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僕のマリさん著書「常識のない喫茶店」から考える、大切な居場所を守るということ

大切な居場所を守る。 
一般的に正しいとされる普通や常識だけでは、本当に大切なものを守れないことがある。
大切な人、自分の心や生活、人生。
そこを犠牲にしてまで守らないといけないものなんてあるのだろうか。
そもそもその普通や常識ってなんだろう。
誰が決めたのだろう。誰かを苦しめるぐらいならそんな常識なんて必要ないのではないか。

そんなことを考えるようになったのは、僕のマリさん著書の「常識のない喫茶店」を読んだからだ。

「常識のない喫茶店」では、働いている人が嫌な気持ちになる人はお客様ではないとして、失礼な客には容赦なく出禁とする異色の喫茶店の日々を綴ったエッセイ だ。

ある日、嫌いだった常連の訃報を聞いたとき爆笑した。

「常識のない喫茶店」

本書の1ページ目を開いたら、こんな1文があった。なんと痛烈な文章から始まるのだろう。
1文目からぶっ飛んでる。すぐに僕のマリさんの文章とその世界に引き込まれた。

この喫茶店ではお客様にあだ名をつけている。
例えば一時間の滞在で飲み物を四杯も飲むお客さん(在庫が一気に無くなる)のことは「妖怪在庫荒らし」と呼び、朝イチで入店して新聞を取りに突進してくるおじさんは「イノシシ」、言葉遣いや所作が丁寧で平身低頭の推し客は「神セブン」。
もうネーミングセンスが素晴らしすぎるのだ。
そして作者が働くこの喫茶店には、接客マニュアルというものは存在しない。
その一方で「お客さんと喧嘩してもいい」という衝撃的ルールがある。

わたしも小売業で働いていて接客をしていた時は、お客様の言うことは絶対という暗黙のルールみたいなところがあって、無理難題を言われてもギリギリのラインまで寄り添う、我慢するというのは当たり前だったので、この本を読んで衝撃を受けて震えた。(いろんな意味で。笑)

作者はもともと新卒で大手の女性用下着の会社に就職、厳しい研修期間を経て店頭に立ち、その半年後に店長を任された。
数字を残さなければならないという使命感や、早出残業の激務で身体的な疲労。さらに追い討ちをかけるかのように精神的にも参ってしまう。
他社からの嫉妬や取引先からのセクハラ、お客様からの理不尽なクレーム。
自分さえ我慢すればと、痛みに耐え痛みに慣れていくにつれ、作者の心はゆるやかに病んでいってしまった。
会社を辞めてしばらく現実から逃げた。
その後たまたまウエイトレス募集の貼り紙を見つけて働くことになったのが、まさしくこの喫茶店だったのだ。

冒頭にも書いたこの喫茶店の理念、
「働いている人が嫌な気持ちになる人はお客様ではない」
これは本当に非常識なことなのだろうか。
お金を払っているのだから、何をしても許される、お客様の方が上。
これは誰しも間違っているというのはわかるはずだ。でもいざそんな状況になった時、納得できなくても我慢をしないといけない、そうしないと自分を守れない。
でもこの喫茶店はそんな暗闇に希望を見出してくれた。

自分を殺しながら働くことが社会ならば、そんなところで息をしていたくない。でもいまはそうじゃない。きちんと自分の気持ちを大事にすることで強くなったし、人の痛みにも敏感になった。
強さはやさしさを裏打ちするものでなければならない。そのことに気づけたいまは、自分の居場所を見つけたようで本当にうれしい。

「常識のない喫茶店」

作者のことばだ。
自分を犠牲にしてまで守ろうとしないといけないものはなくて、自分を守れる社会こそ当たり前になくてはならないものなのだ。
また自分を守ることは大切な人を守るこにつながる。この喫茶店では、マナーの悪い客に対しては我慢せず物申す。それはいいお客さんが心地よく過ごせるようお客さんを守り、また従業員のことも守るためだ。

自分を殺して相手の意のままにしてあげることが優しさではない、不快な出来事には声をあげ、自分を大切にしていい。たとえ常識から逸脱しても自分を、大切な人たちを守ろうとすることが優しさになるのではないか。
この本は忘れてしまいがちな当たり前のことを思い出させてくれる。
生きるためのブレない真の強さ、優しさがこの喫茶店にはあった。


社会にいると理不尽なことで心を痛めてしまうことが多々ある。でもそれはそんな社会が非常識。
自分を責める必要も我慢する必要もない、そう言い切っていいよと、この本は背中を押してくれる。
もしも非常識なことに出くわしてしまったら、自分を大切な人を守れる自分でいたい。
そして自分が常識だと思っていることも疑える自分でいたい。
どうかみんなが自分らしくいられる社会でありますように。もしかしたらそんな社会も夢ではないかもしれない。希望を見出させてくれたこの本に、喫茶店に感謝の気持ちを捧げたい。

この非常識と捉えられるかもしれない魅惑の?不惑の?喫茶店の世界が当たり前になることを願って。

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