氏素性、血筋、来歴、名目
岡倉天心の「茶の本」に、
「新しい物は、茶巾と茶筅。それ以外は古い物が良い」
とあった。
利休に、ある人が、
「何か一つ、茶の道具をいただけないか」
と頼んだところ、利休は茶巾用の真新しい白い麻の布を与えた、と言う話がある。
茶道を初めて五ヶ月、お茶碗だけで十五個くらいたまってしまった。お茶碗の種類を覚えるためにと思っていたら、気がついたらこうなっていた。ほとんどが三千円くらいで、ヤフオクで落札した。
お茶碗の高価な物は、基本的に古い。「唐物」というのだろう。あと「高麗」「李朝」あたり。あと、国内なら「一楽、ニ萩、三唐津」とか。
当然、全て古いことが前提条件。ただ、もう一つ条件があるようだ。それは古くても「箱書き」「添書き」「来歴」がはっきりしていないと、価値が半減する。
どうも、その辺になると、茶碗その物の良し悪しは、素人目には全く分からなくなる。
そんな話を、いつもの女性カメラマンに話した。すると彼女のリアクションは、予想と少し違っていた。
「そういう事を大切にする文化をちゃんと、残さなければいけない」
彼女のお父様は、大の茶道ファンらしい。頻繁に「お茶会がある」といって京都まで出かけていたそうな。京都のお土産は「香り袋」が多かったという。小学生だった彼女は「仏壇の匂い」と言って嫌っていた。
幼い頃、そんなだった彼女が、
「古き良き文化は、大切にしなくちゃいけない」
と発言する年になった事は、お父様としては歓迎すべき事なのだろう。
嫌っていた親の事を、いつしか肯定するようになっていた。(※写真=初代長次郎 黒楽茶碗:東京国立博物館)
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