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【翻訳】アメリカ戦略情報局(OSS)簡易破壊工作フィールド・マニュアル(1944年)
この『Simple Sabotage Field Manual』は、第二次世界大戦中のアメリカの諜報機関である戦略情報局(OSS)が作成した教本の一つで、2008年に機密が解除され、現在は後継組織であるCIAのウェブサイトからダウンロードできます。
ある意味では役に立つかもしれない資料なので、翻訳しておきます。
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簡易破壊工作フィールド・マニュアル
戦略情報局(臨時)
戦略情報局フィールド・マニュアル No. 3
戦略情報局
ワシントン D.C.
1944年1月17日
この簡易破壊工作フィールド・マニュアル/戦略情報局(臨時)は、関係者の参考および指導のために発行され、本件に関する戦略情報局の訓練における基本方針として使用される。
本マニュアルの内容は厳重に管理され、権限のない者の手に渡ることがあってはならない。
指導内容を作戦のカテゴリーに応じて個別のパンフレットやリーフレットにすることもできるが、配布には慎重を期し、広範に配布すべきではない。これらをラジオ放送の基礎資料として使用できるのは、局地的で特殊な案件で、戦域司令官の指示の下に行われる場合に限られる。
本マニュアルの取り扱いにあたっては、機密文書取扱いに関する AR 380-5 が遵守されるものとする。
局長 William J. Donovan
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1. 序論
a. 本稿の目的は、簡易破壊工作の特性を明らかにし、その影響の及ぶところを概説すると共に、それを促し、遂行するための提案を示すことである。
b. 破壊工作には、綿密な計画と特別な訓練を受けた工作員を要する高度にテクニカルな奇襲作戦から、一般市民の破壊工作員が実行可能な無数の簡単な行動まで、さまざまな形態が存在する。本稿が主に扱うのは、後者の種類の破壊活動である。簡易破壊工作には、特別に準備された道具や装備は不要である。これは単独ないし複数の一般市民によって実行されるが、組織化された集団との積極的な関わりを必要としない。そして負傷や発覚、報復の危険を最小限に抑える形で行われる。
c. 破壊を伴う場合、市民破壊工作員の武器は、塩、釘、ロウソク、小石、糸、その他の、家庭や自身の職業において通常所持していると考えられる物資である。彼の武器庫は、キッチンの棚、ゴミの山、所有する普通の工具箱や備品である。彼の破壊工作の標的は、通常、日常生活において目立たずアクセスできるものである。
d. 第2の種類の簡易破壊工作は、破壊的道具を一切必要とせず、物理的損害を生じる場合でも極めて間接的な手段によって行われる。これは、誤った判断を下す機会、非協力的な態度をとる機会、そして他者を同様の行動に誘導する機会が普遍的に存在することを基盤としている。誤った判断を下すとは、単に工具を別の場所に置くといった行為の場合もありうる。非協力的な態度とは、同僚の間に不和を作り出す、口論に参加する、または不機嫌や愚鈍を示すだけのことかもしれない。
e. この種の活動は「人的要素」と呼ばれ、通常の状況下においても、事故や遅延、全般的な妨害の要因となることが多い。潜在的な破壊工作者は、業務において通常どのような誤判断や誤作業が見られるかを特定し、その「誤りの許容範囲」を拡大するように破壊工作を企図すべきである。
2. 予想される影響
a. 簡易破壊工作はヨーロッパ全域で発生している。その効率を向上させ、発覚の可能性を低減し、件数を増やす努力がなされるべきである。数千人の市民破壊工作員によって繰り返される簡易破壊工作は、敵に対する有効な武器となり得る。タイヤを切り裂く、燃料タンクを空にする、火をつける、口論を引き起こす、愚かに振る舞う、電気系統をショートさせる、機械部品を摩耗させるといった行為は、物資、人員、時間を浪費させることになる。大規模に発生すれば、簡易破壊工作は敵の戦争遂行能力に対する持続的かつ具体的な妨害となる。
b. 簡易破壊工作には、多少なりとも有意義な二次的な効果も生じ得る。簡易破壊工作が広範に実行されることで、敵の行政官や警察を悩ませ、士気を低下させることができる。さらには、成功によって市民破壊工作員は大胆になり、より大規模な破壊工作を共に遂行できる仲間を見つけるかもしれない。最終的には、敵国ないし占領地域の現地人による簡易破壊工作の実践そのものが、個人を連合国の戦争努力に積極的に同一化させ、連合国による侵攻と占領の時期において公然と支援を行うよう促すかもしれない。
3. 破壊工作員の動機付け
a. 市民を簡易破壊工作の実践に駆り立て、それを長期間にわたって継続させることは特別な課題となる。
b. 簡易破壊工作は、多くの場合、市民が自らの意思と決断のもとに行う行為である。破壊行為は彼に個人的な利益をもたらさず、材料や工具を節約する習慣とは全く相容れないかもしれない。意図的な愚かさは人間の本性に反する。彼はしばしば、圧力、刺激、あるいは保証、そして実行可能な簡易破壊工作の方法に関する情報や提案を必要とする。
(1) 個人的動機
(a) 普通の市民は、おそらく簡易破壊工作を行う直接的な個人的動機を持っていない。代わりに、敵の撤退や支配的な政治集団の崩壊によってもたらされるかもしれない間接的な個人的利益を期待させる必要がある。利益は、対象範囲にできるだけ具体的に伝えるべきである。例えば、X委員長とその副官YおよびZが追放される日、特に不快な法令や制限が廃止される日、食料が届く日などが簡易破壊工作によって早まることを示す。個人の自由や報道の自由などについての抽象的な言葉は、世界のほとんどの地域では説得力を持たない。多くの地域では、それらは理解すらされないだろう。
