時を越えた椿。
京都にある龍安寺には、日本最古とも言われる侘助椿があるという。
その椿を豊臣秀吉が褒めた、なんて逸話もあるそうだ。
さて、時を越えた椿の話は実はウチにもある。
85歳の祖母が、うら若き少女だった頃。
戦時中の話だ。
当時ありとあらゆる物は不足した。
椿の種は、中身を割ると黄色い椿油が出てくる。
髪油すら不足した当時、祖母達はサラシでくるんだ椿油を頭に撫で付けて髪を洗った。少女の頃、催花雨のように、髪に撫で付けた。
椿の種は、遊び道具としても使えた。おはじきの代わりに種を弾いて遊んだと聞いた。
今から75年以上も昔の話。
今でも、我が家ではおはじきとして活躍している。
種を集めるのが好きな祖母と、せっかく拾ったからと遊んでいる時に聞いた話だ。
時の旅人となった祖母は、同じ話を繰り返す。
この時認知症の調子が良かったのか、種が刺激になったのか。記憶の扉が開き、初めて聞けた。
ただ、祖母からこの話を聞けたのが嬉しかった。
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