南夕子とは何者だったのか(2)妹よ、永遠なれ/『ウルトラマンA』覚え書き(30)

前回、水島新司の漫画『野球狂の詩』に登場する水原勇気について書いた。書き終わった後、妻とその事を語り合った時、彼女は水原を「無色透明」と形容した。なるほど、水原勇気を表現するのに、これほどぴったりな言葉はないかもしれない。

水原は、つきつめれば単に野球が好きな女の子にすぎず、それ以上でも以下でもない。そんな彼女を、プロ野球選手に仕立て。ドリームボールを教え、そのドリームボールを打とうと奮闘するのは、岩田鉄五郎をはじめとする個性豊かな男たちだ。男たちが頑張れば頑張るほど、水原勇気というピッチャーは存在感を増し、しかし彼女は無色透明であり続け、だからこそ男たちはさらに頑張る。

テレサ・テンの歌に、あなた色に染められ、という歌詞があった。男が、自由自在に色付けできる、塗り絵のような存在こそが、男たちの理想かもしれない。チェーホフの「可愛い女」のヒロインは、付き合う相手が変わるごとに、その相手に合わせて自分を変えていく。そういう女性は確かに存在するのだろう(女性の特質というより、社会的なもの/下位に位置づけられてきたため、上位とされる者に従うしかない)。

そして、そういう男たちの欲望と、その浅ましさを見抜き、犠牲となった女たちの存在をリアルに見つめたのが、『源氏物語』の作者・紫式部だ。貴公子・光源氏の「いろごと」の餌食となり不幸になっていく女たちを、女性である紫式部は冷淡な筆致で描く。そして、光源氏が理想の女性に育てようとした若紫は、幼くして病死してしまい、光源氏自身も虚無に陥っていくのだ。

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