(b) 自身の行為の影響は限られているため、破壊工作員は自分が敵や自国および他の地域の政府に対して活動している目に見えない大規模な破壊工作員グループの一員であると感じられなければ、意気をくじかれるかもしれない。これは間接的に伝えることができる。彼が読んだりや耳にする提案に、あるテクニックがこの地域やあの地域で成功したという情報を含めることができる。たとえ、そのテクニックが彼の環境には適用できないものであっても、他者の成功は彼に同様の行為を試みるよう促すだろう。また、直接的に伝えることもできる。簡易破壊工作の成果を称賛する声明を考案し、それをホワイトラジオ(敵国側向け放送)、自由放送局、および反体制的な新聞で発表することができる。破壊工作に従事している人口の割合の推定値を広めることもできる。成功した破壊工作の事例はすでにホワイトラジオや自由放送局で放送されており、これは安全性と両立する範囲で継続および拡大されるべきである。
(c) 市民破壊工作員が責任感を持ち、他の人々に簡易破壊工作を教え始めるような状況を作り出すことが、(a) や (b) よりも重要である。
(2) 破壊行為を促す
状況が許せば、破壊工作員に対して、彼が敵に対する自衛として行動していること、または他の破壊行為に対して敵に報復していることを指摘するべきである。簡易破壊工作の提案を示す際には、適度なユーモアを加えることで恐怖による緊張を和らげることができる。
(a) 破壊工作員は考え方を逆転させなければならない場合があり、そのことを明確に伝えるべきである。以前は工具を研ぐことを考えていても、今は鈍らせるべきである。以前は潤滑されていた表面を、今はサンドペーパーで削るべきである。いつもは勤勉であるが、今は怠惰で無頓着になるべきである、等。自分自身や日常生活の物事について逆向きに考えるよう促されれば、破壊工作員は身近な環境に遠くからでは分からない多くの機会を見出すだろう。何であれ破壊工作の対象にできる、という心構えを促すべきである。
(b) 物理的破壊を行う可能性のある市民破壊工作員の中に、2つの極端なタイプが区別される。一方には、技術的な訓練を受けていない、または技術職に就いていない者がいる。このタイプの者には、破壊すべき対象と、その破壊を達成するための道具について詳細で具体的な提案が必要である。
(c) もう一方の極端なタイプは、旋盤工や自動車整備士などの技術者である。おそらく、このタイプの者は自身の設備環境に適した簡易破壊工作の方法を自ら考案できるだろう。しかし、このタイプの者には、破壊に向けて思考を再構築するよう刺激を与える必要がある。彼自身の分野に限らず具体的な例を示すことで、これを達成できるはずである。
(d) 簡易破壊工作に関する提案や情報を広めるために、さまざまなメディアが使用され得る。状況に応じて使用できるメディアには、自由放送局や偽(暗号)ラジオ放送、またはリーフレットがあり、これらは特定の地理的または職業的な範囲に向けられる場合もあれば、広範な範囲を対象とする場合もある。最終的に情報を直接伝達できるようになる時期に備えて、エージェントに簡易破壊工作の技術訓練を行うことも考えられる。
(3) 安全対策
(a) 破壊工作員の活動量は、彼が見つける機会の数だけでなく、感じる危険の度合いによっても左右される。悪い知らせはすぐに広まり、あまりにも多くの工作員が逮捕されると、破壊工作は萎縮するだろう。
(b) 破壊工作員が発覚や報復を免れるための武器、時間、標的の選択についてのリーフレット、その他のメディアを準備することは難しくないはずである。その提案には以下のようなものが含まれる。
(1) 無害に見えるものを使用せよ。ナイフや爪やすりは普通に携帯することができるが、どちらも損害を与えるための多目的な道具として使える。マッチ、小石、髪の毛、塩、釘、その他多くの破壊的な素材は、何の疑いも招かずに持ち運んだり、住居に保管したりできる。特定の職業や産業に従事している場合は、レンチ、ハンマー、サンドペーパーなどを容易に持ち運び、保管できる。
(2) 多くの者が責任を負い得る行為を試みよ。例えば、工場の中央炉の配線を切断した場合、ほとんど誰でもそれを実行できた可能性がある。夜間に行う軍用車やトラックに対する路上破壊工作も、あなたを非難することが不可能な一例である。
(3) 直接非難される可能性のある行為を実行することを恐れるな。ただし、それを頻繁に行わず、もっともらしい言い訳を用意できる限りにおいてである。例えば、前夜の空襲で寝不足だったため、作業中にうとうとしていてレンチを電気回路に落としてしまった、等。常に謝罪を繰り返せ。愚かさ、無知、過度の慎重さ、破壊工作の嫌疑を恐れる気持ち、または栄養不足による衰弱や鈍さを装うことで、しばしばそのような行為は「目こぼし」を受けられる。
(4) 簡単な破壊工作を実行した後、その結果を見届けようと周辺に留まる誘惑に抗え。うろつく者は疑いを招く。もちろん、立ち去ることが逆に疑われる状況もある。職場で破壊工作を行った場合は、当然ながらその場に留まるべきである。
4. 道具、標的、およびタイミング
a. 市民破壊工作員を厳密にコントロールすることはできない。また、具体的な軍事状況の要求に応じて、簡易破壊工作を特定の種類の標的に正確に集中させることができると期待するのも合理的ではない。さらに、軍事状況の変化に応じて簡易破壊工作をコントロールしようと試みることは、敵に対して軍事活動が強化ないし緩和される日時や地域を予測するための情報を与えてしまう可能性がある。
b. もちろん、破壊工作の提案は、それが実行される地域に適応させるべきである。一般的な状況における標的の優先順位も同様に指定でき、それは適切な時期に地下新聞、自由放送局、および協力的プロパガンダによって強調される。
(1) 平時
(a) 簡易破壊工作は単なる悪意のあるいたずら以上のものであり、常に敵の資材と人的資源に損害を与える結果をもたらす行為で構成されるべきである。
(b) 破壊工作員は日用品を工夫して使用するべきである。周囲を改めて見れば、あらゆる種類の武器が見つかるだろう。例えば、強力な武器である金剛砂は、最初は手に入らないように思えるかもしれないが、金剛砥のナイフ研ぎや回転砥石をハンマーで粉砕すれば、豊富に得ることができる。
(c) 破壊工作員は、自身の能力や道具の能力を超える標的に攻撃を仕掛けるべきではない。例えば、未経験者は爆発物を使用しようとせず、マッチや他の使い慣れた武器の使用に留めるべきである。
(d) 破壊工作員は、敵が使用中であるか、または近い将来に使用することがわかっている対象物や資材のみを損傷させるよう努めるべきである。大抵の重工業製品は敵が使用するであろうし、効率的な燃料や潤滑油も同様であろう。ただし、特別な知識がない限り、食料作物や食品の破壊を試みることは望ましくない。
