【まんが少年日々記】67話 母ちゃんのクロール【コラム】
クードーという場所がある。
砂浜が長くて海水浴にはぴったりのトロピカルビーチ。大袈裟かも。
浜には細い幹のトクサバモクマオウ(モクマオウ)方言でモクモウと言っていた。
この浜は市内の小学校が夏に恒例の海水浴で連れてくる場所だ。
が、どこにでも欠点というものがあるように、クードーもしかりで、クラゲが大量に発生する。
note『49話くらげに刺された』のマンガを参照してくださいね。
なに「なぜにクラゲ発生ビーチへ行くの」ってか
波打ち際から離れた腰ほどの場所には皆無なのよ。
先に来た教員たちのクラゲ駆除で、生徒たちの海水浴近辺は安心さ〜。
の、よ〜な気がしたが、定かでない。何人かさされる生徒もいた。
クラゲも浜に寄ってくる時期が過ぎた頃の日曜日に、家族で海水浴に行った。
いつものごとく父ちゃんは早速釣り準備をした。
この日は浜からの遠投の釣りだ。
いつもは浜で、しじみ掘りをする母ちゃんが、
気分が良かったのかおもむろにジャブジャブと水に入ってきた。
泳ぐと言い出し、三兄弟が手足をばたつかせている側までやって来る。
母ちゃんは肝臓を病んでからは、体力が落ちて横たわる事が多かったのでびっくり。
「母ちゃんはな。若い頃は、群の陸上競技の砲丸投げ選手だっだんだぞー」
「泳ぎも得意で、水泳大会では1位になったこともある」
「今日は、何十年ぶりかの母ちゃんの勇姿を見せてやるから」
いつも短気で鬼のように怒る母ちゃんがこの時は、キラキラ輝き神々しかった。
三男「じゅんになー」
(そうなのか〜)
次男「だーるば〜、そしたら、みしれ〜」
(本当になー、だったら、見せてー)
長男「あだら、無理したら、どぅーが、だりるどー」
(やめれ、無理すると、身体が、だるくなるどー)
母ちゃん「んなない、みーうきよ〜」
(みんな、見ていなよー)
その後・・・、海水をたっぷり飲む三兄弟であった。
なに「意味不明な事言うなよ。なぜ海水飲む羽目になるんだ」ってか。
爆弾が爆発したかと思うようなクロールだったのよ。
手さばき足さばきに跳ね上げた水飛沫は津波のごとき波で、溺れるかと思った。
遠くで、リールにテグスを巻く父ちゃんが朗らかに笑っていた。
日頃、気だるい姿ばかりの母ちゃんの元気そうな勇姿に安心でもしたんだろうか。
が案の定、家につくなり母ちゃんは横になる。
夕食の炊事は父ちゃんが腕を振った。昼間釣った魚の煮付けだ。
母ちゃんの水泳の記憶はこれっきり。
母ちゃんの海関係の思い出もうひとつ話そう。
ある年の里帰りで、父ちゃんと母ちゃんと長男の私で、釣りに行った。
父ちゃんは沖に近い場所だ。長男の私はどーせ釣れないよ。と、浜でしじみ掘り。
母ちゃんは私の近くの浅瀬でテグスを垂らし魚を待っている。
長男の私「はっしゃ、母ちゃんよ。膝丈もない浅いところで釣れんだろー」
母ちゃん「神様が魚を呼んでくるから釣れるよ」
我を張ると後戻りしないタチなので、それ以上は言わずにいた。
程なくして、えっ、うそー。そんなの有り得ないじゃない。って事がおきてしまった。
ゆっくりリールでテグスを巻くその先で30センチほどの白い輝きがうねり、釣り竿をゆらせていた。
帰りの車の話題は母ちゃんの釣り談義。
父ちゃんまで、他人は信じられないが、母ちゃんが釣る場所へは必ず魚がやって来ると、
ニコニコしながら我事の様に有頂天で喋る父ちゃん。
当たり前じゃないのと言う様な顔でパンをほうばりネクターを飲む母ちゃん。
ん。長々と思い出を書いてしまった。ふ〜ここらで、おしまいにしましょう。
現在、毎朝、お茶と朝ご飯とおかずを盆にのせて、
昨日の平安と見守りのお礼をして、
母ちゃんと二親のご先祖様が、今日も、向こうで、すこやかで、ほがかに、
楽しくて嬉しい一日でありますように!と、手を合わせるのが日課になっている。
読書感謝。拝
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次の更新は 68話の標準語版 です。
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ブログにも掲載してます。他の漫画もあるので良かったらみてなー( ´ ▽ ` )