📖🌳凪良ワールド💐
『天涯行き』
「ここにいていいぞ。好きにすれば良い。」何の詮索も押し付けもない、乾いた言葉。
逃げて逃げて、漸くたどり着いた田舎町で、高知英利は遠召結生の古い平屋に転がり込んだ。
なぜだろう?昨日あったばかりの流れものを家に置くなんて無防備すぎやしないか?
自分の身の上を棚にあげて案じてしまうほど、遠召は無頓着だった。
他人にも自分自身にも。
淡々とそこにある植物のような、それでいて妙に人目をひく美貌。
同居人がいると言った。もう何年も帰ってこないのだと。が、待ちわびている様子もなく、怠惰な毎日を過ごす。
去るものは追わず、マイペースで他人に干渉しない。
なのに「たまにこうなる」理由の残骸が物置になっている部屋の片隅に折り重なっていた。
今までに転がりこんだ生き物たちのもの言わぬ残像。
誰だったかも思い出せない通りすがりのものたち。
それが高知には有難い反面、なぜか寂しい気がした。
夢にうなされて自分のさけびごえで目を覚ました高知に、不意に唇を重ねる遠召。
何も聞かず語らないのに、体は饒舌に反応しあう。互いの欠けた部分を埋めあうように…。
凄絶な過去に支配され続ける遠召と愛する人たちのために追われる高知。
単調な日常の裏側に潜む暗い渦。
それは、ぽっかりと口を空けて今にも飲み込もうと佇んでいる。
暗いおはなしなのに、高知の明るい人柄と淡々とした日常はほのぼのとしていてなごむ。
健全な家族のなかで育った真っ直ぐな明るさ。それが、余計に裏側の暗さを増幅させる。背筋にヒヤリとなでる…💦
どうぞ、遠召を離さないでやってほしいと願ってしまう😥
読むほどに、ふたりの行く末を案じてしまう。
ふたりで海に漂うシーンがジーンとくる。
おだやかな波にゆられて心が凪いでゆく情景。
凪良ワールドにはよく出てくるシチュエーション🌊
心情表現の素晴らしさに感動~❤️✨
ふたりのその後のSSが読みターイ‼️
サプライズ💐
挿し絵の高久尚子さんが、また、素晴らしい❤️
見てね✨