(e) 市民破壊工作員は軍事目標にアクセスする機会が稀であっても、それらを他のどの標的よりも優先すべきである。
(2) 軍事攻撃前
軍事的に静かな期間中の簡易破壊工作は、敵の資材や設備の供給を減らすために、工業生産を重点的に狙うのが望ましい。軍用トラックのゴムタイヤを切り裂くことは価値ある行為かもしれないが、生産工場で大量のゴムを損失させることは一層価値がある。
(3) 軍事攻撃中
(a) 戦闘作戦の舞台、もしくは近い将来そうなる予定の地域において、最も重要な破壊工作は、その効果が直接的かつ即時的であるものである。この種の破壊工作は、たとえその効果が比較的小さく局所的であったとしても、効果が広範囲に及ぶものの、間接的で遅効的な活動よりも優先されるべきである。
(1) 破壊工作員には、あらゆる種類の交通施設を攻撃することが奨励されるべきである。
(2) 当局が指示や士気向上の材料を伝達するために使用できるあらゆる通信施設は、簡易破壊工作の対象となるべきである。これには、電話、電信、電力システム、ラジオ、新聞、掲示板、公告などが含まれる。
(3) それ自体に価値があるか、または交通・通信の効率的な機能に必要な重要物資も、市民破壊工作員の標的となるべきである。これには、石油、ガソリン、タイヤ、食料、水などが含まれる。
5. 簡易破壊工作の具体案
a. ある地域における簡易破壊工作の成果を評価するには、簡易破壊工作の定義に含まれる個々の行為や、その結果を具体的に念頭に置く必要がある。
b. 以下に、標的の種類に応じて分類された具体的な行為のリストを示す。このリストは簡易破壊工作の手法を網羅したものではなく、発展し続けるものとして示されている。新たな技術が開発されるか、新たな分野が探求されるにつれて、この一覧はより詳細になり、拡充されていくことになる。
(1) 建物
倉庫、兵舎、事務所、ホテル、工場の建物は、簡易破壊工作のまたとない標的である。これらは特に火災による損傷を受けやすく、清掃員や雑役婦、そして偶然の訪問者など、訓練を受けていない人々でも機会が得られる。また、損傷を与えれば、敵に対して比較的大きな障害をもたらす。
(a) 可燃物が蓄積されている場所ならどこでも火災を発生させることができる。倉庫は明らかに最も有望な標的であるが、放火による破壊工作はそれに限定される必要はない。
(1) 可能な限り、自分がその場を離れた後に火が発生するように仕掛けること。ロウソクと紙のコンビネーションを用いる。燃やしたい可燃物のすぐ近くに配置すること:紙を1枚用意し、幅3~4センチメートルの帯状に裂き、それをロウソクの根元に2~3回巻きつける。さらに、数枚の紙をねじって紙縒りを作り、それをロウソクの根元の周囲に配置する。ロウソクの炎が巻きつけた紙の帯に達すると、それが着火し、さらに周囲の紙にも燃え移る。発生する炎の大きさ、熱量、持続時間は、使用する紙の量と、それをどれだけ狭い空間に押し込めるかに依存する。
(2) この種の着火装置では、綿袋などの特に燃えやすい物質以外には着火を試みないこと。より燃えにくい物質に着火する場合は、ガソリンを染み込ませた紙を、ロウソクにしっかりと巻いたり、捩ったりすればよい。短時間ながら高温の炎を発生させるには、古い櫛などに使われているセルロイドを、乾燥した紙や可燃性の液体を染み込ませた紙の中に置き、それをロウソクで着火させる。
(3) 別種の簡易導火線を作るには、まず紐の片方の端を油脂に浸す。紐の油脂を含んだ部分と乾いた部分の境目1インチほどに火薬をたっぷりとまぶす。そうして乾いた端に火をつける。それは炎を出さずにゆっくりと燃え(タバコの燃え方と同様)、油脂と火薬に到達すると突然燃え上がる。同様の効果は、油脂と火薬の代わりにマッチを使用しても得られる。紐が押しつぶされていたり結び目がないように注意し、マッチの頭薬部分に沿わせて配置する。これもまた突然の炎を発生させる。この種の導火線の利点は、紐が一定の速度で燃焼することである。選んだ紐の長さや太さによって、着火までの時間を調整することができる。
(4) 上述のような導火線を使用し、勤務時間外のオフィスで火災を発生させる。記録や各種文書の焼失は、敵にとって深刻な障害となる。
(5) 廃棄物が保管される地下室では、管理人は油脂を含む廃棄物をため込むべきである。このような廃棄物は時に自然発火するが、タバコやマッチで簡単に着火することもできる。もし夜勤の管理人であれば、最初に火災を報告することもできるが、あまり早く通報しないようにする。
(6) 清潔な工場は火災の危険が少ないが、汚い工場はそうではない。作業員は廃棄物の管理を杜撰にし、管理人は清掃を怠るべきである。十分な量の汚れや塵芥が蓄積されれば、本来耐火性の建物であっても可燃性となる。
(7) 夜間無人となる部屋で照明用ガスが使用されている場合、窓をしっかり閉め、ガスを開放し、ロウソクに火を灯したまま部屋を離れ、ドアを厳重に閉める。しばらくするとガスが爆発し、火災も発生するかもしれない。
(b) 水、その他
(1) 自動スプリンクラーを作動させて倉庫の在庫を損なわせる。スプリンクラーヘッドをハンマーで強く叩くか、マッチの火をかざすことで作動させることができる。
(2) トイレに紙を補充しないようにし、固く丸めた紙や髪の毛、その他の異物を便器に詰め込む。スポンジに濃いデンプン液や砂糖水を染み込ませ、強く握って球状にし、糸で縛って乾燥させる。完全に乾いたら糸を外すと、スポンジは硬く締まった球状になる。これを便器に流すか、下水管に投入する。スポンジは徐々に元の大きさに膨張し、排水システムを詰まらせる。
(3) 公共施設の電球の下に昼間のうちにコインを仕込んでおき、夜に電灯を点けた際にヒューズが飛ぶようにする。ヒューズの裏にコインを挟むか、太い針金を仕込むことで、ヒューズそのものを無効化することもできる。これにより、短絡による火災発生、変圧器の損傷、あるいは中央ヒューズの破損によって広範囲の電力供給を妨害することが可能である。
(4) 監視のない公共施設の入口の鍵穴に、紙片、木片、ヘアピンなど詰め込めるものを入れて使用不能にする。
(2) 工業生産:製造業
(a) 工具
(1) 切削工具を鈍らせる。工具の効率が悪くなり、生産が遅れるだけでなく、加工する材料や部品を損傷する可能性がある。
(2) 使用しないときに、ノコギリをわずかにねじれた状態にしておく。そのうち使用時に折れるようになる。
