君はいくつか死線を超えてきた。でも、それで大人になったわけじゃない。枕元の抜け毛が増えていたり、お気に入りの惣菜パンがコンビニから姿を消したり、そういう小さな積み重ねが、人を大人にするのです
「もういいんだ。津美紀が、理不尽な不幸に晒されることのない世界を作りたかった。作れなくてもせめて、俺の生きている間、俺の目の届く範囲では、そんな脆い生活を維持したかったんだ。」
「手癖で作った料理を食べて、陽の当たる洗濯物を眺めて、西日のなか虎杖(オマエ)のような人間と肩を並べて歩く津美紀を見送って、ああ幸せだなって。でも、もういんんだ。」
「‥‥爺ちゃんの病気は、肺癌から始まったんだけど、結構早い段階で副作用が強いキツめの治療を拒否したんだ。俺は、体が丈夫だから、そういう治療を拒むとか、たまに聞く安楽死の話とか、いまいちピンと来ないというか、どこか他人事だったんだ。俺なら我慢できるけど、本人は辛いんだろうなって。」
「でも、高専にきて、最悪の思いをいっぱいして、これが延々続くって考えたら、爺ちゃんとかどうしようもない現実にぶつかった人達の選択に共感できるようになった。」
「だから、だから今の伏黒に生きろなんて言えない。」
『呪術廻戦』伏黒と虎杖の会話です。
『呪術廻戦(呪術)』が、あと3話で連載終了を迎えます。
実力主義である『JUMP』は、合併号等の表紙において、各作品の主役達が表紙を飾ります。
そして、その各作品のキャラクターの立ち位置と大きさが、そのまま人気と実績を、物語ります。
「JUMPSHOP」20周年を記念して6月27日~7月27日まで、サンシャインで開催された「期間限定JMUPSHOP池袋」。
『ドラゴンボール』から『SAKAMOTO DAYS』まで、昭和から現代までを彩ってきた各作品、否、各キャラクターを推す人達が、日本中から集まっていました。
透明なバッグに、推しのキャラクターの缶バッジを、隙間なく魅せる「痛バッグ」。
最も「痛バッグ」をされているキャラクターは『呪術廻戦(呪術)』五条悟でした。
ポイントと交換出来る五条のブロマイド交換の為に、1時間10分並んだ事も、今では良き思い出です。
2020年7月20日『ハイキュー』が連載終了を迎えてから、王者『ONEPIECE』を支える両翼は、ずっと『僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)』と『呪術廻戦(呪術)』でした。
2024年8月5日『僕のヒーローアカデミア』が連載終了を迎え、時をほぼ同じくして『呪術廻戦(呪術)』も連載終了を迎えます。
「生きたいと言えェ!!!!」
高校2年生の時に、読んだ『ONEPIECE』ルフィの、この言葉に心打たれた事を、記憶しています。
しかし、あれから20年程が経過した現代の最前線の作品は「生きろなんて言えない。」にまで、心理描写が進化してきています。
10年程前のブログにおいて、私は「家族」を軸に描く『ドラゴンボール』を昭和の物語、「仲間」を軸に描く『ONEPIECE』を平成の物語であると称しました。
令和となり、「家族」も「仲間」も大切な存在として描くものの、「家族」も「仲間」も常に一緒にいる存在ではなく、「家族」「仲間」という横の関係だけではなく「教師」「上司」「師」等、縦の関係を描く作品が多くなり、これにより、作品の心理描写が、より立体的なものに変化しています。
私は、昔から、主人公をあまり好きになりませんし、その仲間もそこまで好きになりません。
それよりも、敵であったり、主人公達を導く「大人」を好きになってしまいます。
漫画の主人公であるヒーロー像は、時代の鏡です。
それぞれの時代を生きる人々の憧れや、切実な感情を体現する存在、それがヒーローです。
平成初期に誕生した『ONEPIECE』と『名探偵コナン』。
ルフィ、コナンともに、どんな困難に見舞われても、常に立ち向かうヒーローです。
その強さとブレの無さは、昭和時代に確率された王道ヒーロー像を受け継いでいます。
『ハリーポッター』旋風が巻き起こった平成中期は、漫画界においても、ファンタジー作品が台頭します。
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