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[裏02]加齢臭が気になります。


この記事は 【裏】裏から読んでも心理学 の2本目の記事です。

年頃のお嬢様がいらっしゃるのですね。分かります。え、そっちじゃない。ご自身が年頃のお嬢様でしたか。これは大変失礼いたしました。いずれにせよ、これは大変な問題ですね。匂いが嫌って言われると、なんだか全人格を否定されたような気分になります。これが顔とかだったら、生まれつきのものだからそんなこと言われても困ると開き直れそうな気もしますが、匂いとなると、なんだか自分の衛生観念が否定されたような。しかし匂いが加齢によるものなら、いくら身奇麗にしていたって仕方がないような。とはいえ開き直るのは自分の老いを認めることで悔しいような。なんとも言えない気持ちに苛まれてしまいますね。

でもちょっと待って下さい。本当に加齢臭なんてものが存在するのでしょうか?「加齢臭」に該当する言葉はあまねく文化圏に存在するそうなのですが、人間が匂いを嗅いだだけで「これは老人のもの」と分かるのか調べた研究はないそうなのです(ネズミやシカやウサギの研究などはあるらしい)(人間がネズミの匂いを嗅いでその年齢を当てられるって研究もあるらしい)(でも人間が人間の匂いを嗅いでその年齢を当てられるかって研究はまだないらしい)この問題にチャレンジしたのがミトロ(Mitro)さんを筆頭とした4名の研究者です。彼女らは、若年(20-30才)、中年(45-55才)、高年(75-95才)の提供者から匂いを集めて、それを協力者たち(20-30才)に嗅いでもらったのです。そして尋ねました。この匂いは強い?芳しい?この若年中年高年のうち、どの匂い?

結果をまとめると、こんな感じ。女性では年齢による匂いの強さの違いはないが、男性では中年男性の匂いが強い。しかも中年男性は、若年高年男性より「くさい」とされる。逆に中年女性の匂いは、高年女性のそれよりも芳しかったそうで。匂いの年齢当てクイズだと、性別に関係なく高年者の匂いがもっとも正答しやすかったそうですが、百発百中ってことはなく、まぁほどほどにね、というレベル。

いやはや身も蓋もない話ですね。特に中年男性の匂いがキツくてくさいと言われてしまっているあたりに、知ってはいたけど知りたくなかった現実を知ってしまった時の悲哀を感じます。でも一方で、オヤと思わせるのが、論文でこの中年男性の匂いについて、あまり深く突っ込んでいないところなんですね。むしろ力点は「老人の匂いは老人と分かった!」ってところなんです。なんでなんでしょう。著者のスザンナ・ミトロさん、調べてみたらまだ大学を出たばかりの女性です。ひょっとしたら中年層にばっちり入ってしまっているご自身のお父様を傷つけたくないという気持ちが、彼女の筆を鈍らせたのかも知れない、なんて夢見すぎですかね。ミトロさん、なんでも昨年は英語教諭として岐阜の中学校に滞在していたとのことですし、大学で日本語を学ばれたということですから、興味あるかたは、直接に問い合わせてみても良いかも知れません(論文そのものも、ネットがあればどなたでも読めます)。

それはともかく、加齢臭は存在したのですね。年をとった匂い。ううむ。ただ加齢臭というと、中年以降の人々の匂いの話のような気がするのですが、この研究にかんして言えば、そこではない。75才以上の高齢者の話になってます。そして加齢臭という言葉には「悪いもの」という含意が明白に含まれていますが、この研究に限って言えば、高齢者の匂いは別に嫌なものとはされていないのですね。むしろ中年男性。それはもう書きましたか。はい、そうでした。それってなぜなんだろうね?というのは気になるところです。

References

Mitro, S., Gordon, A. R., Olsson, M. J., Lundström, J. N. (2012). The smell of age: Perception and Discrimination of body odors of different ages. PloS one, 7, e38110. doi:10.1371/journal.pone.0038110

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この号は、初稿と最終稿が全く違ったものになりました。

正本は「心理学ワールド」62号をご覧ください。(PDF

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