(3) やすりを非常に速いストロークで使用すると、通常より早く摩耗する。また、ゆっくりとしたストロークで強く押し付けながら使用しても摩耗が早まる。前方ストロークだけでなく、後方ストロークでも圧力をかけること。
(4) やすりを万力や加工対象に打ち付けて掃除する。こうすると簡単に破損する。
(5) ビットやドリルは過度な圧力をかけると折れやすい。
(6) プレス機には、設定された量以上の材料を入れることで故障させることができる。例えば、1枚のブランク材ではなく2枚入れるなどする。
(7) エアードリルやリベット打ち機などの動力工具は、汚れていると効率が著しく低下する。潤滑部分や電気接点は、通常の汚れの蓄積や異物の挿入によって簡単に機能不全を起こす。
(b) 潤滑油および潤滑システムは破壊工作が容易で、また可動部を持つすべての機械にとって不可欠でもある。これらを標的とした破壊工作は、生産を遅らせるか、産業プロセスの要所で作業を完全に停止させることができる。
(1) 金属粉や削りくず、細かい砂、粉砕したガラス、金剛砂(ナイフ研ぎ器を砕いて得られる)などの硬くざらついた物質を直接潤滑システムに投入する。これらは摩擦面を傷つけ、ピストン、シリンダー壁、シャフト、ベアリングを破損させる。モーターはオーバーヒートし、最終的に停止して、分解修理や部品交換、大規模な修理が必要となる。これらの物質を使用する場合は、フィルターを通さずに潤滑システム内に直接投入することが重要である。
(2) フィルターシステムのカバーを外し、鉛筆その他の鋭利な物でフィルターメッシュを突き破り、再びカバーを戻すことで、どのような機械でも摩耗を引き起こすことができる。また、手早く処分できる場合は、フィルター自体を単純に取り外してしまうのも効果的である。
(3) 直接潤滑システムやフィルターに手を加えることができない場合は、保管中の潤滑油を希釈することでその効果を低下させることが可能である。この場合、油を薄めることができるほぼすべての液体が使用できるが、特に少量の硫酸、ワニス、ケイ酸ナトリウム、亜麻仁油は効果が高い。
(4) 濃い潤滑油が指定されている機械に薄い潤滑油を使用すると、機械が故障するか、可動シャフトが過熱して「フリーズ」し、停止する。
(5) 潤滑システム内に詰まりやすい物質を投入するか、油に浮くものであれば貯蔵している油に混入する。絡んだ人間の髪の毛、糸くず、死んだ昆虫など、ありきたりのもので供給ラインやフィルター内の油の流れを阻害し、詰まりを引き起こせる。
(6) 場合によっては、潤滑油の効果を低下させるのではなく、完全に破棄することも可能である。潤滑システムの栓を抜く、あるいは貯蔵されているドラム缶や容器に穴を開けることで、油を完全に流出させることができる。
(c) 冷却システム
(1) 水冷式の冷却システムは、比較的短時間で機能を停止させることが可能であり、エンジンやモーターに大きな損傷を与えることができる。米や小麦などの硬い穀物を数つまみ投入すると、これらが膨張して水の循環を詰まらせる。詰まりを取り除くためには、冷却システム全体を分解する必要が生じる。おがくずや髪の毛も、水冷システムを詰まらせるのに利用できる。
(2) オーバーヒートしたモーターの冷却システムに急に冷水を流し込むと、収縮が生じ、ハウジングに大きな負荷がかかる。これを数回繰り返せば、ひび割れや深刻な損傷を引き起こすことができる。
(3) 空冷式の冷却システムの吸気バルブや排気バルブに汚れやゴミを詰め込むことで、冷却効果を損なうことができる。また、システムにベルト駆動のファンが使用されている場合、ベルトにギザギザの切れ込みを半分以上入れると、滑りが発生し、最終的には負荷によって切断される。これによりモーターがオーバーヒートする。
(d) ガソリンおよび燃料油
燃料タンクや給油中のエンジンは通常、容易にアクセスでき、開けるのも簡単である。そのため簡易破壊工作の対象として非常に脆弱である。
(1) ガソリンエンジンの燃料タンクに、おがくずや米・小麦などの硬い穀物を数つまみ投入する。これらの粒が燃料供給ラインを詰まらせ、エンジンが停止する。故障の原因を特定するには時間がかかる。入手は困難かもしれないが、古い輪ゴムや消しゴムに見られる天然ゴムの破片も同様に効果的である。
(2) 砂糖を入手できるなら、それをガソリンエンジンの燃料タンクに投入する。ガソリンとともに燃焼することで粘着性のある残留物が生成され、エンジンを完全に汚損し、大規模な清掃や修理が必要になる。砂糖と同様に、蜂蜜や糖蜜も効果的である。目安として、ガソリン10ガロンにつき75~100グラム程度を使用するとよい。
(3) ガソリンに混入できる他の異物も、エンジンの急速な摩耗と最終的な故障を引き起こす。軽石の粉末、砂、粉砕したガラス、金属粉などの微粒子は容易にガソリンタンクへ投入できる。キャブレターのジェットを通過できるように、必ず微細な粒子を使用すること。
(4) 水、尿、ワイン、その他容易に入手できる液体を大量に加えることで、ガソリンを希釈し、シリンダー内で燃焼が発生しない程度にすることができる。その結果、エンジンは動かなくなる。目安として、ガソリン20ガロンに対し1パイントの液体で十分である。塩水を使用すると、腐食が発生し、エンジンに永久的な損傷を与える可能性がある。
(5) ディーゼルエンジンの場合、引火点の低い燃料油を燃料タンクに投入すると、エンジンが始動しなくなる。すでに適切な燃料が入っている状態で不適切な燃料を混入すると、エンジンの動作は断続的となリ、まともに稼働しなくなる。
(6) ガソリンおよびディーゼルエンジンの燃料ラインはしばしば排気管の上を横切る。エンジンが停止しているときに、燃料ラインに小さな穴を開け、その穴をロウで塞ぐことができる。 エンジンが作動し、排気管が熱くなると、ロウが溶けて燃料が滴り落ち、排気管にかかることで発火する。
(7) ガソリンが保管されている部屋にアクセスできる場合、密閉された部屋にガソリン蒸気が蓄積される状態で、部屋にロウソクを灯したままにしておくと、やがて爆発することを覚えておくこと。ただし、ガソリン缶から部屋の空気に十分な蒸発が起きる必要がある。缶の蓋を開けても十分なガソリンが空気にさらされず、蒸発が確保できない場合、軽構造の缶であれば、ナイフ、アイスピック、または研いだ爪やすりを使ってさらに開けるか、タンクに小さな穴を開けてガソリンが床に漏れ出すようにする。これにより蒸発速度が大幅に向上する。ロウソクに火をつける前に、窓が閉まっており、部屋が可能な限り気密されていることを確認すること。隣接する部屋の窓が大きく開いているのが見える場合、ガソリンだけでなく近くの他のものも破壊する大規模な火災を発生させるチャンスがある。ガソリンが爆発すると、保管庫のドアが吹き飛んで、隣接する窓に向かう風が生じ、見事な大火災を引き起こすだろう。
