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深部腱反射による痙縮の評価とアプローチへの展開

みなさんは深部腱反射の意義を理解した上で評価出来ていますか?

・養成校で脳卒中後の基本的な評価として学んだから
・病院や施設の評価用紙に載っているから

など評価の意義が分からないまま評価しているという方もおられるのではないでしょうか。


深部腱反射は私が脳卒中後の方のリハビリを担当する上で重要視している評価の一つです。

それは、
脳卒中後の痙縮の病態を評価し、治療手段を決定していくプロセスに必要不可欠だからです。

この記事は深部腱反射の基礎的な知識を身に着け、痙縮の病態を評価して治療に繋げる事を目標に記載しました。

□深部腱反射を評価する意義が分からない
□痙縮の評価が苦手
□痙縮に対する治療で悩む

↑一つでも当てはまる方は是非読んでいただけたらと思います。


深部腱反射とは

腱反射tendon reflexは骨膜反射periosteal reflexなどともよばれ、腱や骨の突端を急に叩くことによって引き起こされるものである。しかし、刺激受容器は骨膜にはないので、このような名称は適当でないとされ、表在反射に対して深部反射deep reflex、またはdeep tendon reflexともよばれた。生理学的には筋の伸張が刺激となって起こるものであるから、むしろ筋伸張反射とよぶべきであるとされている。
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反射異常は、臨床的には錐体路障害の重要な徴候であり、これは腱反射の亢進、表在反射の消失、病的反射の出現などをいう。

田崎義昭,斎藤佳雄,ベッドサイドの神経の診かた改訂17版.南山堂.2010.P67

「深部腱反射の亢進は錐体路障害の徴候である」

事実ですが、これが分かったところでどのようにしてリハビリテーションに活かしていけば良いのかは悩むところだと思います。

私達セラピストが深部腱反射を評価する意義は「錐体路障害の徴候を診るだけではなく、錐体路障害の結果出現し得る痙縮の病態を評価し、治療に繋げる事」だと私は考えています。

そのためには深部腱反射のメカニズムから理解する必要があります。

膝蓋腱反射を例に深部腱反射のメカニズムを説明していきます。
(拙いイラストで申し訳ありません…。詳細は参考書等をあたってください。)




①膝蓋腱をたたくと大腿四頭筋が伸張され、筋紡錘の錘内筋線維に刺激が入力される
②筋紡錘への刺激入力はIa群線維の求心性インパルスを発して脊髄後根に入力される
③脊髄前角にあるα運動ニューロンを興奮させ、遠心性インパルスが大腿四頭筋に送られる
④大腿四頭筋が収縮し、反射が亢進していれば結果として膝が伸展する

この一連の経路を「反射弓」と呼びます。
深部腱反射はこの「反射弓」の障害を評価する検査とも言えます。
α運動ニューロンの興奮性が高まっている状態では深部腱反射は「亢進」状態として評価されます。

α運動ニューロンは上位中枢からの下降性支配(皮質脊髄路、網様体脊髄路、前庭脊髄路など)を受けています。これによってα運動ニューロンの興奮性がコントロールされ、筋収縮の程度に変化が生じることとなります。

αγ連関

α運動ニューロンの興奮性に関わるものとしてα運動ニューロンへの上位中枢からの支配の他、γ運動ニューロンの影響があります。
ややこしい部分ではありますが、痙縮の病態を把握するのに必要不可欠な知識です。

上位中枢からのγ運動ニューロンへの支配により錘内筋線維の筋緊張が変化し、結果として受容器である筋紡錘の感受性変化がもたらされることでも、反射の程度は変化する。

末廣健児.深部腱反射における検査のポイント.関西理学12:25-27,2012

・γ運動ニューロンは上位中枢からの抑制性支配(網様体脊髄路などを含む錐体外路)を受け、筋紡錘の中にある錘内筋線維の筋緊張を調整しています。これは筋紡錘の感度の変化に関与しており、錘外筋がどのくらい伸張されているのかを感知するセンサーの役割をしています。
筋紡錘の感度が調整されていることによって、どのような関節の肢位で錘外筋が緩んでいても、伸張された状態でも錘内筋線維からIa群線維を通してα運動ニューロンに情報を送ることが出来、その肢位を保つ筋緊張を維持することに役立っています。

例えば、上位中枢の障害によってγ運動ニューロンへの抑制性支配が弱まると錘内筋線維の筋緊張は高まります。錘外筋がどの程度伸張されているのかを感知するセンサーが過剰に働いてしまう状態となっているので、伸張反射に対して過剰な興奮を示すこととなります。これは深部腱反射が亢進したり、クローヌスが出現したり、ジャックナイフ現象のような伸張速度依存性に緊張が亢進する痙縮の病態に深く関わっています。

相反抑制

伸張反射や関節運動をスムーズに行うメカニズムとして「相反抑制」があります。

深部腱反射を例に説明していきます。
①上腕二頭筋腱をたたくと上腕二頭筋が伸張され、筋紡錘の錘内筋線維に刺激が入力される
②筋紡錘への刺激入力はIa群線維の求心性インパルスを発して脊髄後根に入力される。
③抑制性介在ニューロンを介し、拮抗筋(上腕三頭筋)を支配するα運動ニューロンとシナプスする
④拮抗筋(上腕三頭筋)の筋緊張が抑制され、肘関節が円滑に屈曲する

相反抑制は伸張反射を助け、四肢の関節運動を円滑に行うことに役立っています。

痙縮患者さんでは上腕二頭筋の緊張が高く、肘を伸展させようにもスムーズに伸展出来ないことが多々あります。
この問題には相反抑制が十分に機能しないことも影響している可能性があります。

この場合、上腕三頭筋の腱反射を行うことで上腕二頭筋に対して相反抑制を加えて筋緊張の変化を評価することをおすすめします。筋緊張が低下する場合には相反抑制を利用したアプローチが有効な可能性があります。
このように痙縮筋だけでは無く、拮抗筋を含めて評価していくことでアプローチへと展開しやすくなります。

痙縮評価としての深部腱反射

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