経鼻経管栄養に再挑戦
あまりに食事をねだるので、ある日母に尋ねた。「嫌だって言っていたけれど、延命治療をやってみる?」と。
すると、「それも手だわね。気持ちが変わってきたわ」と。何と!死の間際で考え方が変わったという。体のしんどさを取り去ってくれるのなら、何でもするということか。毎日調子を尋ねるのだが、返ってくる答えはいつも「苦しい」だった。
そこで、経鼻経管、中心静脈栄養、胃ろうがあると説明すると、胃ろうはまだ早いと拒否。中心静脈栄養は
「わからない、あなたが決めて」
「いやこれはお母さんの問題だから私は決められない」と押し問答。結局、手術になるのが心配だから、やめておくとのことであった。その結果、経鼻経管を再び試すことに。
善は急げで翌日ケアマネとかかりつけ医に連絡し、急遽家でカテーテルを装着した。しかし、27時間眠り、2日起きている特異な睡眠パターンの眠っているときに入れたため、特に説明をしないでいたら、夜中に自分で抜去してしまう。
この時は、振り出しに戻ってかなり落胆した。しかしもう方法がないので仕方がないかと思っていたところ、また「ごはんごはん」が始まり…
「お母さんがカテーテルを抜いちゃうからでしょ!」
「お前がちゃんと言わないから。言っといてくれたら抜かなかった」とプチバトル。再度挑戦で希望が見えてきたと嬉しい気持ちが込み上げていたものの、一度抜いているので、ふと、不安がよぎる。看護師さんが言っていた「経鼻経管は施設でないと管理が難しい」というアドバイスを思い出し、
「そうなると、今度はうちじゃなくて病院とかに行くことになるけれど、それでもいいの?」とすかさず尋ねた。今度は本人にちゃんと確認する。すると、
「いいわよ!」と強気な態度。認知症でも、時々ふとまともな会話ができる時がある。介護は結局、本人の意志がいちばん大切だから、まめに確認することが大切だと思う。
母が病院や施設でもいいと言ってくれたことで、正直言うとホッとしたところもある。わずか三週間ばかりの自宅介護であったが、体力に自信がなくなりつつあったからだ。
そんなこんなで、急遽安全に経鼻経管栄養を行なってくれるホスピスに入居した。