文字の連なりが醸し出す景色を書きたい―㉔
上田秀人の「百万石の留守居役」を読み続けている。ついに「茶道」「茶室」「茶碗」の単語が頻繁に登場し出した。加賀藩の留守居役と「きみがてて」との間で、繰り広げられる茶事の会話。
「にじり口」「風炉に向かった」「茶を点てた」「きれいな姿勢で喫した」。そして武士らしく、
「結構なお点前てござる」
と、くる。たまらないですな、この語句の響き。
「時代小説と茶事の融合」を探して四ヶ月間。この瞬間を待ちわびていたぞ……と、こちらまで、時代がかってきてしまう。
《要約》 ……手にしていた茶碗を見た。
「これは……」
「お目に留まりましたか」
「浅学で、銘まではわかりませぬが」
「井戸茶碗にてござります……」
読み進んでいくと、私が書きたかったシーンが、そのまま活字となって続いている。この景色は、私が探し求めていた文字の連なりによって作られている景色。この文字の景色を私のものにしたいと、強く思うのでした。
こうして、目標とする「時代小説と茶事の融合で醸し出された文字の景色」の、一つの形を見つけることが出来ました。あとは、いかに自分の文章として作品の中に取り込んでいくか、である。そのためには、まず、自分の作品を描き進んでいかなければならない。のんびりしている暇はない。
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