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自分の好きを見つめ直す1ページ「海街diary」

ずっと観たいリストに入っていた海街diaryをようやく観た。好きだなぁ、と思ったので何が好きだったのか記録することにした。

海街diaryより

フィルム写真のような淡い色彩で描かれる鎌倉の景色は、淡々と続く日常と姉妹が抱える繊細さの両面を映し出しているようだった。
最近自分の好きな色合いというのが写真や映像を見ていて分かるようになってきた。

1枚ペールトーンの白か灰がかっているような、霞がかった色合いが好きらしい。
今の季節の色合いはとても穏やかで好き。

カメラロールの最新の1枚。春霞の凪

ストーリーで好きだなぁと思うポイントも小説で記録しているものと似ているところがある。
それは色んな背景を抱えている人に対し「何の謂れもなく、ここに居ていい」と肯定されることだ。

なぜこんなにも、「肯定される」ということに惹かれるのかわからない。今まで存在を否定されたことがある訳でもないのに。
でも私はずっと「何も出来なくても、自分が今ここに存在することに価値がある」ということに自信を持てずにいる。
何かしらその人やコミュニティに対して「価値があると思われなければ」自分の存在価値が危ぶまれると思っているらしい。

1番好きなシーン。この桜のことをすずちゃんは忘れないだろうな。

映画の中では、色んな形の「寄り添う」が描かれていた。

まずは家族。
一緒に暮らす、即ち、ご飯を食べたり、片付けをしたり、法事をしたり、庭の手入れをしたり。色んな手伝いの中での会話がお互いの理解を深める作業になっていたのだろう。
「たまには手伝って」の煩わしさを少しだけ反省した。

次に同級生。
末っ子すずはまだ中学生なので、彼女の周りのコミュニティが優しく受け入れたのが救いだった。
フラットに彼女を受け入れる仲間がいたからこそ、家族には言いづらい話を話すことが出来て、そしてそれをまた共感してくれる人がいて。
こうして人は家族以外にも安心出来る拠り所を見つけていくんだろうな。

「どうしたの?」と直接聞く優しさもあれば、
「一緒に桜見にいかない?」と時間を共にする優しさもある。

冒頭、初めてすずちゃんと出会うシーン


長女の幸は「この街のこと好き?」と聞く代わりに「この街で1番好きなところ見せてくれない?」と持ちかける。

相手を慮る聞き方に変えられる、というのは
優しさの1歩先の気遣いで、またひとつ大人のなせる技なのだろうな。

映画の中では「ここにいてもいいよ」とはっきりセリフとして伝えられるのだけれど、恐らく大切なことは、その一言が掛けられるまでの日々の会話や寄り添い方の積み重ねによるもので。それが描かれた後の一言だからこそきちんと(やっと)伝わったと理解ができたのだろう。

わたしは、わたしの中で、なにかしらが引っかかっているのかもしれないね。

そうそう、服装などの演出もさながら、立ち振る舞いや言葉使いでの性格の違いが見える演技、ふとした瞬間の横顔やスタイルがとても綺麗で、ああ女優さんって凄い、と改めて感じたり。

背景の街の四季の移ろいも綺麗で、写真で切り抜かれたワンシーンごとがとても絵になる。
そういうところも好きだなぁ、と思った。

(ちなみに調べると映像監督の瀧本幹也さんは、ポカリや天然水や大和ハウスなど、最近の「いいな」と思う広告も手がけている方だった。やはり自分の「好き」には繋がりがある)

亡くなった父親の話をするシーン

家族や死に対する描写も、好き作品には共通して印象的なセリフがあったり、メインテーマでは無いがひっそりと裏主題になっている。

「優しくていい人だったんだね」
「お父さん、いい人生だったんだね」

海街diaryより

最期にこう言われる人生って、やはり何ものにも変えられないのだろう。

人数でも業績でもなく、生き残された人達の心に残る言葉や思い出が美しくあり続けられること。残された周りの人たちの縁が良好に繋がって結ばれていくこと。
私の場合はそんな風に自分の最期がきちんと繋がり続ける流れの一つであって欲しい。

「最期が近づく中で綺麗なものを綺麗だと思えることが嬉しいって」
「それお父さんも桜みて言ってたね」
「ねぇ、最期に何思うんだろうね。」
「あたしはお酒かなぁ」「よっちゃんらしいね」

海街diaryより

綺麗なものを綺麗と思えること。
きっと、最期に思いだすのは日常のなかで好きだったこと。
毎日寄り添ったもののこと。
その時、何を思うんだろう?
何を思ってたんだろう?

そんなことを見終わったあと、とても穏やかに考えさせられる映画だった。あくまでもニュートラルな感情。まるで凪いだ海のように。

でもきっと、こうやって感じたことを日々紡いでいくことでしか、自分の日常の好きなことも大切にしたいことも見えてこないんだろう。

この気持ちもまた1つの栞として
私の中のすきの価値観を紡ぐ1ページになった。

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