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漫才師「あーだこーだ」【ショートショート】
相田:「ど~も~!あいだです!」
向田:「こうだです!」
2人:「2人合わせてあーだこーだです!」
相田:「今日もワチャワチャやって行きたいと思います~」
向田:「なんやかんややって行きたいと思います~」
相田:「どーにかこーにかやって行きたいと思います~」
向田:「ワイワイガヤガヤやって行きたいと思います~」
相田:「……」
向田:「?」
「おい、次お前の番だぞっ」
「あーだこーだやって行きたいと思います~だろ!?」
相田:「…長くね?このやり取り」
「絶対お客さんも「もうええって」みたいになってるわ」
「やめよ?」
向田:「えぇ…!?やるなら徹底的にだろ!!」
「俺中途半端なのは嫌なんだよ!!」
相田:「でもお前半熟卵大好きじゃん」
向田:「…は?」
相田:「お前それ半熟卵にも言えるか?中途半端なとこが嫌いって言えるか?」
向田:「いや、半熟卵の話は今してない…」
相田:「話をそらすな!!俺は今半熟卵の話をしてるんだ!!」
向田:「いや、俺は漫才の掴みの話がしたい…」
相田:「俺は半熟卵の話がしたいんだよ!!!」
「いいか!?半熟卵が嫌いなんて言ってみろ!!」
「まずハンバーグとカルボナーラは絶対黙ってないぞ!!」
向田:「ハンバーグとカルボナーラの意見は聞いてないって!!」
相田:「でもハンバーグとカルボナーラはそう言ってんだよ!!!」
向田:「お前、ほんとか!?絶対ハンバーグとカルボナーラがそう言ってんだな!?」
相田:「あぁ!!絶対言ってるわ!!!」
向田:「はい嘘~!!ハンバーグとカルボナーラの中にも半熟じゃなくて完熟卵の方が好みの奴絶対います~」
「勝手に主語を大きくしないでくださ~い」
相田:「はい残念でした~!!俺はハンバーグとカルボナーラ全員が、とか、みんな、とか言ってません~」
「そういう奴だっているだろって話です~」
向田:「乗ったら乗ったで凄い嫌な気持ちにさせてくるやん…」
「大体俺、半熟卵嫌いだし…」
相田:「え…!?」
「いやいや、お前小学校の時から半熟卵大好きだったじゃん」
「お前の初恋、半熟卵みたいなとこあるじゃん」
向田:「なんで俺の初恋半熟卵に奪われてんだよ」
「嫌いだよ、あんな奴」
相田:「え…思春期…?」
向田:「違うわ」
相田:「お前遠足で俺のお弁当の半熟ゆで卵食べたじゃん。半熟卵好きすぎて」
向田:「知らねぇよ」
相田:「一回じゃないんですよ皆さん!?毎回だぞ!!3年生からは親もお前用の半熟ゆで卵別に作ってたわ!!」
「お前のお弁当にも半熟ゆで卵ちゃんと入ってるのに!!」
向田:「だから知らねぇって!!」
相田:「知らねぇわけねぇだろ!!あんだけ人の半熟ゆで卵食べといて!!」
向田:「……」
相田:「……え?マジなのか…?」
「……記憶喪失ってやつ…か…?」
向田:「違うよ」
相田:「俺の事はわかる?」
向田:「わかるよ」
「最近アイドルにハマった相田だろ?」
相田:「直近の出来事!!」
「もっと昔の幼なじみならではのエピソード出してこいよ!!」
向田:「渋い子供だったよな」
「こいつね、落語が好きだったんですよ」
相田:「まぁ…はい」
向田:「特に世間亭大惨事師匠が好きで」
相田:「誰だよそれ」
「俺が好きだったのは今日家亭円満師匠だよ」
向田:「え…そっちこそ誰だよ…」
相田:「え…?」
向田:「え…?」
相田:「なんかおかしくね?」
向田:「おかしいな」
相田:「俺がハマったアイドルのユニット名は?」
向田:「『縦横無尽』だろ?」
相田:「違うよ!『表裏一体』だよ!!名前ゴツいよ!縦横無尽!!」
向田:「そこに関しては表裏一体も変わらねぇだろ!そうじゃなくて、お前本当に相田か?」
相田:「いやこっちのセリフだわ。お前、向田じゃないだろ!」
向田:「いや、相田は相田なんだよな。ただちょっとズレてる」
相田:「…その意外と冷静なとこは確かに向田だわ」
向田:「異世界の相田か…?」
相田:「分岐点どこだよ」
向田:「異世界人だろ、お前」
相田:「言っとくけど俺からしたらお前が異世界人だからね?」
向田:「じゃあちょっとお客さんに決めて貰おうぜ」
「俺が結構世の理として自信ある問いかけするから、それで判断して」
相田:「わかった」
向田:「砂漠ってよく雨降るよね?」
相田:「異世界人だわ」
向田:「ライオンって草好きだよね?」
相田:「異世界人だわ~。これは異世界人だわ」
向田:「フォーマルな場所では長靴履くよね?」
相田:「見てみろお前を見るお客さんの『異世界人だわ~』って目線」
向田:「確かに感じるな。この人達みんな異世界人か~」
相田:「数に負けないその精神力は見習いたいわ」
向田:「てゆーかちょっとズレてる世界にもし俺が来てたとしたらさ、味もちょっとズレてるかもな」
「これ終わったら一回半熟卵食べてみるか」
相田:「うわ~ポジティブ~」
「嫌いな半熟卵まで食べてみて異世界満喫する気だ~。味の違いを楽しむ気だ~」
向田:「それはまぁこの際置いといてさ」
相田:「置いとくんだ」
向田:「途中からボケとツッコミの立場が入れ替わった中途半端さが俺は許せない」
相田:「イヤそこ~!?世界の異変よりそこ~!?」
「大体お前が異世界人だったら、お前自身がだいぶ中途半端な事になってるからな!?」
向田:「…ほんとだ」
相田:「気付いてショック受けてるの可哀想!!」
向田:「まぁ…でも、うん!元気にやってこ!」
相田:「うわ~ポジティブ~」
「でもそうだな、元気にやってこーぜ!」
向田:「って掴みなんだけど、どうかな?」
相田:「いや長いって!!もうやめよ?」
2人:「どうも、ありがとうございましたー!!」
◎
相田:「今日あんまりウケなかったな」
向田:「結構面白いと思うんだけどなぁ」
マネジャー「あの、今日のネタなんですけど、ちょっとわからなかった所があって」
相田:「え?どこ?」
マネジャー「ハンバーグとカルボナーラって、誰ですか?」
向田:「え?マジで言ってる?」
スタッフA「あ、そこ、私もわからなかったです。有名な方なんですか?」
相田:「いや、食べ物じゃん。例えじゃん」
スタッフB「食べ物……?」
向田:「え?本気?」
マネジャー「すみません…」
スタッフA「ちょっと本当にわからないです」
相田:「……」
向田:「……」
「……言っていい?」
相田:「……うん、言おう」
向田:「異世界じゃん」
相田:「分岐点どこだよ」