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【弱者の戦略】福祉用具の仕事でピンホールマーケティングを使って工夫したエピソード
今回は前回noteでお話した「弱者の戦略」の続編として、私が福祉用具の仕事でピンホールマーケティングを使って工夫したエピソードをお話したいと思います。
前回のnoteはこちら👇
●私が行った福祉用具のピンホールマーケティングは「移動用リフト」
私が行った福祉用具のピンホールマーケティングは「移動用リフト」。
そもそも、一般的に「移動用リフト」って何?と皆さん思われるくらい認知度が低いと思われるので少しお話しすると、、、
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移動用リフトは、介護保険レンタルの対象種目の一つで、主に自力で動けなくなったご利用者をベッドから車いすに、といった移乗動作を補助する福祉用具のことです。ご利用者の体にスリングシートというシートを装着させてリフトに引っ掛けてご利用者を吊り上げ、介護者も負担なくベッドから車いすに移乗させることができます。
●介護職スタッフ・介護者は人力移乗で体を壊しやすい
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介護の業界では、ベッドから車いすへ、といった移乗作業は、基本的に介護職の方や家族など、介護者が人力で利用者を抱え込んで行ったりしていることがほとんどですが、その代償として腰痛など体を壊してしまう方が非常に多かったりします。
私が知っている方でも、親が動けなくなってしまい、仕事の傍らで介護を一生懸命やっていた息子さんが、ひどい腰痛を発症し仕事もできなくなってしまった・・・なんてこともあったりしました。
腰痛にならないように、人力での移乗作業をする際のいろいろなコツはあって、例えば背筋を伸ばして作業する(かがんで作業しない)とか、ベッドに片膝をついて作業するとか・・・。そういうノウハウはあるものの、基本的にご利用者は軽くても体重40kg台はあって、その重さのご利用者を車いすに日々人力で抱え込んで移乗させる作業ってどれだけ重労働なことか・・・。
そんな人力での移乗を福祉用具で行おうというのが「移動用リフト」なのです。
●人力での移乗がよくない事を知ってとにかくまわりに啓蒙
私は人力での移乗のやばさ、そしてそれを解消するリフトという存在があることを、福祉用具プランナーという資格取得の研修で深く理解することができました。そして、マイナーな移動用リフトについて、もっと周りに知ってもらいたい、活用してもらいたい、と思うようになりました。まさにピンホールマーケティングの世界。全然認知はされていなくて、しかしニーズは絶対ある、それを扱える人も限られている、という状況で、これは力の入れようでなんとかなるのでは?と思ったのです。
・まずはリフトメーカーさんにリフトについて聞きまくった
そこで、研修が終わってから、まずやってみたのが「リフトメーカーさんにリフトについて聞きまくる」。
人力移乗は良くない!リフトを活用しよう!とPRするにしても、自分自身がリフトの事をよくわかっていないと、PRしても納得感が得られるわけがありません。自分自身の理解力を深めるために、メーカーさんにわからないことをとにかく聞きまくりました。
近くで展示会などがあった際も、できるだけ参加して実物に触れながらわからないところや疑問点を展示会のスタッフさんに聞いてまわりました。
・そしてケアマネジャーさんに営業しまくる
そして、知識をある程度得たうえでやってみたのが、「営業先のケアマネジャーさんに営業しまくる」。
「研修に参加して、移乗について学んできました!実際のご利用者で移乗に困られている方がいたら、とにかく声かけてください!」とか、「研修行ってきたんですが、このままだと頭でっかちのままなので、実務で学んだことを生かしたいです!」なんて言う感じで、とにかく勢い先行でしたが、営業しまくりました。
●移動用リフト導入で介護者に感謝される事例が!
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そんな掛かり気味の営業でしたが、その甲斐あって、実際にリフト導入の声がかかったケースが少しずつ増えてきました。たとえば・・・
・交通事故で下肢の麻痺のあるご利用者のケース
・もともと介護者が腰痛持ちで自力移乗できない親の介護をしなければならなくなったケース
などなど・・・
実際に活用してもらえたご家族は、口を揃えて、「リフトってこんなに便利なものって知らなかった!」「もっとたくさんの人が使ったら良いのに!」と言われ、とてもありがたく感じました。
●リフト導入にはコツが必要
実際のところ、リフトの使い方はコツも必要だし、一回の移乗にかかる時間も人力より多くかかってしまいます。多少腰が痛くても人力で抱えれば一瞬で移乗は行えてしまうので、大抵の方は人力で行ってしまっているというのが現状なのですが、それで介護者が体を壊してしまってはどうしようもありません。そんな中でのリフトの導入は、少しでも導入への抵抗をなくしてもらうために色々工夫・コツが必要だったりします。
実際に、持病が腰痛の介護者(娘さん)で、その親が退院してくるにあたってリフトを導入したケースも、介護者の娘さんはリフト導入に対して自分が操作できるかすごく不安を感じていました。
そこで、一緒に住んでいる小学校のお孫さんに協力してもらい、リフトの操作を何度も練習しました。お孫さんもリフトで吊り上げられる体験を面白がって興味を持ってもらい、可愛い孫が楽しがっているから・・・と、介護者の娘さんも前向きにリフトの練習を繰り返して、メキメキ操作も上達。
親が実際に退院したタイミングでは、ほぼ不安なくリフト操作をひとりで行える状態になっていて、苦労しましたがなんとか自分で操作もできてやれやれ一安心!という心境になりました。
●【まとめ】狭い分野で突き抜けて攻める!
ということで、私にとってのピンホールマーケティングのエピソードとして、移動用リフトについて書いてみました。
移動用リフトは、今も認知度は非常に低く、なかなか普及とはいかないレア商品です。しかしながら、介護者の方が腰痛でまだまだ若いのに体を壊してしまい、今後の生活に支障をきたす、という状況はいいはずがありません。そんな思いから、自分自身がそこで突き抜けられるよう、リフトだったらあの人に頼めば安心よね!と思ってもらえるよう、弱者の戦略で飛び込んでみたことは、自分自身にとっても非常に貴重な経験となりました。
皆さんのお仕事でも、気づいていないだけで身近なところでピンホールマーケティングで活かせるなにかがあるかもしれません。仕事の中で、狭い分野で突き抜けて攻めていくこと、みなさんとも一緒に追求していければ、と思っています!
ではでは。
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