探し物は嘘泣きで
私は5~6歳の頃、お人形遊びにハマっていた。
特に好きだったのは、着せ替え遊びだった。
このワンピースには、緑の靴。
この格好には、帽子を被せる。
アクセサリーは服ごとに変える。
まるで、小さいスタイリストのようだった。
歳の離れた姉2人からのお下がりで
10体以上の人形と、大量の人形の服が常にそばにあった。
その大量の服の中でも、1軍のお気に入りは
某猫のキャラクターの、ピンク色の箱に入れていた。
ナイロン製でできた箱は、ちょうどカラーボックスに収まるくらいの大きさだった。
ピンク色の箱を豪快にガサっと、丸ごとひっくり返して
遊び始めるのがいつもの癖だった。
お人形の靴も、服も、アクセサリーも全てごちゃ混ぜの
中から、探したい物を探すのは大変だった。
探し物が見つからないと、泣き虫な私は直ぐに泣いてしまう。
ひとしきり泣き、目をそっと開くと
探していたはずのお人形の靴が、綺麗に並んで目の前にあるのだ。
不思議だなと思いながらも
まぁ、見つかったからいいや!とそのまま遊び続けた。
そんなこともすっかり忘れたある日
私は、お人形遊び中に再び泣いてしまった。
泣き終わって、目を開くと
さっきまで探していた物が、目の前にあるのだ。
そんなことが、何度か続いた。
最初は、家族の誰かが持ってきてくれたと思ったが
流石に、足音もしないのはおかしい。
何だか分からないが、泣くと探し物が見つかる
「ナニカ」が探してくれる。
味をしめた私は、その日から探し物が見つからないと
嘘泣きをする癖がついた。
泣いてないことが、ナニカにバレないように
手で顔を覆って、泣き真似をする。
そうすると、やはり目の前にお人形の服や、靴があるのだ。
最初は、目の前に探し物が来ていたのに
だんだんと、私から少し遠くの場所で見つかる様になった。
そのうち、泣き真似をしても探し物は見つからなくなった。
今度実家に帰ったら、泣き真似をしてみようと思う。
私は、今だにナニカを探しているからだ。