月に叢雲、花に風 ライターの仕事
「月に叢雲(むらくも)、花に風」
私は、フリーランスのライターとして30歳台半ばの年収は、週刊誌の原稿料をメインに1000万円ほどあった。その頃をピークにどんどん減少し続け、業界を去った55歳の時は、それでも600万円ほどあった。
当時の私の仕事の内容は週刊誌をメインにして、月刊誌、新聞の日曜版、あと単行本やムック本、それに企業の広報誌の取材編集と言ったところだろうか。たまに、コピーライターの分野の仕事も舞い込んで来た。それらは全て、紙媒体の仕事である。ほとんど夜の新宿二丁目、三丁目界隈の飲みニュケーションを主体にした営業活動の結果、舞い込んで来た仕事だった。
近頃のフリーランスのライターと言うと、メインは「webライター」のことを言うようだ。営業場所も、web上ということになる。
私も、その分野の仕事に挑戦はしてみた。自分で動画の配信サイトを運営していたこともあり、SEO対策には、いささか自信があった。しかし、いざ仕事を引き受けて原稿を仕上げてみると、あまりの効率の悪さに愕然とした。大手出版社の10分の1にしかならなかった。
以来、web系の仕事には一切、手を出さない事に決めた。副収入としてでも、受けない事にした。原稿書きはメインだろうがサブだろうが、気疲れは同じだからだ。〆切の緊張感は、原稿料の多寡に関わらず同じである。安いからと言って、手を抜く訳にはいかない。
ても、自分の人生から文章を書くことをやめてしまったら、完全にアイデンティティの喪失に陥ってしまう。だから、なんとか緊張感を維持しながら書き続けていけるように、懸賞小説に応募し続けている。それは側からみれば趣味にしか見えないが、私にとっては生きていく力の源になっている。
結果はどうであれ、私にとってはプロセスが目標であり、書き続けることがゴールである。
どうも、この文章を書いていて、40年間受賞作無しの、言い訳にしか思えないが……。まあ、それも、文章を書く目的の一つ。