見出し画像

🍁凪良ワールド🌠『すみれ荘ファミリア』

『すみれ荘ファミリア』
凪良ゆう著


すみれ荘と言う古い下宿に住まう男女の人間模様。
和久井一悟は祖父母が残した古い下宿の大家代理をしている。
生まれながらに虚弱体質の為、就職活動もままならず母の嫁入り後の大家家業を引き継いでいる。
下宿人はテレビ制作会社でADをしている隼人、子供用品会社に勤める美寿々、花屋で店長をしている青子の3人。
和久井自信は2年前に妻を亡くし、一人娘は妻の両親に引き取られ会うことも許されない境遇だ。
それでもクリスマスにはプレゼントを送ることでなんとか父親としての権利を維持しようとしていた。
プレゼントを買った帰り、和久井は思わぬ人物とこともあろうに衝突事故を起こしてしまう…💦


右の目元に涙型のほくろ。
遠い記憶がフラッシュバックした。
「にいたん、にいたん」小さな手が、水風呂の水を掻き上げて、笑う高い声。
夏休みの午後幼い弟にせがまれた水遊び。帰宅した母に叱られたっけ。弟の目元には小さな涙型のほくろがあった。

芥一二三。
自転車で轢いてしまった男。
それは弟の名前ではなかった。
怪我を理由に下宿することになり、和久井が芥の身の回りの世話を引き受けることになってしまった。
お神酒徳利よろしくふたりでセットの毎日がはじまるが、和久井のなかで、広がる芥への疑惑のモヤモヤ。

芥が語る大勢の兄弟や聖書の暗証など、謎のキーワードが和久井を混乱させて行く。

隼人、美寿々、青子の三人三様の関わりを寮母然として向き合う和久井をそれを冷静に分析する芥。

まっすぐで飾らない芥の言葉が、下宿人たちの思わぬ一面をあぶり出す。
「俺の感性は機能してない」とまで言わせるほど、他人への興味も執着も見せないその平坦な感情はどこから来るのか?



淡々とした毎日の中に潜む、愛憎劇。
果たして、和久井と芥の本当の繋がりとは…⁉️


最後は、ゾクッとさせられるクライマックス。

育った環境が人格に及ぼす割合はそれぞれではあるだろうけれど、そこには、受け止めて反映する個人の器にも依りけりなのだと考えさせられる。

著者は、あとがきで「普通の人たちのお話」と言いながら、とはいえ普通とは正体は不明。としめくくる。
クスリっと笑って振り返る著者の姿が浮かんだ気がした…。


次は是非、芥くん目線でのすみれ荘を読んでみたい‼️ 


いいなと思ったら応援しよう!