タグラグビーから得た学び -生活やビジネスのヒント-⑥振り返りノート-


【評価は進捗確認】
我々は評価し、評価される。学校でも教師から通知表やテストで常に評価されるが、反対に、学生もまた「あの先生はどうだ」と評価をしている。「評価なんか気にしない」とはよく聞くが、現実評価を気にしないことは難しいと思う。
私も評価がすごく気になる性格だ。そういう意味でスポーツのいいところは評価が明確に決まるところなのかもしれない。スポーツにおいて試合の結果こそが絶対的な評価だ。目的は勝つことだけではないのだが、目標という目的達成の進捗確認の意味ではそれが大切であるし、何より方針が間違っているかの判断材料として非常に強力なものである。
この結果を受け止めたうえで振り返りを行うのだが、振り返りでよく書くノート、日報についての学びを紹介する。


【練習ノート】
子供にとっても評価は気になるものだ。練習ノートを書かせているとこれでいいのか、悪いのかよく聞かれる。
昔はつまびらかに教えたことを書くようにといっていたのだが、今は練習のポイントを3つ書くことと感想だけに簡素化している。さらに過去、提出されたノートにABCのような学校的な評価をしていたし、選手選考にも使っていたがもうやめた。理由は、評価をすることで「ノートをきれいに書くことが目的となる」からだ。すごくきれいに書かれていても練習でできなければ意味がない。もちろん、振り返りのために深く考えることは大切だし、できていれば素晴らしいと思っている。だが問題なのは、たいていの子供は評価のために綺麗にノートを書こうとする。あるいは、保護者もいい評価がもらえるように書かせる。これが起こると見栄えのいいありきたりな文字が並ぶ。たいていノートを見るとわかるが、自分で考えて、ノートで書いた学びがプレーに生きてくる選手はノートに仮説やその時の心情が多く書かれ、「感想」が多いという特徴がある。逆に書かされた子供たちはみな同じ「事実と原因」のみを書いている。感想があるかないかだけでも全く違うのである。
いい選手のノートは「この時こう思ったからこうしたけど、こうなったからこうしちゃった。次はこうする。」「今日はこれが出来たけど、こうなった。原因は分からない。でも次がんばる。」と書いてある。大切なのはわからないものもあるし、全てのポイントを押さえられていないこともあるということだ。まず、原因がわからなくてもいいと思う。むしろわからないことは至極当たり前で気づくチャンスだ。また、ポイントも意識できないなら次に覚えればいいし、覚えていないことを見たコーチは気づけるので大切だ。
いいノートとは分かっていることを正直に書いてあるノートである。

【わからないものは分からない】
原因がわからないのは分からないことがわからないこともあるからである。


「快適な乗り物は何か」という有名な質問がある。きっと皆さんは「車」や「飛行機」があがるだろうが、馬車しか知らない時代の人は馬車としか答えられないのだ。人は知っているもの中でしか考えられないし、答えられない。振り返りを行うにあたって、自分が認知していない分野を振り返ることは難しい。


ともするなら、インプットがあって初めて振り返りは行えるのである。振り返る前に自分はどの軸で振り返りをしているのか、あるいは、何を基準に振り返るのかを明確にしておくと、今後知見が増えたときに過去振り返れていなかった部分などが明確にでき、より効果的に振り返りを行うことが出来るのではないだろうか。
インプットされていることが明らかにしておくことが将来的にまた見返すと新たな発見があるのかもしれない。
振り返りに「賞味期限」はないからこそ、繰り返し行うことが大切である。
また振り返りの軸が練習毎に一つ、また一つと増やすことが出来ればそれだけ成長をしているということにもなるので、まずは「自分のわかることはなにか」から考えることがよいのかもしれない。

反対に評価をする人は、答えられないものはきかないことは大切である。わからないものはわからないでいいのだ。つぎにおこなうべきは「わからないものをできない」に変える作業をするのが練習をコーディネートする監督の役割なのかもしれない。
だからこそ、「気づく」引き出しを用意することが、本質的には大切である。たとえば、なぜその結果が生まれたのかの仮説だったりや、できることになった要因は何かといったような仮説を引き出すことで、選手はより深く自分のわかる分野を深堀することが出来るほか、「みえていなかった」新しい世界の“扉”を見つけることが出来るからだ。
つまり見えていないもの(わからないことではない)ことは、新しいことに気づくチャンスだ。
それに気づくことが出来ればきっと今よりも素晴らしい、次につながる振り返りとなっているはずである。

今回は振り返りの重要性とその要諦を記述した。次回は「振り返り方」のHowの部分についてもう少し詳しく話したいと思う。

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