モラトリアムという鎖/『ウルトラマンA』覚え書き(20)

俺は妙なところにいた。
目のとどく限り、無数の人間がうじゃうじゃいて、みんなてんでに何か仕事をしている。鎖を造っているのだ。……
みんな、十重にも二十重にも、からだ中を鎖に巻きつけていて、はた目からは身動きもできぬように思われるのだが、鎖を造ることとそれをからだに巻きつけることだけには、手足も自由に動くようだ。せっせとやっている。……
「みんなは黙って鎖を造っていればいい。鎖をまきつけていればいい。そしてただ、数年日に来る代表者改選の時に、俺達の方の代表者に投票をすればいいんだ」……
俺は再び俺のまわりを見た。
ほとんどなまけものばかりだ。鎖を造ることと、それを自分のからだに巻きつけることだけには、すなわち他人の脳髄によって左右せられることだけには、せっせと働いているが、自分の脳髄によって自分を働かしているものは、ほとんど皆無である。(大杉栄「鎖工場」)
台本を頂くとまず表紙にタイトルが書いてありますよね。
「青春の星ふたりの星」 このタイトルを見た時、あ、星司さんと夕子さんの話だって思いました。
ちょっとはロマンス漂わせたりするのかな?
なんて少々期待なんかしたりして。
で、読み終わってガッカリ。今回も出番ほとんどありません。
「なんだ、違うじゃん」(星光子のブログより)

『ウルトラマンA』第20話/青春の星 ふたりの星

脚本=田口成光/監督=筧正典

北斗星司(高峰圭二)は飛行パトロール中、北極星の方角から、夜空を飛ぶ一艘の豪華クルーズ船が現れ、ある港に着水するのを発見する。だが、TAC基地のレーダーにはそんな船は映っておらず、竜隊長(瑳川哲朗)はリフレッシュのため休養しろ、と命じる。

休暇をとった北斗が向かったのは、くだんのクルーズ船が着水した港だった。昨夜見たのと同じクルーズ船が係留されていた。甲板にあがってみると、船尾には同じ、青地にペガサスの紋章の入った旗が翻っていた。旗をおろし、「やっぱり、そうだ。間違いない。ゆうべ見たのは、この旗だったんだ」と確信する北斗。その背後から「ばっか野郎!」と掴みかかる青年。「俺の旗を無断でおろす奴があるか!」

青年の名は篠田一郎。演じるは、翌年『ウルトラマンタロウ』で主演する篠田三郎だ。すでに次回作の主演が決定していた彼は、プロデューサーの配慮で現場に慣れるようにと、ゲスト出演させたのだという(ちなみにテストではない。篠田はすでに、大映映画で複数の主演作を持ち、テレビドラマ『ガッツジュン』などにレギュラー出演していた)。

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