叩き上げの名役者「煙 草男」の人生
ステージの暗がりに、影だけが見えます。
ピカッ!と役者の後ろに照明が光ります。
次第に、目が明かりになれてきて、役者の表情が見えてきます。
怒りの表情、悲しみの表情?
いいえ、優しい朗らかな笑顔です。
強さを感じる登場とは裏腹に、透明感のある爽やかな雰囲気で会場を包んでいきます。
放射線上に伸びた繊細な花穂(かすい)が煙のように見えます。
その名も煙 草男…いや、スモークグラスと申します。
強さと優しさを演じ分ける
「煙 草男」は、「優男(やさおとこ)」の役しかできないのでしょうか。
いいえ!個性的なアクの強い演技も出来ます!
時には陰のある役を!
イネ科なので、小さな粒が沢山あります。(イネ科・パニカム属、アメリカやヨーロッパが原産地です!)
繊細な花材は、近くで注目されると存在感を発揮します。
パチ、パチ、、、、パチンッ!そんな音が聞こえますか。
そう、まるで昼間の花火のようです。
でも、離れて見ると、ほとんど景色に溶ける優しい存在になります。
まるで空にただよう薄い雲。
風に舞う蜘蛛の巣のようです。
カメラマンが観た「煙 草男」
作品を作ったり、見つめたりする上で、写真を撮ることは大切です。
特に、こうした繊細な造りの花材こそヒントをもらえることがあります。
遠くからフォルムを捉えると、作品のゆがみ、デザインの弱さを教えてくれます。
アップにすれば、新たな魅力に目を留めることができます。
スモークグラスの茎には、繊細な毛や節があります。
こうしたものの美しさ、その花が育ってきた足跡も、
カメラ越しだからこそ、よく見えるわけです。
英才教育派?叩き上げ派?
役者の育ち方は色々です。
手間暇をかけて、やっと芽を出す役者がいれば、
あえて手を出さずとも、成長する役者がいます。
まさに、スモークグラスは叩き上げの役者です。
強い花です。肥料がなくても育ちました。
しかもドライフラワーにもなります。
年齢を重ねた演技にも、光るものがあるわけです。
スモークグラスにインタビュー
質問です。
長年の役者人生を振り返って、いかがでしたか。
「私は、色々な役をやらせていただいた幸せ者です。
叩き上げだとか、苦労をしたと皆さんは言ってくれます。
自分でもそう勘違いをした時期もありました。
でも、こうして今でも役を演じさせてもらえるのは、
私を強くしてくれた、土、太陽、雨のお陰です。
自分ひとりの力では、何も出来ませんでした。」