(e) 電気モーター
電気モーター(ダイナモを含む)については、これまで論じてきた対象よりも制約が大きい。良い機会を得ても未熟練者では、容易に、負傷のリスクなしに破壊工作を行うことはできない。
(1) どの種類の電気モーターでも、レオスタットを高い抵抗値に設定すれば、加熱して発火する。
(2) 過負荷リレーをモーターの容量を超える非常に高い値に設定せよ。そうしてからオーバーヒートするまでモーターに過負荷をかけて故障させる。
(3) ほこり、汚れ、湿気は電気機器の敵であることを覚えておくこと。電気モーターの電線が端子に接続する箇所や絶縁部分にほこりや汚れをまき散らす。電流の伝達が非効率になり、場合によってはショートが発生する。発電機を濡らしてショートを引き起こす。
(4) 「偶然」電線の絶縁を傷つけ、接続箇所のナットを緩め、配線の接続不良や延長不良を作り、電流を浪費し、モーターの出力を低下させる。
(5) 整流子の損傷は、直流モーターの出力を低下させるか、ショートを引き起こす可能性がある。整流子の保持リングを緩めるか取り外す。整流子にカーボン、グラファイト、または金属粉をまき散らす。整流子の接点に少量のグリースや油を塗る。整流子のバーが近接している場合、金属粉を隙間に詰めて橋渡しをするか、ノミを用いてバーの縁を鋸歯状に加工し、隣接するバー同士の歯が接触するか、ほとんど接触するようにする。これにより、電流が一方のバーから他方へと流れるようになる。
(6) 郵便切手の半分ほどの大きさの細かい粒子のサンドペーパーを、回転ブラシが擦れる場所に仕込む。結果として発生する火災でサンドペーパーはモーター諸共失われる。
(7) スリップリングに炭素粉、グラファイト粉、または金属粉を振りかけることで、電流の漏れや短絡を引き起こす。モーターが停止している間にノミを使ってスリップリングに刻みを入れる。
(8) アーマチュアの表面にグリースと混ぜた粉塵を塗布し、適切な接触を妨げることで、モーターの停止や効率低下を引き起こす。
(9) 電気モーターをオーバーヒートさせるために、濃いグリースに砂を混ぜ、それをステーターとローターの間に塗る。または、薄い金属片を挟み込む。発電効率を低下させるためには、ステーターとローターの間に床の埃、油、タール、または塗料を入れる。
(10) 三相交流を使用するモーターの場合、機械が停止しているときに、引込線の1本をナイフややすりで深く傷つける。または、3つのヒューズのうち1つを切れたヒューズと交換する。前者の場合、モーターはしばらく運転した後に停止し、後者の場合は起動しなくなる。
(f) 変圧器
(1) オイル入り変圧器は、オイルタンク内に水、塩水、工作機械用冷却液、または灯油を注ぐことで使用不能にすることができる。
(2) 空冷式変圧器の場合、変圧器の周囲に障害物を積み上げることで換気を妨げられる。
(3) すべての種類の変圧器に対して、外部のブッシングやその他の露出した電気部品に炭素粉、グラファイト粉、または金属粉を振りかける。
(g) タービンは大部分が頑丈に作られ、強固な外装を持ち、アクセスが困難であるため、簡易破壊工作に対する脆弱性は非常に低い。
(1) 水力タービンの点検や修理後に、カバーを不完全に固定することで、それが吹き飛び、発電所を水浸しにする。蒸気タービンの場合、カバーを緩めておくと蒸気漏れが発生し、回転が遅くなる。
(2) 水力タービンでは、スクリーンを通過した直後のペンストックの入口に大きな鉄くずを挿入する。水の流れによってこれが発電所の設備へと運ばれ、損傷を引き起こす。
(3) タービンへの蒸気管が修理のために開放されている際に、鉄くずを内部に投入する。蒸気供給が再開された際に、それらがタービン機構へと吹き飛ばされ、損傷を与える。
(4) タービンに給油する配管に漏れを発生させ、油が高温の蒸気管に落ちることで火災を引き起こす。
(h) ボイラー
(1) できる限りの方法で蒸気ボイラーの効率を低下させる。ボイラーに過剰な水を入れて始動を遅らせるか、火力を弱くして非効率な状態を維持せよ。ボイラーが乾燥した状態で火力を上げれば、ひび割れて使用不能になる。特に効果的な方法としては、石灰石や石灰を含む水を継続的にボイラーに投入することであり。そうすれば底や側面に石灰の沈殿物が形成される。この沈殿物は非常に優れた断熱効果を持つため、十分に蓄積されるとボイラーは完全に役に立たなくなる。
(3) 生産:金属
(a) 鉄鋼
(1) 高炉は、修理のために頻繁に停止しなければならない状態に保つ。高炉の内張り用の耐火レンガを作る際には、タールを多めに入れることで、レンガが早く摩耗し、頻繁に内張りをやり直す必要があるようにする。
(2) 鋳造用の中子を作る際に気泡を含ませ、不完全な鋳物ができるようにする。
(3) 鋳型の中子の固定をおろそかにし、ずれるようにすることで、不適切な位置のために鋳物が不良品になるようにする。
(4) 鋼や鉄を熱処理する際には、過度な加熱を行い、鋼材やインゴットの品質を低下させる。
(b) その他の金属
利用できる提言なし。
(4) 生産:鉱業
(1) デービー・オイルランプはわずかな衝撃で消えてしまい、再点火するには可燃性ガスのない場所を探さなければならない。 その場所を探すのに時間をかける。
(2) エアーピックを製造する鍛冶工は、適切に焼き入れを行わず、すぐに刃が鈍るようにする。
(3) エアーピックは簡単に故障させることができる。 オイルレバーに少量の水を注げば作動しなくなる。 石炭粉や潤滑不良も故障の原因となる。
(4) 石炭を運ぶバケットコンベアの牽引用チェーンを弱らせること。 ツルハシやシャベルで深いへこみを作れば、通常の負荷でも切断する。 チェーンが切れたら、通常の損傷であれ故意であれ、損傷の報告を遅らせ、修理のためにチェーンを引き上げるのも、修理後に戻すのもできるだけ遅らせる。
(5) レールやポイントに障害物を置いて鉱車を脱線させる。 可能であれば、石炭車同士がすれ違わなければならない坑道を選び、交通を混乱させる。
(6) 石炭と一緒に大量の岩石や不要な物を搬出する。
(5) 生産:農業
