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コトラーのマーケティングを福祉用具の仕事に当てはめてみる【ジブン株式会社ビジネススクール10月】

今回のnoteでは、ジブン株式会社ビジネススクール10月4発目のお題「コトラーのマーケティング1.0から4.0への進化」について書いてみたいと思います。コトラーのマーケティングの進化を、福祉用具の仕事に置き換えてみると、今どの位置なのか?進化していくうえでの課題など、私なりの意見も含めて書いていきます!



●コトラーのマーケティング1.0から4.0への進化

まずは、コトラーのマーケティングについて。
コトラーは「マーケティングの父」と呼ばれ、マーケティングを「ニーズに応えて利益を上げること」と定義。顧客中心の考え方を基本とし、STP分析(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)を重視しています。また、コトラーのマーケティングは、1.0から2.0、3.0、4.0へと進化していく、ということも特徴的です。

具体的に言うと、下記のとおり。

マーケティング1.0(製品中心)

  • 大量生産・大量消費の時代

  • 製品の機能や品質に焦点

たとえば、ものがなかった戦後すぐの時代などは、まずは商品を大量に作り世に送り出すことで、消費者も商品を購入する、というプロダクトアウトの状況。とにかくたくさん商品を作れば売れるんだ!というのが「マーケティング1.0」になります。


マーケティング2.0(顧客中心)

  • 情報技術の発展により消費者が賢くなった時代

  • 顧客ニーズに合わせた製品開発とサービス提供

マーケティング2.0は、1.0の大量生産大量消費の時期を経て、ものはある程度充足された状態でどうしていくか、というマーケティングのこと。
ただ商品を作れば売れる、ということではなく、消費者のニーズに合わせて、どんな分類分け(セグメント分け)をして、どの層を狙うのか(ターゲティング)、自社はどの立ち位置で攻めていくのか(ポジショニング)、このSTP分析を使って成果に結びつけていく手法です。1.0のプロダクトアウトとは違い、マーケットインで逆算して計画していくところに大きな違いがあります。


マーケティング3.0(価値主導)

  • 企業の社会的責任(CSR)を重視

  • 環境や社会問題への取り組みを通じた価値提供

マーケティング3.0は、2.0での顧客のニーズを読むマーケティングからさらに進化し、その会社が提供するサービスの「価値」「意味」「意義」を消費者が感じ、その「価値」「意味」「意義」を消費者が使いたい、と思えるようなサービス。消費者の心・感情に訴えるサービスのことをいいます。会社は単に利益を追求するだけでなく、社会的な価値を創造し、顧客と共に世界をより良くすることを目指します。これにより、顧客との深い絆を築き、長期的な関係性を構築することが可能になります。


マーケティング4.0(自己実現支援)

  • デジタル時代の顧客体験を重視

  • オンラインとオフラインの融合

  • 顧客の自己実現欲求を満たすアプローチ

マーケティング4.0は、価値や意味を訴求するマーケティング3.0の考えをベースに、さらにデジタル時代の新しい顧客行動パターンに対応したマーケティングのこと。デジタルというこれまでになかったツールをどのように活用して顧客の自己実現を支援していくか、そして最終的に、どうやって顧客自身が企業やブランドの推奨者となってもらうか、を目指していくマーケティングのことです。


このようにコトラーのマーケティングの進化は、時代とともに変化する消費者ニーズや社会環境に合わせて、マーケティングのアプローチが製品中心から顧客中心へ、さらには価値創造と自己実現支援へと発展してきたことを示しています。


●福祉用具の仕事にコトラーのマーケティングを当てはめると?

