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地獄の「プラスティック・メモリーズ」

大分、時間が空いてしまいましたが、前回の記事では、私がゴールデンカムイが地獄だよというツイートに切れたということを書きました。

では、私にとっての地獄のアニメとは何かと考えたときに、思いついたのが「プラスティック・メモリーズ」だったので、それについて書きます。


「プラスティック・メモリーズ」とは

プラスティック・メモリーズは2015年4月に放送されたアニメなので、もう6年前の作品になります。「ギフティア」というアンドロイドが普及した近未来の日本を舞台とした、ツカサ君とアイラちゃん(通称プラメモちゃん)の恋愛模様を描いた作品です。

「ギフティア」でヒロインのアイラちゃん(通称プラメモちゃん)は、特徴的な「~ので」という口調で話すことから、当時「~ので」という語尾を使ったりしていました。あと普通に可愛い。

恋愛アニメとしては割と普通の「プラスティック・メモリーズ」ですが、私が地獄と聞いて真っ先に浮かんだ作品でもあります。

世界設定とか

「プラスティック・メモリーズ」というタイトルは、直訳するなら「可塑性の記憶」です。失われる記憶をテーマにした作品で、個人的にはよくできたタイトルだと思ってます。

さて「ギフティア」というアンドロイドは、法律を含めてほぼ人間と同じ機能を持ちますが、寿命が約9年間しかないという特徴があります。なお、この寿命はハード的なものではなく、ソフト的(というか記憶が失われる)なもので、寿命が近づくと異常行動(周辺の人間への加害行動など)をとるため、その前にメンテナンス部門(主人公のツカサ君のお仕事もこれ)が回収するという設定になっています。ちなみに、同じ「ギフティア」を再度派遣することも可能(もちろん記憶は失われている)なので、「ギフティア」のハード的な寿命はかなり長いと推測されます。

アンドロイドの寿命をどの程度に設定するかは、作品によってまちまちですが、ソフト的とはいえ人間の寿命よりも短く設定するのは割と珍しいと思いました。

さて、「プラスティック・メモリーズ」は残り寿命が1000時間を切ったプラメモちゃんとつかさ君の交流を描くことで、記憶とは何かを描こうとする作品なのは間違いありませんし、それは描けていると思います。

地獄要素とは

さて、じゃあ何が地獄なのかというと、「ギフティア」はプラメモ世界ではれっきとした工業製品だということです。「ギフティア」は、ほぼ人間と同等でありながら、寿命がきっかり81,920時間(これが約9年)しかなく、これを超えるともれなく暴走して周囲に被害を及ぼす(しかも「ギフティア」の身体能力は人間の数倍あります)工業製品が普及している日本、という設定が何とも地獄だと思ったからです。これどうやったら製品として認可されたのか、当時も友人と話し合ったのですが、「作品の都合」以上の結論が出ませんでした。

「ギフティア」の寿命が人間よりも短いのは、残り寿命が短いプラメモちゃんとの悲劇的な恋愛を演出するためなので、まだ理解ができますが、ソフト的に81,920時間きっかりに寿命を制御できている(劇中の演出で何回も見た)のなら、その前に自動停止させるといった「フェイルセーフ機能」を持たせないとダメだろこれと見ていて何度も思いました。しかも、寿命が過ぎると、アクティブに暴れまわり始めるという謎仕様のため、その危険性が増しています。寿命が来たら動作しなくなるならまだよかったのですけどね。これもまあ、ツカサ君のお仕事(「ギフティア」の回収)をストーリーに絡めたいという作品の都合だというのは分かるのですが、工業製品としては欠陥がありすぎるだろと、当時も思いましたし、今でも思います。

こんな欠陥製品を認可し、普及せざるを得なかった近未来の日本社会とは、どのような絶望が渦巻いていたのかなと思いをはせずにはいられません。(風の谷のナウシカで、巨神兵を作ってしまった旧人類とかと同じ話)つまり、これが私の考える「プラスティック・メモリーズ」の地獄要素です。

まあ、実際のところは記憶が消えてしまうヒロインとの恋愛を描きたい作者の都合というのが、実際のところだと思うのですが、個人的にはもう少し「ギフティア」の設定には頑張って欲しかったなと思ってます。

その他

地獄の話はこれで終わりにして、後はプラメモで思ったことを適当に書きます。「ギフティア」の製品寿命は約9年と人間よりもはるかに短く設定されていましたが、これは結構リアルなのではないかなと思います。SFとかだと、ロボットは半永久的に動作するみたいな設定も多いですが、実際にはメンテナンスしない工業製品なんて、数年で動作しなくなるのが当たり前ですし、そもそもメンテナンス部門がその前になくなるからです。

例えばソニーのaiboはそのよい例かなと。メンテナンスを販売終了後7年間しか保証できないという記事がありました。

aibo修理打ち切り方針「見直して」 販売終了後7年…愛好家ら要望、サポートの充実課題

ただ「ギフティア」はハード的にはかなり丈夫っぽいので(下手すると100年くらいは持ちそう)やっぱりリアルじゃないかも。

後は「プラスティック・メモリーズ」のテーマでもある記憶の価値についてですが、記憶の継続性がないことは意外と大したことがないんじゃないかなと個人的には思ってます。つまり、プラメモちゃんの記憶が消えて、ハードがそのまま別人格として再度ツカサ君の前に現れたとしても、多少の違和感はあるだろうけど、何だかんだいって普通にイチャイチャするんじゃないかなと。というのは、人間はガワが同じなら、大体同じ人物だと補正出来てしまうのではと考えているので。

なので、個人的には「プラスティック・メモリーズ」の結末は、作者さんの想定とは違って、そこまで悲劇的なものではないなと思っているところはあります。世界設定は地獄ですけどね。

「プラスティック・メモリーズ」は、こんな記事を書いておいてなんですが、今から見る必要は無いかなと。あえて言うなら、「ギフティア」の工業製品としての欠陥について考察したい人ぐらいでしょうか。

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