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強い人になるために

「強いってなんですか?」

小学生の頃に読んだはじめの一歩のセリフを唐突に思い出す。

総合格闘家であり、修斗初の2階級同時王者である新井丈さんとお会いした。昨年、彼の絵を描かせてもらう機会があって、それ以来のご縁なのだが、お会いするのは昨晩が初めて。

西川口にあるフィットネスジム、「FIGHT BEAT WORKOUT」の納涼祭に、ご縁あって参加させてもらっていた。

丈さんはそのジムのインストラクターであるため、ひょんなことから初顔合わせに。

私の方が先にジムに着いており、食卓を囲って参加者さんと談笑していたところ、後からお見えになった丈さんが私の顔を覗き込むように声をかけてくださり、不意を突かれた私はお寿司を口に含んだままご挨拶する事態となった。


彼の放つ雰囲氣は他の方とまるで違っていた。

ドッシリとした芯の強さと、緩やかな氣の流れのようなものを感じる方だった。あからさまに強そうな雰囲氣を放っているわけではなく、一見柔らかいのだが、中身に確かな強さを……。交わした言葉数はそんなに多くないのだが、彼の物腰や立ち振る舞いからそんなことを感じていた。

「強いって何だろう」

丈さんと同じ空間で過ごす中で、私はボクシングを始める前の一歩さながらに自問自答を繰り返す。



新井丈は9連敗からの11連勝を挙げ、2階級チャンピオンにまでなった男である。

3連敗したら引退するのが常の格闘技界で、彼は9つもの連敗を記録し、そこから2階級のチャンピオンになっているのである。なんと常人離れした精神力か。

彼は私に、「バカだっただけ」とこぼしたが、その感覚は私にも思い当たる節がある。私も漫画家を目指して以来、結果が出ずともひたすらに漫画を描いてきた。応募した漫画賞には悉く落ちてきたし、周りからは散々に言われてきたものである。今は商業連載のリングから降り、個人で創作活動をしているが、漫画歴10年を超えたあたりからようやく自分らしい作品を描けるようになってきて、有り難いことに応援のお声もどんどん増えている。

私は特段酔っていたわけでないが、僭越ながら「私も丈さんと同じですよ」ばりに自分史の一部を語ってしまった。振り返って当記事を書いている今は少し恥ずかしい氣分である。


丈さんにそんなことを語っている自分にも〝強さ〟のようなものを感じた。

まるで新井丈と対等な人間ですばりに話している自分に少し驚く。きっと、それまでの、自分らしい作品を描けなかった頃の自分が仮に丈さんと話していたら、物怖じしていたことだろう。

この強さは、これまで応援してくださった、日頃応援してくださっている方々がくれたものなのだと、改めて応援者さんに感謝した。


強さとはきっと、肉体的や技術的なものでなく、経験によって培われるものなのだろうと解釈を得る。


丈さんは9月のRAIZINに出場されるとのこと。

格闘技に明るくない私でもRAIZINの名前は知っている。

心ばかりだが、応援しようと思う。

私もまだまだ闘う。






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新井丈さん




「Yogibo presents RIZIN.48」
in さいたまスーパーアリーナ
2024年9月29日(日)12:00開場(予定)/ 14:00開始(予定)


今回をご縁を繋いでくれた安田みつきさんに心より感謝申し上げます。

また、フィットネスジムの生徒でもない私を納涼祭へ歓迎してくださったオーナーの猿田洋祐さん、そして参加されていた皆さんにも感謝申し上げます。

有り難うございました。

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