(a) 機械
5 b (2) (c), (d), (e).参照
(b) 作物および家畜の破壊は、食料の余剰が大である地域、あるいは敵(政権)が食料の徴発を行っていることが判明している地域においてのみ行われるだろう。
(1) 作物を家畜に与える。作物の収穫時期を早めすぎるか遅らせすぎる。 穀物、果物、野菜の貯蔵品を水浸しにして腐敗させる。果物や野菜を日光にさらして品質を損なわせる。
(6) 輸送:鉄道
(a) 旅客
(1) 敵の人員にとって列車の移動ができるだけ不便になるようにする。乗車券の発券時に誤りを犯し、旅程の一部が未払いの状態になるようにする。 同じ座席に対して2枚の切符を発行し、乗客同士の口論を引き起こす。 列車の出発時刻が近づいたら、印刷された切符ではなく、手書きでゆっくりと発行し、手続きを遅らせて列車の発車間際、あるいは発車後まで引き延ばす。
(2) 敵の目的地に向かう列車では、乗務員は乗客ができる限り不快に感じるように努める。食事を特に粗悪なものにする。深夜に切符を回収する。駅に停車するたびに大声でアナウンスをする。夜間にできるだけ騒々しく荷物を取り扱うなど。
(3) 敵の人員の荷物が紛失するか、誤った駅で降ろされるようにする。敵の荷物の宛先ラベルを入れ替える。
(4) 機関士は列車の速度を遅くし、もっともらしい理由をつけて予定外の停車を行うようにする。
(b) 分岐、信号、経路
(1) 信号や分岐器を制御する配電盤の配線を入れ替え、誤った端子に接続されるようにする。
(2) プッシュロッドを緩めて信号機の腕木が作動しないようにし、信号灯を破壊し、赤と緑のレンズを入れ替える。
(3) 線路の分岐器のポイントを広げて固定し動かないようにするか、ポイントの間に石や固く詰めた土を置く。
(4) 分岐器の電気接点やその周囲の地面に大量の岩塩ないし普通の塩を撒く。雨が降ると分岐器がショートする
(5) 車両が誤った列車に連結されるようにする。修理が必要な車両のラベルを取り外し、正常な車両に貼り付ける。車両間の連結器はできるだけ緩くしておく。
(c) 路盤と線路
(1) カーブでは、外側のレールを接続する締結板のボルトを取り外し、接合部の両側数フィートにわたって砂利、石炭滓、土を取り除く。
(2) 接合部の締結板を取り外し、接合部の両側の枕木の釘を緩めることでレールの一部を動かせる場合、2つのレールを広げ、その間にスパイクを垂直に打ち込む。
(d) 油および潤滑
(1) 5 b (2) (b) を参照。
(2) 潤滑油のパイプをペンチで締め付けるか、ハンマーでへこませ、油の流れを妨げる。
(e) 冷却システム
(1) 5 b (2) (c) を参照。
(f) ガソリンおよび燃料油
(1) 5 b (2) (d) を参照。
(g) 電気モーター
(1) 5 b (2) (e) および (f) を参照。
(h) ボイラー
(1) 5 b (2) (h) を参照。
(2) 点検後、機関車のボイラーに重油またはタールを投入するか、炭水車の水に柔らかい石鹸を0.5キログラム加える。
(i) ブレーキその他
(1) 機関車を高速で運行し、カーブや下り坂で過度にブレーキを使用する。
(2) エアブレーキのバルブや給水管に穴を開ける。
(3) 旅客列車の最後尾車両または貨物列車の先頭車両の軸受箱の詰め物を取り除き、代わりに油を染み込ませた布を入れる。
(7) 輸送:自動車
(a)道路。
道路の破壊[(3) 参照]は時間がかかるため、Dデーまたはその直前の作戦には不向きである。
(1) 交差点や分岐点の標識を変更する。敵は誤った道を進み、間違いに気づくまでに数マイル進んでしまうかもしれない。主に敵の自動車、トラック、各種車両の車列が通行する地域では、カーブや交差点の危険標識を撤去せよ。
(2) 敵が道を尋ねてきたら、誤った情報を与えよ。特に敵の車列が近くにいる場合、トラック運転手は噂を広め、「橋が落ちている」「フェリーが運航停止している」「迂回路がある」などの偽情報を流すことができる。
(3) 交通量の多い道路に破損を生じさせることができれば、その後は通行車両や自然の影響が破損を拡大させる。道路工事に関わる者は、コンクリートに過剰な砂や水を混入させたり、路盤に軟弱な部分を作ったりすることができる。誰でも暑い時期に柔らかくなるアスファルトやマカダム舗装の道路に轍を作ることができる。通行するトラックによってその轍はさらに深くなり、大規模な修復が必要になるまで悪化する。未舗装道路も掘り返すことができる。道路作業員であれば、水門から小川の流れを変え、道路の上を流れるようにするのは数分の作業で済む。その結果、道路が浸食される。
(4) 道路に砕けたガラス、釘、鋭利な石を撒き、タイヤをパンクさせる。
(b) 乗客
(1) バス運転手は、敵が降車したい停留所を通過せよ。タクシー運転手は、目的地まで可能な限り遠回りをして、敵の時間を浪費させるとともに、追加料金を稼ぐことができる。
(c) オイルおよび潤滑
(1) 5 b (2) (b)を参照。
(2) オイルポンプを切り離す。通常の運転で50マイル以内にメインベアリングが焼き付く。
(d) ラジエーター
(1) 5 b (2) (c) を参照せよ。
(e) 燃料
(1) 5 b (2) (d) を参照せよ。
(f) バッテリーおよび点火装置
(1) イグニッションロックに木片を詰め込む。スイッチボード裏の配線を緩めるか入れ替える。スパークプラグを汚す。ディストリビューターポイントを損傷させる。
(2) 駐車中の車のライトを点けっぱなしにし、バッテリーを消耗させる。
(3) 整備士はバッテリーを目立たない方法で破壊できる。セルのバルブキャップを外し、露出した水抜き穴にドライバーを斜めに差し込んでセルの板を破砕する。キャップを元に戻せば損傷は見えない。セル内に鉄や銅の削りくずを投入すれば(すなわち酸に落とせば)寿命が大幅に短くなる。同様の効果を銅貨や数片の鉄片でも得られるが、作用はより緩慢である。各セルに100~150立方センチメートルの酢を入れると、バッテリーの寿命が著しく縮まる。ただし、酢の匂いで異変を察知される可能性がある。
(g) ギア
(1) トランスミッションやその他のギアの潤滑油を除去するか、粘度の低い潤滑油を使用する。
(2) トラック、トラクター、その他の重いギアを持つ機械では、ギアケースを不完全に固定し、ボルト穴の半分にしかボルトを入れないようにすれば、使用中にギアが激しく揺さぶられ、すぐに修理が必要になる。
