赤と青のガウン オックスフォード留学記(彬子女王)
1 タイトル
赤と青のガウン オックスフォード留学記 彬子女王
2 選んだ理由
昔から皇室ネタは割と好きですが、昨年、X(旧Twitter)でバズっていたことでこの本の存在を知りました。特に、こういうローマの休日的というか、プリンセスが留学してどのようなカルチャーショックを受けられたのか、ご自身の言葉で語られているということで興味がわきました。
3 簡単な感想、印象
著者のことについては、皇族であり、さらに、研究者として博士も取られ、京都で研究生活や様々な活動を行われているということで、大変興味深い方でした。
読んでみると、予想通り、全体として、国民とは違う「皇族」の方のものの見方や感じ方が率直にわかりやすく時にユーモラスに表現されているのは楽しむことができました。
「日本美術」の研究に興味を持つのも、こういうお立場の方だからなのだろうと思いますが、あまり日常的に意識することのない分野なので、その点でも面白く読みました。
さらに、外国の大学の厳しい授業の様子を読み、改めて、のんきで何も考えない大学生活の浪費をした自分を反省することになりました。
4 印象に残ったフレーズ
P47 「英国に留学しています」というと、「護衛の方はどうされているんですか?」とよく聞かれる。答えは「EU圏内における2週間以上の滞在の場合、護衛官は付きません」である。
P133 皇族は「日本国民」ではない。戸籍や住民票はないし、国民健康保険には加入させてもらえない。だから海外旅行をするときに発行されるパスポートも、普通の赤や紺の表紙のものではない。表紙には「外交旅券」と書いてある茶色のパスポートで、外交官が持つものと同じである。
…さて、空港でチェックインするときにこの茶色いパスポートを出すと、大きく分けて三通りの対応をされる。まったく意に介しない人、気づいてパスポートと私の顔を見比べて「にやっ」とする人、このパスポートが何かわからず解明しようとする人である。
P175 法隆寺金堂壁画…英国には、1949年に火災で焼失する前の法隆寺の金堂壁画を再現模写したものが保管されているということが分かったときのエピソードの紹介。
P184 おいしい英国料理が食べたければ、英国人家庭に招待していただくのが一番である。例外はインド料理とタイ料理だろうか。比較的安定していておいしい店が多い。でも、頻繁に食べに行くものでもないので、やはり自炊をするのが一番なのである。
P222 …調査ができるのは太陽が出ているあいだだけと決まっている。陽が落ちたからといって、電気をつけて調査を続行するのは許してくださらない。それは、江戸時代の絵画は、蛍光灯のような人工光の下で鑑賞することを想定されていないからである。…「画師が想定した環境下で作品をみなければ、作品の実力や、当時それを鑑賞した人びとの感動を味わうことができない」
P225 「どうしてそんなに作者の名前を気にするんだ。目の前にこんなに素晴らしい作品があるのに。作者に失礼だ」(日本美術研究者は初めての作品に出合うと真っ先に落款や印章を確認し、真贋の判断をしてしまいがちであることに対するアメリカの美術品蒐集家のコメント)