#8 東京ヴェルディ(アカツキ) vs 町田ゼルビア(サイバーエージェント)の勝敗は、ある「差」によって分かれる
"Difference" could be a decisive factor of victory and defeat as a brand between Tokyo Verdy (Akatsuki) vs Machida Zelvia (CyberAgent).
東京ヴェルディの経営に参画するアカツキと、町田ゼルビアの経営に参画するサイバーエージェント。どちらがブランドとして成功するのか。未来を予測することなんて無理なことだが、ある「差」によって勝敗が分かれるのではないかと考えている。
まず結論から言うと、アカツキの経営する東京ヴェルディが成功する可能性が高いと考えている。
どちらの方が成功するか自体には興味がなく、何が勝敗を分けることになるのかということに興味がある。そのことについて、ここでは書きたいと思う。
成功する理由
アカツキの経営する東京ヴェルディが成功すると考えている理由を述べる上で、多くのことは考えていない。株主としての企業体力や業績や出資比率、プロスポーツクラブの経営実績、クラブの規模や売上、チームとしての完成度や強さ、プレーヤーの質といったことは考えていない。
ある一点、重要で本質的な部分のみを見ている。というより感じている。
それは「熱量」である。
シンプルに「熱量」の高いほうが成功すると考えている。この「熱量」の差によって、東京ヴェルディの方が成功すると思っている。
実は、双方の経営者は同じことを言っている
両者は似たようなタイミング、同じJ2で、しかも昇格争いをしているチームの経営に参画することを発表した。サイバーエージェントは、町田ゼルビアの80パーセントの株を取得し「買収」をした。一方のアカツキは、東京ヴェルディの一部の株式を取得し「関連会社化」した。保有形態には違いはあれど、Jクラブの経営に参画することには違いはない。
町田ゼルビアを買収したサイバーエージェントの社長である藤田氏は、買収後に「東京・町田から世界へと通じる、ビッグクラブへの成長をサポートしていきたい」と語っている。
そして、東京ヴェルディを関連会社化したアカツキの社長である塩田氏は、「これからヴェルディが世界に冠たるクラブになっていくと考えるとものすごくワクワクする」と語っている。
つまりは、「東京発の世界的ビッグクラブを作りたい」と同じことを言っているのだ。
熱量の差はどこから感じられるのか?
では、同じことを言っている両者からなぜ「熱量の差」が感じられるのか。それが初めはあまり分からなかった。
しかし、Jクラブへの経営参画において双方の経営者が語っている記事を読んでいくうちにその理由が分かってきた。、両者は以下のように話している。
サイバーエージェント 藤田氏
「僕がいた頃のヴェルディはJ2でしたけど、選手の補強費が断トツでした。それでもなかなか勝てず、サッカーとは不思議だと当時は思っていたんですけど、その意味でも町田は作り上げてきたサッカーチームとしての文化や、経営陣や監督の優秀さがある。それらを尊重しながら世界的なクラブへと持っていくところで、この先にどのような絵を描いていくかを今は考えています」
「マーケティングが上手くいけば世界に通じるし、世界の代表的な選手がアジアのマーケットでキャリアを考える流れもできている。マネタイズも放映権を地上波に売るという一本やりではなくなってきたし、ファン獲得などのコミュニティー作りも含めてやれることが非常に多いと考えています」
「今回改めて、Jリーグの成長性・将来性に非常にポテンシャルが大きいと感じた。(楽天の)三木谷さんが海外のスター選手(イニエスタ選手)を日本に呼ぶ流れもあるし、東京発のビッグクラブが出るんじゃないかと思っている」
「まず、J1ライセンスを取得するためのハード面を整えるのに専念する」
アカツキ 塩田氏
「過去に素晴らしかったものや栄光、実績、そして物語がそのコンテンツにあるかどうかがものすごく重要です。僕自身が小学生の頃にサッカーをやっていたのですが、ちょうどそのときにJリーグが開幕しました。あの頃は全員がサッカー部に入ろうというくらいにJリーグ人気がありましたし、そのときにヴェルディというクラブが僕の心に刻まれたんです。結局、子どもの頃の体験というのは、とても重要で、ヴェルディには伝統と文化があるのが僕自身の中にも刷り込まれている。ただ、その中でこの10年間くらいは、チームの成績も含めてあまり良いものではなかった。そこでわれわれがゲームの世界で培ったノウハウを生かしながらお手伝いすることで、もう一度、このブランドを復活できるのではないかと思ったのです。過去に素晴らしいものがあるので、その素晴らしさをもう一度、新たな形でお届けしたいと考えたんです。」
「J2からJ1へ上がって行き、世界的なクラブになっていくという旅路を、一緒に歩んでいくということ自体にワクワクしているんです。短期的な経営を考えるのではなく、もっと長いスパンで考えています。この旅路を、チームの方々、ファン・サポーターの方々と一緒に歩んでいきたいと思っています。」
トップのこれらの発言を見て感じたことは、
サイバーエージェント = 機能的、現実主義
アカツキ = 情緒的、理想主義
この差が熱量の差となって表れているということが分かった。
トップの熱量は末端まで伝播する
藤田氏、塩田氏は、クラブの経営に直接的に関与することはあまりないだろう。実際にアカツキの塩田氏も「僕自身はいろいろな経営もあって、物理的にヴェルディだけにコミットする、というのが今後、難しい部分もあるかもしれない」と言っている。
しかし、以前にも書いたようにブランドの成否の80%ぐらいは、そのブランドの経営者やオーナーにかかっていると思っている。経営者やオーナーがブランドに対してどれだけの意志があるのか、熱があるのか、覚悟があるのかが成否を分ける。トップの熱は末端まで伝播する。その熱は内部だけでなく、外部にも伝播する。
今回、アカツキとサイバーエージェントの両者を見比べてみると、アカツキの方がより意志や熱、そして覚悟が感じられた。
サイバーエージェントも明確なVisionやMissionがあり、一般的な日本の大企業と比べると熱量もあり、情緒性の高い企業であるとは思うが、アカツキとの熱量という点での比較では負けていると感じた。
ただ、Jリーグが世界と伍して戦えるリーグとなるためには、この両者が「東京発の世界的ビッグクラブ」となってくれることを願っている。東京発のビッグクラブは1つだけでなくてもいいのだ。