パブロ・ネルーダの1971年ノーベル文学賞受賞理由・その1【引用】

 パブロ・ネルーダの1971年ノーベル文学賞受賞について。自分の言葉では語り切れないので、素晴らしい評伝から引用します。
『パブロ・ネルーダの生涯』マルガリータ・アギレ 松田忠徳・訳 新日本出版社 より以下抜粋。


 チリ南部のはるかな町テムコで、パブロ・ネルーダの声は、「朽ちはてた大木と巨大な岩のあいだに出口を」探し始めた。
 やがて彼の詩は世界中に氾濫した。「それは大陸の一本の河のようである」と、ネルーダにノーベル文学賞を授与するとき、スウェーデン学士院事務官は述べた。
 この賞は、すでにひろまっていたネルーダの名声を、不動のものとした。事実、ネルーダはかなり以前から、地球上のあらゆる言語に翻訳されてきた。また彼の詩は絶えず書きかえられもしてきた。専門的な評論家にとっては、その過程が研究分野として残るのだが、わたしは彼の生活面での伝記作家として、わたしたちの時代の、一人の男性のなかに示されてきた変化、盛衰をいちずに追っていきたいと思う。ネルーダは自分自身の内にも、またこの文明社会の日常の出来事のなかにも、閉じこもってしまうようなことはなかった。愛、政治、夢、熱情、そして知性が、彼の詩界の河を深めている。彼はほとんどのことを意識していない。彼は語った。あなたの詩はどんなものか、という質問があれば、「わからない」と答えなければならないが、わたしの詩にパブロ・ネルーダとはどのような人物か、と尋ねるなら、答えはかえってくるだろう。
 彼の詩は無意味に民衆の生活を素通りして、ノーベル賞を獲得したのではない。この賞はただ創作に与えられるものではなく。人類の平和と進歩に対して好ましい影響をもたらしたという功績に対して与えられるものであることを、アルフレッド・ノーベルはその遺言で定めたのである。
 スウェーデン学士院事務官であるカール・ハグナー・ヒーローは、授賞を発表する際、次のように述べた。

(続く)

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