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別れ際、もっと好きになる

何かが終わる時って、大抵あっけない。

怒涛の二月がおわり、3月3日、私のボランティアは指導を終えた。

終わり方は意外とあっさりしていて、なんとなく慌ただしいまま生徒達とお別れした。

事前のシミュレーションではいい話をして涙のお別れのはずだったのに、全然いつも通りさよなら〜って終わってしまった。
もう会わないのか。

1ヶ月間、生徒だった彼ら3人のことばかり考えていた。

彼らの20年後の姿や、保護者や周りの大人との付き合いまで考えた。なんでそこまで?それってボランティアなの?と、周りの人には言われたけれど、私たちボランティアチームはずっと子供達のために1ヶ月ああでもないこうでもないと話し続けた。

わたしの描いていたビジョンは、生徒たちが自分は自分、とこれからの人生に希望を持てる状態で送り出すことだった。
自分に自信がない。いいところなんてない。夢もない。そんなことを言っていた生徒たちに、わたしと出会ったことで一つでも何か自分を肯定できるきっかけが与えられたらいい。そんなふうに思っていた。

嫌なことからは逃げてもいい。頑張れる時に頑張ればいい。毎日めちゃめちゃ楽しいばかりでなくても、一つテンションが上がればいい。夢は大きくなくてもいい。そうやって少しずつ「それでもいい」と思えたら、もっと人生生きやすくなるんじゃないか。自分のこともちょっとはイイと思えるんじゃないか。

そうやってアプローチしていたら、生徒は見事に変わっていった。

1人の子は、夢ができた。やりたいことなんてないと言っていたのに。
1人の子は、自分の頑張りたいことを言葉にして伝えてくれた。自分の内にある言葉を人に伝えるのが苦手だったのに。
1人の子は、手紙をくれた。自分の決意を伝えてくれた。あんなに自分はダメなんだ、って言っていたのに。

私は3人に、手紙を書いた。それぞれの良いところを5つ書いた。どんな時もあなたのことを応援している存在がいることを、忘れないで。この手紙がお守りになりますように。辛い時に見返して、また頑張れますように。
すぐに手紙を開いて何度も何度も読んでくれている子もいた。恥ずかしいけど、嬉しかった。きっと、その子に私の想いは届いたんだと思う。

集合写真をとった後、それぞれの先生と写真撮りたい人!と全体に声をかけられた時、私のクラスの3人は1番に列から飛び出してきた。

ああ愛おしい!そう思いながら、4人で写真を撮ってから、さよならと手を振って帰っていく彼らを見て思った。
もう会えないのか。

だけど、大丈夫。なぜなら私たちは最後にそれぞれ約束をしたから。

お互いにどんなことがあってもあきらめないこと。

辛くても逃げ出さないこと。

毎日机に向かうこと。


みんなに会うために、有名人になるからね。

そして私は、言ってしまった。遠いところで生活する彼らの目にとまるような人に、検索したらヒットするような人に、私はなりたいと言ってしまった。生徒たちに笑顔で頷かれてしまった。

約束したから、あきらめちゃいけない。逃げ出さずに向き合い、毎日机に向かって勉強する努力も必要だ。なんて良い約束なんだ。

もう、しばらくは会えないけれど、胸の中で彼らを思えば、私は頑張れる。彼らもまたそうだといいな。そんな風に思えるような別れだから、涙は出なかった。みんな、前を向いていた。

暖かくなってきた。やっと春がやってきた。

#ひとりごと #日記 #二十歳プロジェクト #別れ #春 #ボランティア #約束 #大学生



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