ということで、では、私が日頃携わっている福祉用具の仕事について、実際にコトラーのマーケティングを当てはめていくと・・・


福祉用具の仕事でのマーケティング1.0(2000年〜2005年)

大量生産・大量消費・プロダクトアウトのマーケティング1.0を福祉用具の仕事にあてはめると、ちょうど2000年の介護保険スタートのタイミングがここに当てはまると思います。高齢者人口増加、高齢者介護の受け皿として介護保険がスタートし、介護サービスを使う人が一気に増えました。いろいろな会社が介護業界にも参入し、どしどし介護サービスが使われていく時代だったのが、このころでした。


福祉用具の仕事でのマーケティング2.0(2006年〜2015年あたり)

顧客のニーズに合わせてSTP分析でマーケティング2.0を福祉用具の仕事にあてはめると、ちょうど2006年が2.0のスタート時期だと考えられます。イケイケで2000年にスタートした介護保険も、質が伴わないサービスもあったりして、国はその締め付けとして、2006年4月の介護保険制度改正で、要支援1・2、要介護1の介護度の軽い利用者への福祉用具の利用を一部制限する運用をスタートさせました。具体的には介護ベッド・車いすといった福祉用具は、軽度の利用者には必要ないよね、という制限をかけた、というわけです。それまでは制限がなかったため、特にベッドの電動機能も必要ない方も介護ベッドを安易に使っていたり、介護保険の大事な補助金も今思うと不適切な使われ方がしていたケースもあったり・・・。
福祉用具貸与の売上も、この改正で一気に30%くらい落ち込んだりして、大きな衝撃となりました。そして同時に、福祉用具業界も、質の高いサービスがクローズアップされ、相談員の専門性や利用者のニーズに合わせた提案力が重要になってきました。


福祉用具の仕事でのマーケティング3.0(2015年あたり〜現在)

価値主導・人間中心のマーケティング3.0を福祉用具の仕事にあてはめると、2015年あたりから始まり、今もこの3.0の位置に福祉用具サービスはあると考えています。利用者のニーズに合わせたサービスの質重視の2.0をベースに、さらに環境に配慮した商品のリサイクルの精度を上げたり、高齢者社会と働き手不足が実際に現実となってきたタイミングでの生産性の向上。たとえば、個別性の高かった商品から、ある一定層を包括して対応できる機種の開発だったり、IT化における業務効率向上だったり、無駄な業務の削減などでの業務のビルドアップだったり・・・。これからの仕事のあり方について、考えかたや業務内容も変わってきているのが今の状況です。
利用者の価値の創造という意味では、介護保険の福祉用具では難易度が高い、というのが正直なところです。本来であれば、福祉用具を使ってお年寄りの生活の自己実現を個別に幅広く手助けしたい、という気持ちもあるのですが、介護保険という制度の補助で成り立っているサービスが故、個別性の強すぎるニーズや要望などは、ときに「それは補助を使ってまでやるサービスではない」という贅沢品のような解釈を市町村の窓口でされてしまうリスクも有ります・・・。


福祉用具の仕事でのマーケティング4.0(今後の展望)

DXなどを使ったこれまでにないあらたな可能性を見出すマーケティング4.0を福祉用具の仕事にあてはめると、ここについてはまだ到達しておらず、これからの課題であり、これからの可能性である、と考えています。
福祉用具の仕事のDX化は各企業もまだ、はじめの導入のきっかけ部分で試行錯誤、といった雰囲気を感じます。SNSでの発信とか、ホームページを使ったマーケティングも、まだまだだったりします。
更に言うと、介護保険制度の枠組みに、もっとDXを活用した手法を取り入れていく必要があるようにも思います。国の方からDX推進せざるを得ないような、ある意味強権発動的なルール変更でもしない限り、未だアナログ中心の介護業界の現場では、DXは進んでいかないように思います。
ただし、介護保険制度ばかりに頼っていてもいけなくて、企業努力でどんどんDXを促進していくところが増えてくると業界も盛り上がってくるはず。高齢化・働き手不足・財政不足で結構待ったなしな介護保険制度に依存しすぎず、企業自体が自立して生計を立てていくような動きが進んでくる、そんな業界になっていくといいな、と思ったりしています。


●まとめ

福祉用具のしごとにおいて、コトラーのマーケティングでは2.0〜3.0に移ったあたりで止まっているのが現状だと思います。しかし、制度がどうこうではなく、DXという新たな可能性は今後に期待したいと思いますし、私も底に向けたアクションはぜひ乗っかってやっていきたいと考えています。
これまでの概念ではありえないサービスの提供、まだ私もぼんやりしていてシャープなイメージなんて湧いていませんが、あっと驚くサービスのあり方につながるかも!




ではでは。

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