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日曜の夕方に流し続けてほしい Do It Youself!!【アニメ感想】

あらすじ

『ディー‐アイ‐ワイ【DIY】Do it yourself「自分でしなさい」の意、家具などを自分の手で作ったり修理したりすること』――広辞苑より。 「Do It Yourself!!」は、女子高生を主人公に、家具や友情や、ひいては人生までも、考え、工夫し、苦労し、失敗し、それでも諦めずに自分の手で完成させて、未来を切り開いていこうとする少女たちの、その最初の一歩を描く物語です。

animate Timesより

感想

染み染みと、とても面白かった。

個性的な女の子6人が描くDIY部活動青春劇、なのだがキャラクターの内面描写が恐ろしく丁寧で、自然に描かれる。登場した際の第一印象と話が進むにつれて見えてくる内面の印象のギャップがとても魅力的で、見るほどに引き込まれた。能天気に見えていたキャラクターにもコンプレックスがあり、強気に見えたキャラクターには乙女な面がある。時に悩みを解消しようと努力するが直さねばならないという描写はなくあくまでそれらを含めた少女達の成長を描く、根っこを思えばハードな悩みに考えることもできるが常に全体の雰囲気は明るく楽しく演出される。さりとて悩みの根幹は曖昧にせず登場人物達はみな優しく、時に見守り、時に支え合い、少しずつ乗り越えて成長しながら共に歩んでいく。はじめは現代のエッセンスをうまく混ぜたのんびりとした教育アニメやな…と思って観ていたが、それらの実に丁寧な人物描写と演出を元にした彼女らの健気な姿を見ているうちに私の頬に伝うものが光った。これは……涙……?

純粋に褒めた後でアレなのだが、このアニメを少し穿った見方で見てしまうと上質な百合アニメとしても捉えられる。いやほんとに、そういう目線で見ても花丸がつく。そのあたりは語るだけ野暮かもしれないのでそちらの期待をする方にもまずはオススメするとだけ言っておこう。何も知らない青少年が見ていたら何人かは絶対目覚めちゃったと思う。

NST新潟総合テレビは日曜の朝9時半に流していたようだがよくわかっている人が編成にいるな?

※ここからネタバレ入ります

ドジっ子だが実は天才属性も持っている主人公の結愛せるふ(せるふ)
せるふの幼馴染でエリートでせるふが大好きだが素直になれない須理出未来(ぷりん)
無愛想さと風貌から恐れられているが実は乙女な部長、矢差暮礼(部長)
引っ込み思案で気弱だが友達付き合いや部活動に憧れていて手先が器用な日陰匠(たくみん)
飛び級天才児でカタコト日本語で意外とノリが良くて寂しがりなジュリエット・クイーン・エリザベス8世(ジョブ子)
運動神経抜群、好奇心旺盛、エリートで実家はアジア系のお金持ちのヤンチャ少女、幸希心(しー)

名前がもうネタ入ってる。如何にもアニメって感じである。ジャンプどころかコロコロのネーミングセンス(褒めてます)
DIYのアニメだから主人公はユアセルフだし、須理出は3Dだし、やさぐれてるし、匠だし、エリザベス8世だし、幸せを希う心だ。しーだけちょっと普通に良い名前だ。このネーミングセンスで(失礼)この世界で何を考えて何を思い何に悩み何を目指し生きているのか、すごく丁寧に描いてくれる。キャラクターが生き生きとしている。後述するがせるふの葛藤を描いた回が特に良かった。

DIYはもちろんアニメとして様々な出会いや事件が描かれるわけだが、全体にはゆったりとした空気感が流れる。それは朝、学校に登校し、昼から夕方にかけて部活動をし、夜に帰宅して家族と触れ合う、そのサイクルを一貫して崩さず描き続けるからだろう。見方によっては展開が遅くも見える。

見ていて最初はやや退屈に感じていた。近年見ていた展開の速い(場面転換が多い)アニメと比べるとひと昔前の速度感というか○HKアニメのテンポ感を思い出さずにいられなかった(作品にもよるし私のただの偏見です)。タイトルが毎回D・I・Yを頭文字にした文章というのもN○K感がマジで凄かった(好きだけど)。丁寧な作りだし作画も良いしキャラも声も良いけど、続きを観るのはどうしようか悩むな……。とりあえず3話までで判断しろの法則に従って3話までは観てみるか。と思って観始めた。

