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私のからだは醜い 1

養護学校小学部二年の、夏のことでした。

その日の体育は、この年はじめてのプール授業でした。この学校に転入してから、私は密かにプールを楽しみにしていました。プールは小さい頃ビニールプールで遊んだきりでしたので、広いプールで泳ぐのはどんなものだろう、と、胸を踊らせていました。

チャイムがなり、私はクラスメイトと共にプールに向かいました。車いすから降り、這って着替え室に入ると、すでに一年生の生徒たちが着替えていました。プール授業は一、二年合同で行われるのでした。

私は新しく買ってもらった水着とキャップを用意してから、何気なく服を脱ぎました。するとその時、ひとりの一年生の子が叫びました。

「あ、毛が生えてる!」

…私は脊髄にできた腫瘍を除去したことで下半身まひになりました。その後も様々な治療を受けました。あまり詳細はわかりませんが、その中に体の炎症を押さえる薬品注射がありました。記憶では半年ほど投与されたその薬には、成長ホルモンの分泌を促す副作用がありました。

投与が終わる頃、私のからだにはある変化が起きていました。ひとつは声質の変化。もうひとつは、体毛が濃くなったことでした。腕、指、手の甲、脛、そして、陰毛…。

その子の叫びで、まわりの視線が、一斉に私の股間に注がれました。皆、おとなのそれと変わらない、黒々とねじれ曲がった体毛に、ある子は口をあけ、ある子は興味深げにみつめていました。

それからは記憶が曖昧です。

どうしたの、と訊かれた気もしますが、多分まともに答えてなかったはずです。ただひたすら、急いで水着を身につけました。汚ならしい汚物を蓋でふさぐように。

そのあと、授業になりました。プールサイドに座って整列していると、担任の女性の先生がやってきました。もちろん水着です。私は肩を縮めながら、脇を通りすぎた先生をふと振り返りました。座った姿勢の私の目線の高さの、少し上にあった先生の両腿が視界に入りました。

先生の水着から、ねじ曲がった体毛が、わずかにはみ出ていました。

私は息が止まるのを感じました。とっさに開きかけていた両脚を手で寄せました。気づくとさらに体をすぼめていました。

毛が生えてる!

準備体操がはじまりました。私は小さく腕を振りつつ、頭に響くさっきの叫びに、身をよじりたくなるのを必死でこらえていました。

(続く)

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