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【投資】「債券」購入には注意が必要! ~福岡県福津市の事例より~

新NISA等の追い風を受けて、最近、証券会社や投資アドバイス会社等が無料のWEB「投資セミナー」を数多く開催しており、時間フリーのFIRE民である私も良く視聴しているのですが、「株式」や「投資信託」以外に「債券」によりポートフォリオをバランスさせることをお勧めするアドバイザーが多いように感じています。
確かに、債券には「償還期限まで保有していれば、原則として元本を受け取ることができる」、「収益額が前もってわかる」、「預貯金より利息が高め」等のメリットがありますが、使い方を誤ると、とんでもない損失を発生させることになりますので注意が必要です。

実際に、債券の使い方を誤って、とんでもないことになっている地方自治体が福岡県内にあります。

はい、財テクに失敗したのは、個人や民間企業の話ではなくて、「福岡県福津市」という「地方自治体」なのです。

福岡県福津市が市の基金から約74億円を使って購入した長期の国債や社債について、マイナス金利政策転換の影響を受けて時価が下がり、昨年9月時点で約23億円の「含み損が生じていることがわかった。

 市によると、2019年8月から20年6月にかけて、証券会社8社から国債の30年満期50億円分、40年満期2億円分、「光通信」(東京都)の30年満期社債20億円分、額面で合計72億円分を、約74億円かけて購入した。利率は固定で年0.4~2.5%。市は年間約7千万円の利息を受け取っている。

朝日新聞 2025年1月29日

約74億円かけて購入した債券に約23億円の含み損が発生しているとのこと。割合にすると、23÷72=31.9%もの含み損ということになります。
冒頭で述べた通り債権と言うと「安定」「リスクが低い」というイメージがありますが、3割以上もの含み損を抱えることもあるんですね。
なぜ、こんなことになるのでしょうか。

満期は30年債が2049年、40年債は60年。満期まで保有すると元本が戻ってくるが、日銀がマイナス金利政策をやめた影響などで時価が下落。昨年9月時点で時価は約50億円ほどになっている。市は同年3月に国債のうち1億円分を売却して約2500万円の損失を確定させた。

朝日新聞 2025年1月29日

債券は、満期まで保有すると元本が戻ってきますが、満期を待たずに売却するとその時点の時価で売却することになります。売却時に時価が下落していれば、損失が発生することになります。

記事によると、債券を購入したのは「2019年8月から20年6月にかけて」とのことですが、国債(30年)の利率チャートを見ると、2019年8月は0.146%と最も低い水準となっています。2025年2月現在の利率は2.302%まで上昇しています。

日本国債(30年)利率

債券は、利率が上昇すると、価格は低下します。
SBI証券で現在取り扱われている既発債リストを見ると、2019年に販売された国債は取り扱われていませんでしたので、参考として、最も近い「第53回利付国債(30年)」を掲載しておきます。

単価は75.45となっており、販売時の100から約25%下落しています。
利率0.6%の国債(30年)でも約25%の下落なので、利率0.146%の国債はそれ以上に下落していると推定され、約23億円の含み損というのも妥当な線です。

30年後の満期まで保有しておけば元本が返って来るのに、なぜ1億円分を売却して約2500万円の損失を確定させなければならなかったかと言うと

市には昨年時点で債券を含めて基金が約110億円あるが、学校新設や公共施設の老朽化対策などで財源不足が見込まれ、23年11月に発表した中期財政見通しでは24年度から5年間で約77億円を取り崩すとしている。

朝日新聞 2025年1月29日

「学校新設問題」については、地元メディアでも度々報道されているので、ほとんどの市民が知るところとなっているですが、他に、一般にはあまり知られていませんが、福津市は「下水道の財源の問題」も抱えています。

現在は資金不足を一般会計からの繰入金で解消している状況であり、公営企業の原則である独立採算の考え方を踏まえると、基準外繰入金の減額、ひいては解消を目標とした経営を行うことが喫緊の課題です。 下水道使用料収入については計画期間を通じて増加する見込みですが、企業債の償還が計画期間中にピークを迎えること から財源不足が深刻化し、一般会計からの基準外繰入金も増加すると見込んでいます。基準外繰入金を全く計上しないと仮定した場合、令和7年度には現金が枯渇し、計画期間10年間の累計で約497百万円の当期純損失が発生する見込みです。また、計画期間中の基準外繰入金額を使用料収入で賄うと仮定して簡易算定すると、使用 料を平均57%程度増額する必要があるというシミュレーション結果となりました。同様に、計画期間中の基準外繰入金を50%と仮定した場合、基準外繰入金の減少分を使用料収入で賄うためには、使用料を平均37%程度増額する必要があるというシミュレーション結果となりました。

福津市公共下水道事業経営戦略

かなり危機的な状況ですね。
「学校新設」や「下水道を含む公共施設の維持管理費の確保」に喫緊で財源が必要になることは、2019年頃には分かっていたことでしょうに、なぜ30年満期40年満期の債権を購入したのかが、まったく理解できません。

この債券を購入する際、副市長らでつくる「資金管理運用会議」を開催しなかったという。市は書類を調べるなど当時の経緯を確認している。

朝日新聞 2025年1月29日

債券購入時期「2019年8月から20年6月にかけて」の当時の副市長とは面識があるのですが。。。。。

新市長とも面識があるのですが。。。。
今後、福津市の財政はどうなるんでしょうね。


と、ともかく、「当面使う予定のあるお金を使ってまで、長期の債権を購入してはダメですよ」という至極当たり前の教訓を知ってもらうために、福岡県福津市の事例を紹介してみました。

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