物語はせるふとぷりんの朝の光景から始まる。
ドローンが飛び交い自律ロボットが動き回る半歩先の未来な生活を描いた世界観、家が隣同士の二人はこれから高校生活が始まる。
ぷりんはエリート校に入り、当然せるふもそこに受かっていると思っていたが予想に反して落ちていた。
どうやらせるふには受かる実力はあったはずなのだが、受験中に寝てしまったらしく二人は別々の高校に通うことになってしまう。
そこにぷりんはせるふが自分との繋がりを大事にしていなかったのではないかと憤りを感じ、気持ちがすれ違ってしまうところから物語は始まり、それぞれの学校生活が始まり、せるふがDIY部に出会い、と進んでいく。

いやほんとキャラの関係性の描き方と世界観の提示が丁寧なのだ。上記のシーンは冒頭2分ほどなのだが、それを観るだけでも二人がどんな時間を過ごしてきたか妄想できてしまう。丁寧すぎて逆に退屈に感じてしまうほどだったと思っていたが、こうやって書いて思い出すと情報量の多さに脳が疲れていた可能性が出てきた。いやしかしそれでも見ている時にはそれを意識できていなかった。職人技を感じる。あとせるふのなんか妙な可愛さが私の手を引き続けた。

3話でジョブ子が登場する。天才小学生でありながら留学先をケアレスミスで間違えてしまったジョブ子は居場所の無さと唯一精神的にも出会い的にも繋がりを持てたDIY部に何度も訪れる。そこで素直になりきれず部長に退出を迫られ悪態をついて出ていくのだが、その時のシーン。

ジョブ子悪態。退出。せるふはジョブ子を追いかける。
部長「小学生かよ」
たくみん「そうですよ……年齢的には……」
部長バツが悪そうな顔をする。

このシーンねぇ。好き……。流れとしてはベタなんだけどこういうシーンで必要なセリフを言うべきであろうキャラクターがちゃんと良いタイミングで言う。これがね、刺さるんですわ。このアニメは観ていて私が不満に思うシーンはないだろう、それがわかった。そしてその確信は正しかった。

そして、さきほど書いたせるふの葛藤が描かれる回である。ここまでも勿論良かったが、これが本当に素晴らしかった。
せるふは物語の始まりでぷりんが高校に落ちたことを意外に思うくらいに頭が良い。とんでもなく不器用なのでポンコツのような印象を受けるが、テスト途中に寝てしまっても、何なら普段の授業寝ていても校内で3位を取る程度には天才だ。そして作中で度々絵を描くのだが美術センスもある。なにより明るくて前向きでとても良い子だ。

物語の骨子になる大きな工作を控えたDIY部、その前の日、DIY部の面々を自宅に招待するせるふ。
自分だけでペットの小屋を作るので見ていて欲しいと伝える。
私も足手纏いじゃないことを証明すると言うのだ。
前述した通り、せるふは優秀な面はとても優秀だ。才能がある。それでもDIY部の活動で私だけがみんなより出来ない、と心の中で葛藤していた。
みんなといたい。みんなと一緒に作りたい。だからみんなに認めてもらうために自分の力を見せるのだ。

しかし、出来ない。不器用はそう簡単に直らなかった。

それを、DIY部の面々は温かく受け止める。せるふの良いところはたくさん知ってるし、私たちにできないことをせるふがやってくれる時だってある。だからせるふが苦手なことは一緒にやろう。みんな補い合って一緒に作ろうと言って、ペット小屋を完成させる。

最高か?

こいつら最高か??

このシーンに至るまでの積み重ね、エゲつなくないか???

ずっとこう。このアニメずっとこうなのよ。他のキャラもこうなのよ。ほんと観ていれば観ているほどキャラの内面が描かれる。みんな好きになる。ちゃんとバックボーンがある。

あえて書かないがジョブ子には泣かされた。湘北に負けた魚住くらい自然に涙が流れた。

そして、せるふ×ぷりんの美しき帰結。完璧かよ、完璧です。最高です。Congratulations……ありがとう……ありがとう……。

本当に予想外に素晴らしいアニメだった。毎年春になったら流して欲しい。もしくは夏休みに流して多くの子供達の目に留まって欲しい。そんな良いアニメでした。

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