春慶塗の鶴瓶の水差しに、「もらい水」の銘の付いたお茶杓の説明……
先日の茶道のお稽古は、木製の春慶塗の水差しである「鶴瓶」を使った薄茶のお点前だった。
扇子を自分の膝前に置いて先生に、
「鶴瓶の薄茶のお稽古、よろしくお願いいたします」
と挨拶し、お客様の方に向きを直して、
「お客様、よろしくお願いいたします」
と一言。そして、お点前が進んで、いつもの「棗とお茶杓」の問答になった。
お客様から、
「お茶杓の作は?」
と聞かれて私は、
「鵬雲斎大宗匠にございます」
「御銘は?」
「もらい水、にございます」
するとお客様は、そのまま「大切なお道具、ありがとうございました」
と問答が終わってしまった。そこで、先生の方へ向き直して私が、
「お道具の説明をさせてください」
と、頼み込んだ。先生は「いつものことね」と、
「どうぞ、いいわよ」
と許してくれた。
「ありがとうございます。もらい水の銘は、本日のお水差しの鶴瓶にちなんで、江戸時代の女流俳人、加賀千代女の一句、
朝顔に 鶴瓶取られて もらい水
からとりました銘にございます」
すると先生がすかさず、
「うーん。大宗匠のお茶杓の方が、鶴瓶の水差しよりも大切でしょ。その場合は、お茶杓をメインにして説明しなくてはダメでしょう」
「確かにそうですね」
私は、その大切なお茶杓を右手で持ち、プラプラさせながら答えた。すると先生は、それを見て、
「大切なお茶杓を、そんな風にプラプラさせてはいけません」
と、すかさずお叱りを受けた。お茶室は姉弟子、妹弟子たちの「クスッ」と失笑する声に包まれた。私は気を取り直して、説明し直した。
「そういうことで大宗匠のお茶杓、もらい水にちなんで本日の水差しを、鶴瓶にいたしました」
「そうね。それで辻褄が合いますね」
「ありがとうございます」
と、この日の鶴瓶の水差しの薄茶のお稽古を終了した。その後の、私のお稽古終了のご挨拶の時のことである。
先生に、
「秋の教室のお茶会に、私の女友達3人が参加します。3人とも茶道未経験なんですけど、大丈夫でしょうか?」
とお聞きしたところ、先生に、
「カゲロウさんが、ちゃんと教えてあげるのよ」
と、励まされました。さらに先生は、
「ほかの男性の方も彼女を連れてくる方が多いのよ。みなさん、お綺麗な彼女ですよ」
と。そこで私は、
「茶道を頑張ると、綺麗な女性がついてくるわけですね。頑張らなくちゃ!」
と返した。すると、
「うっ? どっちをがんばるの?」
と一言。先生の突っ込みが入ると女性の多いお茶室が、笑いに包まれた。
今から、お茶会が楽しみである。