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📖凪良ワールド🎩🥐

『お菓子の家』

その猫にあったのは、夏の少し前のことだった。

大きな大人なのに、やせっぽちの子猫のような目で、パンを選ぶ親子を羨ましそうにみていた。

こちらの気配に気づくと、一瞬鋭く睨み付け後ずさった。
捨てられた猫のように毛を逆立て、誰も近づけないオーラを放つ。

このまま放って置けない気持ちで声をかけた。
それが、弘明との出会いだった。



はなせ!大事な物があるんだ❗️

燃え盛るマンションに入ろうとする弘明をふみとどまらせた。
恋人からもらったと言うレモンイエローのシャツを阿木は煙の中から取り戻してやった。

「あ、あり、がとう…」
弘明は初めてそんな言葉を放ち、シャツを抱きしめて涙をこぼした。

「どうしょうもない奴だな」
昔死んだ、忘れ難い男と重ねて、阿木は自分の中にある感情をもて余す。

✨✨✨✨


「夜明けには優しいキスを」の要の恋人だった加瀬弘明のその後を描いた作品。

「もう、二度と大切な人に手を挙げたりしない」
と心に誓った弘明だったが、人との関わり方がわからずに仕事にもつけないでいた。
偶然見つけたパン屋を覗いたのがキッカケでバイトをすることに。

そこで出会ったのは元ヤクザの阿木と店を切り盛りする知世親子だった。
彼らの暖かい人柄に少しずつ溶かされていく弘明。

一方、阿木も弘明に昔失った大切な人の面影を見ていた。

阿木への気持ちが強まるにつれ、また誰かを傷つけてしまう妄想に怯える弘明。
果たして、ふたりの結末は…⁉️


お互いに辛い子供時代の過去をもち、心と身体の傷も分かちあえるふたりだから良かったと思う。

町で偶然、元彼の要と会い、「いま幸せか?」と聞いた弘明が、
「うん、とても」と答えた要に柔らかな笑顔を返したとき、それぞれが、新しい一歩を踏み出せた気がした。
このシーンは前作のSSで💞

生きていれば、必ずうまくいく日がくる。
運命は振り子みたいに良いこと悪いことをかわりばんこに見せてくる。

そんな、希望を感じる物語。✨✨💞

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