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着るもの、着せられるもの〜僕の同居人#9〜

燃えるゴミの日のことだ。




「しっかり分別して下さい」

 



その注意書きと、
ご丁寧に缶コーヒーがしっかり透けて見えるゴミ袋の写真付きの紙が家に届いた。


どうやら可燃ゴミの袋に缶コーヒーが紛れ込んでいたようだ。


それを管理人が発見し、
僕らが出したゴミだと特定したようだ。


問題は缶コーヒーのことではない。
その注意書きの宛名だ。


僕と同居人の名前の連名になっているのだ。


まず犯人は奴である。
それは間違いなく。

ただ、


「共犯だ」


そう言われたような気がしてならない。

それに管理人は僕の名前を知っている。
僕だけの名前でいいのに、
わざわざ奴の名前まで一緒に並べるなんて。


なんか不愉快だ。


そうゆうわけで、
管理人が正式に奴を同居人として認定した。


そもそも。

なぜ管理人が奴の名前を知ったのかというと、恐らくゴミの山から奴の名前を見つけたのだろう。


奴は度々ネットショッピングをする。
同居してるのだから送り先は必然的に僕の家になるわけだが、
その配達の痕跡を残してしまった。


奴はネットショッピングし過ぎなんだ。
気づいたら、
玄関は奴の荷物だらけになっている時もある。

奴の代わりに宅配を受け取る度に、
またゴミが増えると憂鬱になる。
奴は生み出したあらゆるゴミを片付けない。


散々ここで愚痴をこぼしているが、
本当に奴はろくなことはしない。



奴が僕にしてくれることと言えば、
たまの皿洗いと、
洗濯と、
ちょっとした買い出しくらいだ。
恐らくそれでやった気になってる。

勘違いしてもらっては困る。


飯は僕が全て作る。
その間、奴はずっとゲームに夢中だ。

皿洗いは、
確かに放っておいた洗い物を急に洗い始める時もある。
でも、5秒後に汚す。
灰まみれにする。

洗濯も確かに手伝ってくれる。
しかし、毎日のように洗濯してくれとせがむ。
それに手伝うと言っても洗いが終わった洗濯物を干すだけで、
一度も取り込んでもらったことはないし、
畳んでもらったこともない。


家事をしない夫にイラつく主婦の気持ちがよくわかる。


奴が役に立ったことを真剣に考えても出てこない。


唯一。

プライベートで急に私服が必要になった時だ。


デブになってから服を買えてないので、
今の体型で履けるものも着れるものも無い。
そんな時、
奴の服を借りて出掛ける。

服の趣味は違うが、
サイズが一緒だからだ。

てか、そもそも僕のパジャマや下着含め全ての衣類は奴のお下がりばかりだ。


今気づいたが、

僕はほぼ毎日、
奴の服を着ている。


奴の利点はその程度である。


ネットショッピングで、
奴が送り先を間違えて僕の家の隣の部屋に配送したことがあった。

当然、隣の住人は身に覚えのない荷物は受け取らない。

そのまま荷物は運輸センターに転送された。

翌日、運輸センターに取りに行くことになった。

それが家の近所にあるからと、
毎日の散歩がてら下見に行きたいと言うので、
僕らは運輸センターまで歩いて場所を確認した。

さらに翌日、奴は下見通りに運輸センターに向かった。

ただ、荷物はそこには無かった。

まさかの他の運輸センターと間違えていたのだ。
奴は荷物を引き取りに行けず、
結局荷物はまた隣人に再配達された。


バカみたいな話だ。


最終的に奴の代わりに

「すみません。間違えました」

と、隣人に謝って僕が荷物を受け取ることになったわけだ。


荷物といい、
ゴミといい。


僕だけじゃなく、
周りの人間にも迷惑をかけてしまった。


ただその汚名は僕が着せられる。












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