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表情と気持ちは一致しない。

妹から聞いた話でとても印象的だったものがある。

当時、妹は地元の中学校で英語を教える先生だった。

新任当初、受け持ったクラスの中でひとり、ずっと笑っている男の子がいたそうだ。

妹が何を言ってもニタニタ笑っていたので、妹は内心でその子に対して苦手意識があった。

それを愚痴として私達の母に言った際に、母が言った一言が、

「その子は笑ってるんじゃなくて、困っているんだよ」

「どうしたらいいかわからないから、笑っているんだよ」だった。

母は保育士歴30年を越える。

子供を、親御さんを、人を見る達人だった。

妹はそれを聞いて自分の認識を恥じて、新しい視点を手に入れた。その子への苦手意識も無くなった。

そして思い出話としてそれを教えて貰った私も、新しい視点を手に入れた。聞いた時に鳥肌が立った。そうか。そう言われると、確かにそうだ。と改めて認識した。その事は大前提としてわかっていると思っていた。でもわかっていなかった。確かに私はその一致しなさを経験しているはずなのに、言語化されるとハッとする。自分に対しては凄く納得する感覚であるのに、何故か人に対してはその感覚を持っている事を忘れがちになる。

コミュニケーションは本当に難しくて奥が深すぎる。

「表情と気持ちは一致しない」、「それだけじゃない」という事はずっと覚えておきたい目線の一つだ。

折に触れて、思い出したい。

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