[思っただけのこと]冬のはじまりの香り
ピザを箱で買った帰り道、知っている空気の香りがした。
少し煙くてツンとしてて、でも自然の香り。
冬のはじまりの香りである。
季節の香りといえば思い出すことがある。
昔から私は母と季節の香りがしてきたらすぐに話していた。
これは気温や時間帯は関係ない。(少しは影響しているとは思うが)
ふとした時に香るもので、朝に春の香りがすることもあれば、夕暮れ時に秋の香りがすることもある。
何かの香りではなくこれは季節の香りなのである。
他の人も感じているのかもしれないが、自分の中でこの香りはこの季節、というものがあって、正確ではないが勝手に季節の訪れを楽しんでいた。
高校のある授業中、ふと春の香りがした。
班で話しているときに友達にそのことを話したら、季節に香りがあることにとても驚かれた。当たり前にみんなが共通認識していると思っていたからこちらも驚いた。季節の香りを感じていることはきっと珍しいことではないだろうけど、当たり前でもなく、それを毎回感じていたのは子供の時からそんな話を母としていたからだと気づいた。
イタリアにきて、日本と場所も離れているし、周りの環境や時間も違う。緯度経度も違うから太陽や月の見え方も違う。(大きくは変わらないが)
だけど季節が変わる微妙なニュアンスが香りになるのは同じで、ここに知っている香りが流れてきた。寒くなるのに怯えつつも、なんとなく嬉しくなった夜だった。(帰ってきてからはピザの香りになった)