マガジンのカバー画像

短編小説

2
毎回1話完結の短い物語。
運営しているクリエイター

2022年2月の記事一覧

短編小説『マスク』

短編小説『マスク』

時刻は12時を過ぎ、

群衆は一斉に同じ方角へと動き出す。

深夜の新宿に僕だけ取り残された気持ちになった。

僕は激しい酔いの中、街の片隅でまだうずくまっている。

「ねえ」

そんな声がした気がする。

顔を上げたら、

まるで捨て猫を哀れむ様に見つめるミズキ先輩の姿があって、

「どうして?」

と僕が言うもんだから、

先輩も

「なんで?」

と返した。

そういう人だ。

大学の同じ学

もっとみる