電動車椅子の操縦になくてはならないもの
電動車椅子の操縦になくてはならないもの、それは操縦部位のカバーです。
スタンダード(座る形)やリクライニング(寝る形)の車椅子は馴染みがありましたが、電動車椅子は存在は知っていてもその実際に触れたことはありませんでした。
その電動車椅子を操縦する部位(ジョイスティクレバー・・・1本の棒を前後左右に倒すことで、前進‣後進、右折・左折を行うことが出来る)のカバーを作って欲しいいとの依頼がありました。
このカバーは販売されているわけではなく、横浜の車椅子専門の業者さんのところへ直接出向き作っていたようです。一時期は知人の方に作っていただいていたようですが、洋裁を辞めてしまわれたため今は横浜まで出向くしか方法はないようです。
多くの人が使うものではないので身近な場所で売ってないのはわかりますが、車椅子を使う方がわざわざ長距離を移動しなくては手に入れることが出来ないという過酷な現状に驚きました。
このカバーは手や指先の冷えを防ぐ役割もあり、数ミリ単位の指先の動きで電動車いすを操縦するためにはなくてはならない大事な役割をもっています。
「作ってみたい」と、思いました。しかし、実物のカバーを見た時にその形状と素材は経験がなかったため作ることができるかわかりませんでした。
「チャレンジしてみますが、上手く作れるかはやってみないとわかりません。それでもよければ」と、お伝えして作ることになりました。
まずは試作品からですが、何度か形にしては直しを繰り返してできあがりました。試作品を実際に装着して確認してもらい大丈夫だったので、生地を探し実際に作ってみました。
いくつかの細かいパーツを縫い合せて裏地をつけ、全体に長いファスナーをつけ、腕の部分には柔らかい保温用の布をつけるというものでしたが、繊細な操作の妨げにならないか確認しながら作りました。なんとか完成しました。出来上がったものを見て嬉しくなりました。
依頼された方は電動車椅子でなんとサッカーをされているそうで、現役で活躍されています。電動車椅子サッカーの存在を知らなかった私は、ネットの動画で調べ驚きました。ボールを蹴る時に車椅子を勢いよく回転させているではありませんか。こんなに激しいスポーツだとは想像していませんでした。この動きは指先のほんの僅かな動きで行っているのです。
そう思うとこのカバーの役割の大きさを改めて感じました。
どうせ作るなら少しでも楽しくなる工夫をしたくて、カバーの側面に取り外しのできるロゴをつけました。2種類を用意し、1つは大好きなサッカーチームの名前、そうしてもう一つはご本人の名前にしてみました。
実際に装着したところがこちらです。
サイズも合い、「カッコいい」と、ご本人も気に入ってくださったみたいで、ほっとしました。
今回はいろんなことを知る経験になりました。
その中でも、私たちが知らないだけで日常生活になくてはならない介護用品が手に入りにくい状況があるということです。少しでもこの状況が人に伝わり改善されることに繋がればと思います。
私がしたことは小さなことですが、ほんの少しでも気持ちが明るくなれたとしたら嬉しいです。