(h) タイヤ
(1) 無防備な車両のタイヤを切り裂くか、穴を開ける。マッチ箱やその他の小箱の中に釘を入れ、停車中の車の後輪の前に垂直に立てて置く。車が発進すると釘はしっかりタイヤを貫通するだろう。
(2) タイヤ修理工場では、タイヤを簡単に損傷できる。パンク修理の際、タイヤのケーシング内部にガラス片、ベンジン、苛性ソーダ、ないしチューブを腐食・穿孔させる物質をこぼす。チューブ内に粘着性の物質を入れると、次にパンクした際にチューブがケーシングに張り付き、使用不能となる。また、パンク修理時に、もともとパンクの原因となった異物をチューブとケーシングの間にそのまま残すこともできる。
(3) 修理後にタイヤを組み立てる際、できるだけ素早くチューブに空気を入れる。そうすると均等に膨らまず折り目がつくことがあり、その場合はすぐに駄目になる。また、タイヤを組み立てる際、チューブをタイヤの縁とホイールの縁の間に挟み込むようにすれば破裂する。
(4) タイヤに空気を入れる際は、規定より低い空気圧に保ち、通常以上の摩耗を引き起こすようにする。二重タイヤの空気を入れる際は、内側のタイヤを外側よりはるかに高圧にする。これにより両方とも早く消耗する。また、ホイールのアライメントが悪いとタイヤの摩耗が早まる。調整のために車が入庫した際にアライメントを狂わせたままにすることもできるし、強く蹴ったり、車をゆっくりと斜めに縁石へ乗り上げさせたりすることで、ホイールを歪ませることもできる。
(5) もしタイヤの在庫にアクセスできるなら、オイル、ガソリン、苛性ソーダ、ベンジンをこぼして劣化させることができる。ただし、合成ゴムはこれらの化学物質に対して耐性が高い。
(8) 輸送:水運
(a) 航行
(1) バージや川船の乗組員は、自分たちが航行する水路の航行可能性や状態について誤った噂を広めるべきである。他のバージやボートの船長に、余分な時間がかかる水路を通るよう勧めたり、運河の迂回路を利用するよう仕向ける。
(2) バージや川船の船長は、水門や橋の近くで極度に慎重に航行するべきである。これにより、自分たちの時間だけでなく、他の船の待ち時間も無駄にできる。船やバージの船底を十分に排水しなければ、船足が遅くなり、航行が困難になる。バージが「偶然」座礁することも、効率的な時間浪費となる。
(3) スイング、ドロー、あるいはバスキュール橋の係員は、ゆっくりと動かすことで橋を渡る交通や、下の水路の交通を遅延させることができる。ボートの船長は、ドローブリッジを開けっぱなしにすることで、道路交通を遅延させることができる。
(4) 貨物船のコンパスの補正磁石を加減する。コンパスを脱磁したり、鉄鋼の大きな棒を近くに隠してコンパスを狂わせる。
(b) 貨物
(1) 荷物の積み下ろしをする際に、不注意に荷物を取り扱って損傷を引き起こす荷物を積む際に、最も弱く軽い箱やケースを船倉の底に配置し、最も重いものをその上に置く。フロートバルブを固定して、タンクが溢れて腐りやすい品物の上にかかるようにする。
(9) 通信
(a) 電話
(1) 事務所、ホテル、交換機のスイッチボードでは、敵の電話を通すのを遅らせ、間違った番号を伝え、「偶然」切断したり、切り忘れて再度使用できないようにする。
(2) 敵の司令部に毎日少なくとも1回電話をかけ、公務と特に軍事業務を妨害する。相手には誤った番号を伝える。軍や警察の事務所に電話をかけ、火災、空襲、爆弾に関する匿名の虚偽報告をする。
(3) 敵が使用する事務所や建物で、電話の受話器のイヤホンを分解し、振動板を取り外す。電気技師や電話修理技師は、接続を不良にし、絶縁を損なうことで、クロストークその他の電気的干渉を引き起こし、会話を困難ないし理解不能にする。
(4) 自動交換機のバッテリーを使えなくするために、釘、金属片、またはコインをセルに落として故障させる。この方法でバッテリーの半数を処理できれば、交換機は動作を停止する。中央バッテリー室のバッテリーの半数に含まれるセルの10%を故障させれば、電話システム全体を混乱させることができる。
(b) 電報
(1) 敵の宛先への電報の送信および配達を遅延させる。
(2) 敵の宛先への電報の内容を混乱させ、再送信や長距離電話を余儀なくさせる。時には、単語の一文字を変更するだけでこれを実行できる。例えば、「minimum」を「miximum」に変えることで、受信者が「minimum」なのか「maximum」なのか判断できなくなるようにする。
(c) 通信線
(1) 電話および電報の通信線を切断する。送電線の絶縁を損傷させ、干渉を引き起こす。
(d) 郵便
(1) 郵便局員は、敵の郵便物が常に1日以上遅れるようにし、誤った郵便袋に入れられるよう仕向ける。
(e) 映画
(1) 映写技師は、焦点をずらしたり、フィルムの速度を速めたり遅めたり、頻繁にフィルムを切断したりすることで、ニュース映画やその他の敵の宣伝映画を駄目にすることができる。
(2) 観客は、大きな拍手をして話者の声をかき消したり、大声で咳払いをしたり、会話をしたりすることで、敵の宣伝映画を台無しにする。
(3) 誰でも、2〜3ダースの大型の蛾を紙袋に入れることで、敵の宣伝映画の上映を妨害できる。その袋を映画館に持ち込み、入場時に劇場の空いている場所の床に置き、袋を開けておけばよい。蛾は袋から飛び出し、映写光の中に入り込むため、フィルムは飛び回る影で見えにくくなる。
(f) ラジオ
(1) 放送技師は、敵の宣伝や指示を行う話者の放送を過度に変調することで、その声を厚手の綿毛布を通して話しているかのように、あるいは口いっぱいにビー玉を含んで話しているようにすることが容易にできる。
(2) 自分の住んでいるアパートで、敵が皆にラジオを聴かせようとする時間帯に受信障害を引き起こす。電灯線の端からプラグを外し、中の電線を取り出して、それを二極プラグの二端子間、あるいは四極プラグの三端子間に結びつける。そうしたら、そのプラグをできるだけ多くの壁や床のコンセントに差し込む。プラグを新しい回路に差し込むたびにヒューズが飛び、その回路に接続されたラジオは新しいヒューズが取り付けられるまで沈黙する。
(3) 何であれ電気機器の絶縁を損傷させれば、周囲でラジオの干渉が発生しやすくなる。特に、大型発電機、ネオンサイン、蛍光灯、X線装置、送電線。作業員が敵の飛行場近くの高圧送電線の絶縁を損傷させることができれば、地上と航空機の無線通信を困難にし、場合によっては長時間にわたり通信を不可能にできる。
