蚊帳の広さかな
起きてみつ 寝てみつ蚊帳の 広さかな
前出の俳句は、加賀国の千代女の句として知られているそうだ。しかし、本当は、浮橋という遊女の作とのこと。だから、どうだと言うことでは無いのだが。
朝顔に 釣瓶とられて もらい水
この句は正真正銘の加賀国の千代女の句である。この句を調べていて前出の句と出会った。
この句のどこに目が止まったかというと、やはり「蚊帳」である。今となっては全く見ることの無くなった夏の風物詩である。風情があっていい物だ。しかし、この句を読んだ人と情況によっては、これまた全く違った意味を持つことになる。
一見すると夏の風情を読んだ情緒溢れる句に思えたものが、遊女の作となると、蚊帳の広さが自分の生きる世界である、と理解することができる。この句を詠んだ浮橋という遊女の定められた運命を醸し出して、我が身の幸運を噛みしめる。
情緒豊かな風物詩を表す言葉であっても、人と場所と時によって、全く違う意味をもってくる。
先日、茶道のおっしょさんに言われた言葉、「あなたにだけは、そんな間違いを犯してもらいたくなかったわ」が、未だに脳裏から離れない。今夜もラップの曲を作るしか、寝付く術は無さそうだ。
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