EP.03 日常と感性と親父
私は普段、冷蔵庫に触れない。
それは、そこが母親のテリトリーであり、単純に自分が求めるものがないからである。…というより、大体ご飯時に飲み食いを完結させてしまっているので、用事がないのである。ありがたいことに、ご飯を食べるときには机にご飯も飲み物も並んでいる。それ以外はお菓子をつまむことはあっても、冷蔵庫を開けてまで、何かを探すことはしない。
しかし、そんな私も年に数回は冷蔵庫の中を探検しにいく。
ちなみに、うちの卵の消費量はものすごい。週に3回くらいはおかずで卵焼きが出てくる。それゆえ、卵のストックの数もものすごいのである。
その日は夜更かしで、無性に何かお菓子ではないものを食べたくなってしまった。
そうして、冷蔵庫を探検していると、あることに気がついた。
それは、備え付けの卵ホルダーに彼らの姿がないことだった。それに対して私は「ちょうど切らしたのかな〜」と思い、他にも何かないか探していた。
何箇所かの放浪を終え、今度は野菜室に手をかけた。
すると!!その中に3〜4個パックの卵が出てきたのである。私は、その光景に思わず
『エッグ…』
私は家族が寝静まった夜、1人でそう呟いてしまった。
自分でも驚いた。『あ、自分って独り言いうタイプなんだ』とか『それもボソっというのね』とか。。。。
『え、今エッグ(egg)っていった??』
にやけた。
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某デリバリーフードサービスをやっていたときの話である。
そのサービスは街の中を縦横無尽に私を動かす。時に、普段は通らないような道を通ることもしばしば。
その日も私は駆けていた。
お客様に最高のスピードでお届けできるように。
『ん?目の前に人だかりができているな』
人だかりができていたのは鮮魚店の前だった。何か特売でもしているのか、繁盛している様子だった。
私は、こういう街の生活が見える風景がたまらなく愛おしく感じる。
その日は晴天で、爽やかな空気の中、なんだか満たされた気持ちで店を通過した。
その時!!魚の独特な匂いが、私の鼻を刺激した。
爽やかな気持ちでいた分、謎に落差を感じてしまい思わず、
『ウォー…』
と、マスクの中でつぶやいてしまった。
『あぁ、街の中でも独り言を言うようになってしまったのか』なんて自分に憂いを感じてしまった。。。
『え、今ウォー(魚:うお)っていった??』
終
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