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エクレア 〜「ひとくちの甘能」酒井順子
皆さんは、シュークリーム派ですか?それともエクレア派ですか?
そんなこと聞かれても、「はて?」という感じでしょうが、酒井順子さんは「ひとくちの甘能」の中で、シュークリームとエクレアを比較してなかなか面白いことを書いています。
簡単に言うと、シュークリームはクリームを味わうための素直でプレーンなお菓子であるのに対して、エクレアはクリームだけではなく、苦さも欲しいと思う人の欲求を満たすひねくれたお菓子であるというのです。そしてシュークリーム好きな女子とエクレア好きな女子は、そのままお菓子の性質があてはまり、世の中の男性陣から好かれるのは、単純な作りでも安心して食べられるシュークリーム女子であり、クリームだけでなくチョコレートのコーティングといった一手間を要求するカッコいいお洒落なエクレア女子は、必ずしも求められていないと自虐的に述べられています。
ちなみに私もシュークリームとエクレア、どちらが好きか?と聞かれたら、エクレアと答えます。でもそれは、特段男性から求められる視線と結びつけて考える必要はないと思います。というか、シュークリームというお菓子が、ただプレーンにカスタードクリームを最初から最後まで味わうためのお菓子だという思い込みが、実は間違いなのです。
シュークリームは、クリームだけしか使えない分、外側の生地の部分が物を言うお菓子なのです。生地の焼き加減が、パン生地のように空気がたくさん入っているものがいいのか、それともちょっと焦げの強いものがいいのか、はたまたサクっとした歯触りのものがいいのか。シュークリーム好きな人間の中でも色々とタイプが分かれるのです。
こうなってくると、酒井さんの考察をもう少し突っ込んで結論を導く必要があるようです。
つまり、女というのは(たとえシュークリーム派の女子であっても)安定を求めているように見えても、実は刺激や変化も求めているのだということです。
だとすれば、エクレアのように外側にチョコレートをコーティングすることで、変化を求める嗜好をわかりやすく示している、そんな物を好む女の方が、わかりやすくていいとは思いませんか?
ちなみに酒井さんの考察からは離れますが、私は中学受験をするために小学校6年生の夏休みから塾に通い始めました。夜になってしまうので、当然お腹が空くので、塾の近くにあった小さなパン屋さんで売っていたエクレアを塾に行く前に買っていくのが習慣になりました。当時塾で一緒に勉強していた同級生がそのパン屋さんを教えてくれたのがきっかけです。
同級生の大半は普通にカレーパンとかデニッシュとかパンを買っていくのですけれど、私とあるもう一人の子はエクレアをいつも買っていて、その子とは最初全く話をしない間柄でしたが、同じエクレア派だということがわかって、親近感がわき、仲良くなったのを覚えています。
そのパン屋さんは、私が受験を終えて一年くらい経った頃にはもうなくなってしまって、気付いたら普通のチェーン店式のカフェになっていました。
その後エクレアはずいぶん食べたけれど、あの頃食べていたエクレアの美味しさにはどれも敵わない気がしています。おそらく塾で同じエクレアを好きだったあの子も、同じように思っているのではないでしょうか。
そんな風にお菓子には一つ一つ思い出があって、その思い出を時々思い出すのも、「甘い」ものです。