所があった。この道は途中から別の道と合流して有料道路になっていたのだ。料金所は普通に営業していた。

 しばらく走ると間もなく開けた街に出る。目的地近くになると、また雨が止んだ。

 会場に近づく車の中で社長が言う

「そういえば、明日行く喫茶店のマスターの息子さんも今回の式典に参加するんだそうです」
白へび
「えー!!マスターって息子居たんですか?!」
社長
「らしいです、二人兄弟だったか‥どっちかが床屋やってるって」
白へび
「仕事中にハサミが曲がっちゃうか聞いてみて下さい」

 ギリギリセーフで社長を式典会場に下ろし、その間床アシと白へびは近隣を散策。
 持って来ていたウォークマンをカーオーディオに繋いで、今回の旅で聞き込む曲をかけてみる。
床アシ
「エウレカじゃないですか!」
白へび
「知ってるの?」
床アシ
「見てましたよ!」
白へび
「そうなんだ。僕はコレ仕事で知ったんだよね~」
床アシ
「ゲームですか?」
白へび
「そうそう、作ってたんだよPS2版。デモパートだけどね」
床アシ
「うわぁ、すっげぇー!!」
 『デモ』とは、ゲーム内3Dモデルを使ってキャラクタにモーションを付けたり、カメラワークを設定し、ムービーに近い状態をリアルタイムレンダリングで再現するというもの。
 仕様によるが、カット切り替えやBGM・セリフ・字幕・SE等もフレームコマンドというテキストデータを使用してアニメさながらの表現が出来る。別途CGムービーを発注することなく安くストーリームービーを作成出来たりする。ただし、ハードの性能上出来る表現には相当な限りがある。しかし、その限りの中でモノを作るのが面白いのだ!
※現行ハード・現行開発エンジンはやや話が別。

白へび
「エウレカの当時のTV版も曲カッコ良かったけど、特に僕は開発にかかわったPS2版のOPが好きなんだよ。TV版と同じFLOWが歌ってるんだよ」
床アシ
「聞きましょうよ!」 

"Realize Future Open Your Mind!"

 この様な歌詞が頭から離れない。開発にかかわって以来、事あるごとにFlowの『Realize』を聞いていた。半(なか)ば中毒性がありそうだ。

 静かな商店街の喫茶店で軽く昼食をとったら、近くにあるという古墳を観に行く。

 そうこうしてる間に床屋さんの集まりが終わる時間がくる。再び会場へ行き社長を拾う。

 一行は長崎市へ向かう

社長
息子さんに会ってきましたよ。ハサミは曲がらないって言ってました
白へび
「息子さんは不思議なこと出来ないんですかね」
社長
「話聞くと、自分はそういう能力みたいなのは受け継いでないって言ってました。けどその人を見てると、名前とか生年月日みたいな数字とかは何かしら感じ取れてくるって言ってました」
白へび
「遺伝とかあるんですかね?」



 長いトンネルを抜けると、そこは長崎の中心街だった。床アシ君の出身地だそうだ。
 長崎市内の電波塔のある見晴らしの良い展望台に上がる。この展望台からは軍艦島も見ることが出来る。

 ‥と、ずっと位置の変わらない雲がある。「妙だ」‥、とりあえず何枚か撮ってみた。別に何も写って‥ないか。

 床アシ君のご実家にちょこっとご挨拶しに行き、長崎市内の床アシ君が言う昔ダイエイだったというホテルにチェックイン、男3人同じ部屋で寝る。

 つづく

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