マニュピレイターの片鱗
私は彼と出会った時、喫煙者だった。
そして彼は非喫煙者で、タバコもタバコを吸う人も嫌いだった。
私は喫煙者だが、時々ヘビースモーカーになる時はあるが、喫煙する人と出かけたらタバコを吸う程度だった。
だから彼には、自分で辞めると決めたタイミングで辞めると言っていた。
彼の前では吸わないし、家の中でも吸わなかった。
喫煙者がいない席では喫煙しない。
でも彼は完全に辞めさせたかった。
私たちは喫煙のことで何度も喧嘩をした。
私は自分のことは自分で計画をたて、自分で決めてきたし、それまでのボーイフレンドに何かを制限されたり強制されたことはなかった。
彼は、僕が君に何度もタバコを止めるように言うのは、彼が私のことを真剣に考えているからだ、と言った。
あの時は自分の意思70%、彼の言うことも一理ありに30%というところだった。
私の中にそこまで強気拒否感や、誰かにコントロールされるという経験も恐怖感もなかったため、素直に彼の言うことを尊重する気持ちもあった。
常識で言っても、体のことを考えてタバコを止めることはいい事だ。
そんなことは自分でも十分分かっていた。
彼は喫煙のことだけでなく、ゆっくりと少しずつこのうように私を彼のルールに従わせようとするのだった。
そして私がそれに反論したり、反発したり、断ると、君はいつも僕と競おうとしている。
僕は君の敵ではない。
敵ではないことは分かっている。
でも彼は私のことを好きだと言いながら、私の全てを否定していた。
私の全てを変えようとしていた。
だから私はずっと違和感を持っていたのだと思う。
綺麗だよ、でも鼻はもう少し小さい方がいいね。
綺麗だよ、でも髪の色があまりにも明るすぎるね。
綺麗だよ、でもそのスカートは短すぎるね。
彼はいつもこのようにして、私以外の誰かに対しても褒めて落とすのだ。
今思えば、彼が褒めて終わったことなどなかったんではないだろうか?