📖凪良ワールド💞💐
『あいのはなし』
父の葬儀の日は雨が降っていた。
その人は、不意に葬列から抜け出し、乱暴にネクタイを緩めた。
今にもパリンと割れてしまいそうな薄いガラスみたいな表情。
どうすれば、この人を守れるだろう?
どうすれば、父と三人で過ごした幸せな日々を続けられるだろう?
「俺の中に父ちゃんがいるよ、だから、安心して。俺が波瑠ちゃんを守る」
九才の俺は夢中でその人の手を引いて走り出した。
それが、その人を一層苦しめることになるとは知らずに。
「ここつまんねえ、どっか行こう」
たった九才の小さな椢の仕草が、愛する人のそれと重なり、波瑠は動揺しながらも、その手を握り返した。
ひとりぼっちだった波瑠を弟のように可愛がり一塁の安らぎの場所を提供してくれた裕也。
「父ちゃんばっかりずるい、俺も波瑠ちゃんを守りたい」裕也と息子の椢はいつも、波瑠の隣にいた。
それが防波堤のように、薄い膜を張って波瑠を包んでいた。
それなのに…。
もう裕也はいない。
認めたくなくて、差し出された小さな手をつかんで、しまった。
それが、互いを引き裂く結果を招くことにも気づけず…。
『未成年誘拐』というインパクトのあるシチュエーションなのに、それはごく当たり前のふたりの日常でしかないことを淡々と綴られる。
本屋大賞を受賞した「流浪の月」のコンセプトはこの作品がベースになっているそうです。
世間から見た状況が当人たちにはごく自然なことと言う、「常識」という壁に排除される位置にある人たち。
それは、私たちのすぐ隣にあるのかもしれない。
認める勇気と受け止める心の広さを、私たちは持つべきなんだと振り返らせてくれる物語。
劇団裏窓の奥田が、いいあじを出しています😃
波の音が聞える部屋で読んでね🎵