(10) 電力
(a) タービン、モーター、変圧器
(1) 5 b (2) (e), (f), (g) を参照せよ。
(b) 送電線
(1) 電線工は、絶縁体を緩めたり汚したりして、電力漏れを引き起こすことができる。また、非常に太い糸を2本の並行する送電線の間に何度も渡して、それぞれの電線に何回か巻きつけることも極めて容易である。事前にその糸を塩によく浸し、乾燥させておく。雨が降るとその糸が導体となり、ショートが発生する。
(11) 組織と生産に対する一般的な妨害
(a) 組織と会議
(1) すべてを「正式な手続きを通して」行うことを強く主張する。決定を迅速にするための近道は決して許してはならない。
(2) 「演説」をする。できるだけ頻繁に、できるだけ長く話すこと。自分の「主張」を長い逸話や個人的な経験談で説明する。また、適当な「愛国的」発言をためらわずに挟むこと。
(3) 可能であれば、すべての案件を「さらなる調査と検討」のために、委員会に付託する。委員会はできるだけ大規模にし、最低でも5人以上とする。
(4) できるだけ頻繁に些末な問題を持ち出す。
(5) 文書、議事録、決議文の正確な表現について細かく議論する。
(6) 前回の会議で決定された事項に立ち戻り、その決定の妥当性について再び議論を始めるよう試みる。
(7) 「慎重」になることを提唱する。「理性的」立場を取り、他の出席者にも「理性的」であるよう促し、将来的に恥や困難を招くかもしれない拙速な決定を避けるべきだと主張する。
(8) いかなる決定についても、その妥当性を疑問視する。検討中の行動がこのグループの管轄内にあるのか、それともより上位の方針と矛盾する可能性があるのかを問いただす。
(b) 管理者と監督者
(1) 書面による指示を要求する。
(2) 指示を「誤解」する。その指示について際限なく質問し、長い書簡のやり取りを行う。可能な限り言葉尻をとらえて議論する。
(3) 指示の実行を可能な限り遅らせるよう努める。指示の一部が事前に準備できていたとしても、完全に準備が整うまで決して実行しない。
(4) 現在の在庫がほぼ尽きるまで新しい作業用資材を発注しない。そうすれば、わずかな納品遅れでも操業停止につながる。
(5) 入手困難な高品質の資材を発注する。それが手に入らなかった場合は抗議し、低品質の資材を使えば低品質の仕事になると警告する。
(6) 仕事を割り当てる際は、まず重要でない仕事を優先的に振り分ける。重要な仕事は、非効率な労働者や性能の悪い機械に割り当てるようにする。
(7) 比較的重要でない製品に対して完璧な仕上がりを要求する。わずかな欠陥でもやり直しを命じる一方で、肉眼で確認できない欠陥を持つ部品は承認する。
(8) 部品や資材を誤った場所へ送るようにルート指定を間違える。
(9) 新しい労働者を訓練する際には、不完全または誤解を招く指示を与える。
(10) 労働意欲を低下させ、それに伴い生産性を落とすため、非効率な労働者に対して親切に接し、不当に昇進させる。一方で、効率的な労働者を差別し、不当に彼らの仕事に文句をつける。
(11) より重要な仕事があるときに会議を開く。
(12) もっともらしい理由をつけて書類作業を増やす。重複するファイルを作成する。
(13) 指示の発行や給与支払いなどに関する手続きを増やす。1人の承認で済むところを、3人の承認が必要となるようにする。
(14) すべての規則を一字一句厳密に適用する。
(c) 事務職員
(1) 注文を写す際に材料の数量を間違える。似た名前を混同する。誤った住所を使用する。
(2) 官庁との書簡のやり取りを長引かせる。
(3) 重要書類を誤って分類する。
(4) カーボンコピーを作成する際には、1枚少なく作成し、追加のコピー作業を発生させる。
(5) 重要な電話の相手には、上司が忙しいか、他の電話に出ていると伝える。
(6) 郵便物を次の回収まで遅らせる。
(7) 内部情報のように聞こえる不安を煽る噂を広める。
(d) 従業員
(1) 作業をゆっくり行う。動作の回数を増やす方法を考えよ。例えば、重いハンマーが必要な場面で軽いハンマーを使う、大きなレンチが必要な場面で小さなレンチを使う、本来強い力を加えるべき場面でわずかな力しか使わない、などの方法をとる。
(2) できる限り多くの中断を作り出す。例えば、旋盤やプレス機の作業で材料を交換する際に、必要以上の時間をかける。切削や成形などの寸法測定を伴う作業では、必要な回数の2倍測定する。トイレに行く際に必要以上の時間を費やす。道具を「忘れた」ことにして取りに戻る時間を作る。
(3) たとえ理解できても、外国語での指示を理解できないふりをする。
(4) 指示が理解しにくいふりをして、何度も繰り返させる。あるいは、仕事に対して特に熱心なふりをして、不要な質問で監督者を煩わせる。
(5) 仕事を雑に行い、その原因を悪い工具、機械、または設備のせいにする。それらが仕事の妨げになっていると訴える。
(7) あらゆる手段で事務手続きを混乱させる。書類を読みにくい字で書き、書き直しを必要にさせる。誤記や必要な情報の記入漏れを発生させる。
(8) 可能であれば、労働問題を経営陣に訴えるためのグループに参加するか、その組織化を手伝う。その採用する手続きが経営陣にとってできるだけ不便になるようにする。例えば、各説明に多数の従業員が出席することを求めたり、各苦情に対して複数回の会議を必要としたり、概ね想像上の問題を持ち出したりする等。
(9) 材料の経路を誤る。
(10) 良品と不良品、廃棄部品を混ぜる。
(12) 士気の低下と混乱を引き起こすための一般的な手段
(a) 質問された際には、冗長で理解不能な説明を行う。
(b) ゲシュタポや警察に対して架空のスパイや危険を報告する。
(c) 愚鈍を装う。
(d) 問題にならない範囲で、できるだけ怒りっぽく、口論を好むようにする。
(e) 配給、輸送、交通規則などに関するあらゆる規則を誤解する。
(f) 代用品について不満を訴える。
(g) 公の場で枢軸国民や協力者を冷たく扱う。
(h) 枢軸国民や協力者がカフェに入ってきたら、すべての会話をやめる。
(i) あらゆる機会において、特に政府職員を前にしたときは、ヒステリックに泣き叫ぶ。
(j) 売国奴政権に何らかの形で関係する映画、娯楽、コンサート、新聞をすべてボイコットする。
(k) 回収計画に協力しない。