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音楽がうつ病を癒す?音楽療法の新しい可能性を示した研究

「音楽を聴くだけで気持ちが軽くなる」 そんな経験を持つ方も多いのではないでしょうか?
実はその感覚、科学的にも証明されつつあります。
今回紹介するのは、音楽が脳に与える影響と、うつ病治療への応用可能性を探る最新の研究です。

https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(24)00803-9



音楽が脳に働きかけるメカニズムとは?

この研究では、「音楽が脳の報酬回路をどのように活性化するか」を検証しています。
報酬回路とは、私たちが「楽しい」「気持ちがいい」と感じるときに活性化する脳の仕組みの一部です。
この研究では、特に 終脳条床核 (BNST)側坐核 (NAc) という部位に注目しています。

音楽を聴くことで、この脳の報酬回路が活性化される仕組みは以下の通りです:

  1. 音楽を楽しむ → 聴覚皮質が反応 → 脳波 (Theta波・Gamma波) が同期。

  2. Theta波とGamma波の連携が、BNSTとNAcを結びつける。

  3. 結果として、報酬回路が活性化され、気分が改善される。


音楽を楽しむことが鍵! 「好み」が抗うつ効果を左右する

興味深いのは、音楽そのものの感情的な内容 (例えば「悲しい曲」や「楽しい曲」) よりも、 「その音楽を楽しんでいるかどうか」 が重要だった点です。

研究では、治療抵抗性うつ病 (TRD) を患う23名を対象に、彼らの「音楽の楽しみ度」に基づいて2つのグループに分けました:

  • 高い楽しみを感じたグループ (HE): 音楽を非常に楽しんだ。

  • 低い楽しみを感じたグループ (LE): 音楽への楽しみが低かった。

結果、 HEグループでは、うつ病の症状が顕著に改善 しました。
一方で、LEグループではあまり効果が見られませんでした。このことから、音楽療法では「個人の音楽的嗜好」が大切であることがわかります。


科学が解明!音楽が引き起こす「三重時間同期」

研究の中で特に注目されたのが、音楽が引き起こす 「三重時間同期 (Triple Time Locking)」 と呼ばれる脳波パターンです。これがうつ病改善の鍵とされています。

三重時間同期の仕組み:

  1. 聴覚皮質でTheta波が生成される。

  2. Theta波がBNSTでGamma波を誘発。

  3. Gamma波がNAcに伝わり、BNSTとNAcが同期。

この「三重の同期」は、音楽を楽しんだ人の脳で特に強く観測されました。言い換えれば、好きな音楽が「脳内のリズムを整える」働きをしているのです。


音響的エントレインメントの驚きの効果

さらに、楽しみが少なかったグループ (LE) にも改善の可能性があることが示されました。
研究者たちは、音楽に特定の周波数音 (音響エントレインメント) を加える実験を行いました。
その結果、LEグループでも脳波の同期が強化され、症状の改善が見られたのです。


研究の示唆する未来

この研究は、音楽が治療抵抗性うつ病にも効果をもたらす可能性を示唆しています。特に注目すべきは、「個人の音楽的好み」を活かし、脳内の報酬回路を活性化させるアプローチです。

具体的な応用例:

  • 患者ごとにカスタマイズされたプレイリストの作成。

  • 音響エントレインメントを活用した新しい治療法の開発。


音楽が私たちの心に与える癒しの力

この研究を通じて、「音楽を楽しむこと」が脳にとってどれだけ重要かが改めて浮き彫りになりました。ただ好きな音楽を聴くだけでも、脳の仕組みが整い、心が軽くなるかもしれません。

今日からお気に入りの曲を再生しながら、少しずつ気分をリフレッシュしてみませんか?
音楽が持つ力を、ぜひ実感してみてください。


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YURIKAMOME
今後も分かりやすい、簡潔な記事を心がけていきます🙇🏻‍♂️